連絡が取れない入居者への対応

結論からお伝えすると、入居者と連絡が取れないときにやることは、①これは滞納対応ではなく安否確認だと考え方を切り替える、②緊急連絡先・保証会社・勤務先の順に外側から確認する、③危険が疑われる状況なら警察へ通報する、この3つです。合鍵で室内に入るという選択肢は、ここには入りません。

この記事は、6本あるトラブル対応の中でいちばん慎重に書いています。判断を誤ると、大家さんが法的な責任を問われる側に立ってしまう場面だからです。

先に、絶対にやってはいけないことから

心配だから、という善意であっても、次の行為は違法と判断されるおそれがあります。

やりがちな行為問題になりうる点
合鍵で無断で室内に入る賃貸中の部屋の使用権は入居者にある。住居侵入を問われるおそれ
鍵を交換して入れないようにする裁判所の手続を経ない実力行使。不法行為とされるおそれ
残っている家財を処分する所有権は入居者のまま。器物損壊や損害賠償の対象になりうる
郵便物を開封して中身を確認する信書の開封にあたるおそれ
「連絡なき場合は退去とみなす」と貼り紙そのような一方的な効力はない。第三者に事情が伝わる問題も残る
荷物があるのに次の募集を始める契約が続いている以上、二重に貸すことはできない

契約書に「連絡が取れない場合、貸主は室内を確認できる」といった条項が入っていることがあります。ただし、そう書いてあることと、それがそのまま有効になることは別です。入るしかないと感じる状況になったら、その判断を自分でせず、次の章の順番で外側から進めてください。

段階1|外側から順に、記録を取りながら確認する

目的は「相手を捕まえること」ではなく「無事かどうかを知ること」です。この順番で、日付と結果をメモに残しながら進めます。

やること見るポイント
1電話・メッセージ・郵便で連絡(記録を残す)普通郵便が返送されるか届くか
2建物の外から状況を見る郵便受けの溜まり方、電気メーター、洗濯物、車
3契約書の緊急連絡先へ連絡親族が状況を把握していることが多い
4連帯保証人・家賃保証会社へ連絡保証会社は独自に連絡を取れる場合がある
5勤務先の記載があれば在籍状況を確認取り立て目的での連絡はしない

2番の外観確認は、玄関前まで行くところまでです。電気メーターがまったく回っていない、郵便受けが1か月分溢れている、夏場に窓が閉め切られている。こうした状況が重なるなら、次の段階へ進む材料になります。ドアノブを回して開くかどうかを試す、という行為はしないでください。開いたとしても、入った時点で問題になります。

段階2|警察と自治体は、大家さんが使ってよい正規のルート

ここを知らないまま、自分で何とかしようとして踏み外す方が少なくありません。

安否が心配される状況であれば、警察に相談してください。緊急性があると判断されれば、警察官が立ち会う形で室内の確認が行われる場合があります。緊急ではないが心配、という段階なら、警察相談専用電話の#9110という窓口があります。110番と使い分けられます。

高齢の単身入居者や、生活に困難を抱えている様子があった方の場合は、物件のある市区町村の福祉担当窓口や地域包括支援センターも相談先になります。すでに支援につながっていて、入院や施設入所で連絡が途絶えていた、というのは実際にある話です。

いずれの場合も、大家さんが単独で鍵を開ける必要はありません。立ち会ってもらえる相手を呼ぶ。それがこの局面での正解です。

部屋を明け渡してもらうには、どうすればいいのか?

安否が確認できたうえで、それでも連絡が取れず、家賃も入らない。この状態から先は、大家さんの判断だけで進められる領域ではありません。

一般的な流れとしては、契約の解除を検討し、それでも解決しなければ裁判所に建物明渡しの訴えを起こし、判決を得たうえで強制執行という手続を経ることになります。ここで押さえておきたいのは費用と期間です。訴訟の費用は事案によりますが、弁護士費用と実費で数十万円、明渡しの完了まで半年前後を見ておくのが一般的とされています。強制執行で荷物の運び出しと保管が発生すると、そこにさらに費用が乗ります。

金額と期間を先に知っておくと、判断が変わることがあります。連絡が取れた時点で、少額でも合意して円満に退去してもらえるなら、そのほうが安く早い。業界では「毅然とした対応」が正しいとされがちですが、現場で得なのは、いつでも話し合いの窓口を開けたままにしておくことのほうです。裁判は勝っても時間とお金が戻りません。

なお、この分野は法改正や実務の運用が変わることがあります。具体的な進め方は、必ず弁護士または司法書士に個別に確認してください。

起きる前にできる、たった3つの備え

  • 契約時に緊急連絡先を必ず取り、続柄と別居の住所まで書いてもらう
  • 更新のたびに緊急連絡先と勤務先が現に有効かを確認する
  • 家賃保証会社を付ける。滞納の補填だけでなく、連絡の窓口としても機能する

特に2番目が抜けます。入居から5年も経てば、緊急連絡先の親御さんが転居していたり、亡くなっていたりします。更新のときに1行確認するだけの作業ですが、これがあるかないかで、この記事のような事態にかかる時間がまるで変わります。保証会社を入れるかどうかの判断は、費用と守られる範囲を並べて考えると整理しやすくなります。

まとめ

入らない。替えない。捨てない。やるのは、外側から順に確認して記録を残すことと、必要なら警察や自治体という正規のルートを使うことです。その先の手続は専門家と進めます。自主管理でここまで一人で背負うのはかなりの負担だと感じたら、その感覚は正確です。判断の材料は管理会社の対応が遅い。改善を求めるか、変えるかの判断基準にもまとめています。

さいたま市周辺で、連絡の取れない入居者への対応に困っていらっしゃる方はご相談ください。管理を任せると決めていない段階でも、次にどこへ相談すべきかの整理だけをお手伝いすることもできます。

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