埼玉の地価は5年連続で上がっても、63市町村のうち21は下落|9月16日公表の地価調査を大家が読む順番

結論からお伝えすると、2026年9月16日に個別地点まで公開された地価調査の数字は、そのままでは自分の物件の値段になりません。理由は2つあります。ひとつは県平均が63市町村をならした数字で、そのうち21市町村は住宅地が下がっていること。もうひとつは、この価格が建物も借地権も無いものとみなして出されていることです。順番を間違えなければ、使いどころのある数字です。

地価調査を大家が読むときの5点を並べた図。県が出した数であること、上昇と下落の市町村数、市内の差、更地とみなした価格であること。

9月15日と16日に、2段階で出ています

国土交通省は9月15日に全国の結果の概要を公表し、翌16日に個別地点の価格を「不動産情報ライブラリ」と「国土数値情報ダウンロードサイト」で公開しました。全国21,466地点が対象で、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも5年連続の上昇です(出典:国土交通省 令和8年9月15日「全国の地価動向は全用途平均で5年連続上昇」、同9月16日「令和8年都道府県地価調査データ更新!」)。

この調査の根拠は国土利用計画法施行令9条1項です。都道府県知事が画地を選び、毎年一回、一人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求めて、基準日における1平方メートル当たりの標準価格を判定する、と書かれています。基準日は毎年7月1日です。

県平均は住宅地プラス1.6%。ただし21市町村は下がっています

埼玉県の令和8年度地価調査は、63市町村832地点(住宅地650・商業地136・工業地43・林地3)が対象でした。平均変動率は次のとおりです。

  • 住宅地 +1.6%(前年度+1.5%)5年連続の上昇
  • 商業地 +3.3%(前年度+3.0%)5年連続の上昇
  • 工業地 +2.8%(前年度+2.7%)13年連続の上昇

ここまでがニュースになる部分です。その下の行に、市町村別の内訳があります。住宅地が上昇したのは37市町村、横ばいが5、下落が21。前年度は上昇35・横ばい7・下落21でした。つまり下落した市町村の数は、1つも減っていません。

下がった側の住宅地の平均変動率は、たとえば秩父市▲0.7%、小川町▲0.6%、幸手市▲0.5%、行田市▲0.4%、加須市▲0.3%、越生町▲0.3%といった並びです。上がった側は戸田市+6.2%、蕨市+5.4%、草加市+4.3%、川口市+4.1%と続きます(出典:埼玉県企画財政部土地水政策課「令和8年度埼玉県地価調査 あらまし」市区町村別・用途別平均価格及び平均変動率一覧)。

さいたま市の+2.9%も、区で見ると2倍以上の開きがあります

さいたま市の住宅地は98地点・平均218,000円/平方メートル・+2.9%でした。ところが区ごとに開くと、こうなります。

住宅地の平均価格(円/平方メートル) 変動率
浦和区 399,200 +4.2%
大宮区 311,000 +3.8%
中央区 301,400 +3.6%
南区 285,200 +3.5%
北区 208,200 +3.0%
緑区 186,100 +2.7%
見沼区 141,100 +2.6%
西区 121,800 +2.2%
岩槻区 103,300 +1.8%
桜区 155,900 +1.6%

変動率で2.6倍、平均価格で3.9倍の開きがあります。桜区の+1.6%は、県平均とちょうど同じ数字です。「さいたま市の地価が上がった」という一文では、この差は消えてしまいます。区ごとの性格の違いは 大宮・浦和・岩槻|賃貸経営の違い にまとめています。

この価格は、なぜ自分の物件の値段にならないのですか?

施行令9条2項が、標準価格の定義をこう書いているからです。

……当該土地に建物その他の定着物が存する場合又は当該土地に関して当該土地の使用及び収益を目的とする権利が存する場合には、これらの定着物又は権利が存しないものとして通常成立すると認められる価格とする。(国土利用計画法施行令9条2項)

アパートが建っていて、入居者がいて、賃借権がついている。その状態の土地でも、地価調査の数字は建物も賃借権も無いことにして出されています。同じ趣旨の文は地価公示法2条2項にもあります。

収益物件の値段は、その土地に建っているものと、そこから入ってくる家賃で動きます。地価は、その物件が乗っている地面の側の温度を測る道具と考えるほうが実態に合います。建物側の評価が年々どう扱われるかは 築33年の木造アパートは国の統計では0円です に書きました。

地価公示と地価調査は、何が違うのですか?

地価公示 地価調査(基準地価)
根拠 地価公示法2条1項 国土利用計画法施行令9条1項
判定する人 国の土地鑑定委員会 都道府県知事
鑑定士の人数 二人以上 一人以上
基準日 1月1日 7月1日
地点の呼び名 標準地 基準地

そして見落としやすいのが施行令9条3項です。基準地が公示区域内にあるときは、知事は「公示価格を規準」として標準価格を判定する、と書かれています。2つはまったく独立した数字ではなく、7月の数字が1月の数字を土台にしている関係です。半年ずれの続きものとして読むと、動きの向きが見えます。

地価公示と地価調査を左右に並べた図。基準日は1月1日と7月1日、判定は土地鑑定委員会と都道府県知事、鑑定士は二人以上と一人以上。

都合の悪いことも書いておきます

  • 基準地は832地点しかありません。63市町村で割れば1市町村あたり平均13地点で、自分の物件の前の道路に基準地があることのほうが稀です
  • 地価が上がっても家賃は同じ幅では動きません。家賃は需給と築年で決まります。家賃側の調べ方は さいたま市の家賃相場の調べ方 に分けて書いています
  • 固定資産税の評価額とも別ものです。納付書の数字がこの調査で動くわけではありません。納期と金額の見方は 固定資産税はいつ・いくら来るか に、空室との関係は 空室が続くと固定資産税は上がるのか にあります
  • 上がったことが良い知らせとは限りません。持ち続ける側にとっては、地価の上昇は税負担の側にも効きます

今日、確かめられること

不動産情報ライブラリで自分の物件の住所を開き、いちばん近い基準地が何番で、去年から何%動いたかを1つだけ控えてください。県平均でも市平均でもなく、その1点が自分の物件にいちばん近い公的な数字です。地域ごとの需要の動きは さいたま市で賃貸需要が動く時期と、地域ごとの傾向さいたま市の空き家は増えていない にまとめてあります。

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