複数の管理会社に話を聞くときの進め方
結論からお伝えすると、複数の管理会社に話を聞くときの原則は3つです。①社数は3社にとどめる、②全社にまったく同じ資料を渡す、③全社にまったく同じ質問をする。そして、その場で決めさせようとする相手には決めない。これだけで、比較の精度は大きく変わります。
ご存じの方も多いと思いますが、比較そのものは難しくありません。難しいのは、条件をそろえることです。渡す情報が会社ごとに違えば、返ってくる提案は比べられなくなります。
先に、よくある失敗から
条件をそろえないまま話を聞くと、こうなります。
- 1社目には修繕履歴を渡したが、2社目には口頭で説明した。2社目の提案から修繕費の見込みが抜け、そのせいで安く見えた
- 7社に問い合わせた結果、電話とメールの対応だけで2週間が過ぎ、募集開始が1か月遅れた
- 提案書の様式が会社ごとに違い、手数料の内訳が比べられなかった。最後は「なんとなく感じのよかった会社」に決めた
- 「今日ご契約いただければ広告料をこちらで持ちます」と言われ、その場で署名した。解約予告が6か月前の契約だった
どれも比較しようとした結果です。比較の条件をそろえなかっただけで、こうなります。
社数は3社。増やしても精度は上がらない
1社では比べられません。2社では、片方が極端だったときに気づけません。3社なら、真ん中がどこかが見えます。では4社、5社と増やせば精度が上がるかというと、上がりません。増えるのは対応の手間だけです。
面談は1社あたり60分前後、提案書が出るまで1週間から2週間が目安です。3社なら比較表が埋まるまで2週間から3週間で収まります。空室があるなら、これは家賃が入らない期間でもあります。家賃6万円の部屋なら1か月で6万円。比較にかける時間そのものにも金額が付いていると考えてください。
3社の選び方は、規模をばらすのが有効です。広域1社と地元2社なら提案の幅が見えます。同じ規模帯の3社では、似た提案が3つ並ぶだけになりがちです。
全社に、まったく同じ資料を渡す
渡す資料は、あらかじめ1セット作っておきます。作るのは1回、コピーするのは3部です。
| 渡す資料 | これがないと何が起きるか |
|---|---|
| 賃貸条件の一覧(各戸の家賃・共益費・入居日・契約更新日) | 収入の前提が会社ごとにずれ、提案の比較ができない |
| 間取図と募集図面 | 募集戦略の提案が一般論になる |
| 過去2年分の修繕履歴と設備の設置年 | 修繕費の見込みが抜けた会社の提案だけ安く見える |
| 直近の退去理由と、空室になっている期間 | 空室の原因が募集条件か建物かの切り分けが出てこない |
| 滞納の有無と、家賃保証会社の加入状況 | 引き継ぎ後にリスクが判明する |
| 現在の管理委託契約書(解約条項が分かる部分) | いつから切り替えられるかの前提が共有されない |
入居者の氏名や連絡先まで渡す必要はありません。契約前は部屋番号と条件だけで足ります。個人情報は、渡す量そのものを絞っておくほうが安全です。
他社にも声をかけていることは、正直に伝えて構いません。隠すと、提案が出てから条件が変わったように見えて話がこじれます。伝えて態度が変わる相手なら、それは先に知れたほうが得です。
全社に、まったく同じ質問をする
質問は紙に印刷して持っていき、答えをその場で書き込みます。記憶で比べようとすると、最後に会った会社の印象が勝ちます。
| 質問 | 何を見ているか |
|---|---|
| 担当してくださるのはどなたですか。今日この場にいますか | 営業と担当が別なら、実務者の顔を見ずに決めることになる |
| あなたは何戸を担当されていますか | 1件あたりに割ける時間。折り返しの速さの上限 |
| 5万円の修繕は、ご自身の判断で発注できますか | 決裁の重さ。緊急時に着工まで何日かかるか |
| 経営者の方は、自分でも賃貸経営をされていますか | 社内の判断基準が、どちら側の目線で作られているか |
| 手数料に含まれないものを、すべて挙げてください | 更新事務・退去精算・送金手数料などの別建ての有無 |
| 修繕は相見積もりを取りますか。何社からですか | 下請けが固定されていないか |
| 報告は何を、どの頻度で送っていただけますか | 報告の仕組みがあるか、担当者の善意に依存していないか |
| この物件の空室が埋まらない原因を、今どう見ていますか | 資料を読んだかどうかが、ここで分かる |
| 解約したいときの予告期間は何か月ですか | 合わなかったときに抜けられる条件 |
4番目の意図を補足します。経営者が自分でも賃貸経営をしていると、社内の判断基準が大家の側から作られます。「空室が1か月延びると、いくら失うのか」を経営者が金額で知っているので、現場に渡る優先順位が変わります。担当者が特別なのではなく、渡されている基準が違うのです。
そして、ここが一番お伝えしたいところです。相見積もりで比べるべきは金額ではありません。同じ質問に対する答え方の差です。金額の差は交渉で埋まることがありますが、答え方の差は契約後も埋まりません。「調べて折り返します」と正直に言う担当者と、その場で断定する担当者では、半年後の対応がまるで違います。
その場で決めてほしいと言われたら?
保留してください。管理委託は年単位で続く契約です。家賃の合計が月50万円、管理料5%なら年間30万円。5年で150万円の支出先を、1時間の面談で決める必要はありません。
「今日決めていただければ広告料をこちらで負担します」といった提案が出ることもあります。条件として悪いとは限りませんが、期限が今日である理由を必ず聞いてください。説明できるなら検討して構いません。説明できないなら、それは判断材料を減らすための期限です。
持ち帰る言い方は、これで足ります。「他にも2社うかがっているので、そろってから決めます」。そのうえで、いつまでに返事をするかを自分から伝えます。契約書の条項で違約金の額が大きいもの、文言が曖昧なものが出てきた場合は、弁護士など専門家に条文そのものを見てもらうことをおすすめします。
まとめ
3社に絞る。同じ資料を渡す。同じ質問を紙に書いて持っていく。即決を求められたら保留する。これで比較は「感じのよさ」から「答え方の差」に変わります。契約後にどこを見るかは管理会社の報告書は何を見ればいいか、今の委託先を先に整理したい場合は管理会社を変えたいと思ったときに最初に確認する3つのことをあわせてご覧ください。
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