親のアパートを相続した。まず何から手をつけるか

結論からお伝えすると、親のアパートを相続してまず手をつけるのは、①今この物件にいくら入っていくら出ているかを紙1枚にまとめる、②期限のある手続きを日付から逆算する、③家賃がどの口座に入っているかを確かめる、この3つです。売るか持ち続けるかを決めるのは、そのあとで十分に間に合います。

不動産の経験がないまま、ある日いきなり所有者になった。相続で大家さんになった方の大半がこの状態です。特別なことではありませんし、詳しくないこと自体が不利になる場面は、実はそれほど多くありません。困るのは、何から手をつけるかを決めないまま時間だけが過ぎることです。

先に、よくある失敗から

相続が発生してから半年ほど経って、はじめて相談に来られる方が少なくありません。その時点でよく起きているのが、次のような状態です。

  • 手続きが全部終わるまで家賃には触らないほうがよいと考え、3か月間、入金を一度も確認していなかった
  • 親名義の口座が凍結され、家賃の振込が止まっていることに気づいたのが2か月後だった
  • 郵便物が親の住所に届き続け、固定資産税の納付書と退去の通知を両方見落としていた
  • 期限のある手続きを後回しにしてしまい、税務署に相談へ行ったのが8か月後になった
  • 空室が2戸あることは知っていたが、いつから空いているのかを誰も把握していなかった

いずれも、判断を誤ったわけではありません。葬儀や親族の話し合いに追われている間に、順番が決まらなかっただけです。ここから、その順番を3つに分けます。

手順1|「今月いくら入って、いくら出るか」を1枚にする

最初にやるのは、物件を見に行くことでも、不動産会社に電話することでもありません。紙1枚に、入るお金と出るお金を書き出すことです。

たとえば8戸のアパートで6戸が入居中、家賃が1戸5万5千円だとします。入ってくるのは月33万円。ここから管理料が家賃の5%で1万6,500円、共用部の電気と水道が月8千円ほど、火災保険料と固定資産税を12で割った分、そしてローンが残っていれば返済額を引きます。この引き算の答えが、毎月手元に残る現金です。

一般的には「相続したら、まず売るか持つかを決めなさい」と言われます。ただ、現場の感覚はこれと逆です。相続したアパートで最初に決めるべきなのは、売るか持つかではありません。今月いくら残るか、です。数字が1枚になっていない状態で出した結論は、あとでほぼ確実にひっくり返ります。

数字が揃わないときは、管理会社に「直近12か月の入出金明細」を出してもらってください。自主管理だった場合は、通帳の入金履歴がそのまま資料になります。滞納が1戸でもあるかどうかも、ここで見えてきます。

手順2|期限のある手続きを、日付から逆算する

相続には、期限が定められている手続きがあります。下の日数はいずれも一般的に言われている目安で、家族構成や遺言の有無、財産の内容によって扱いが変わります。ここでは「いつごろまでに、どこへ聞くか」だけを押さえてください。

手続き一般的に言われる期限相談・確認先
相続放棄・限定承認の申述亡くなったことを知った日から3か月以内家庭裁判所・司法書士・弁護士
準確定申告おおむね4か月以内所轄の税務署・税理士
相続税の申告と納付おおむね10か月以内所轄の税務署・税理士
相続登記(名義の書き換え)2024年4月から義務化。取得を知った日から3年以内法務局・司法書士

相続税がかかるかどうか、申告そのものが必要かどうかは、財産の総額と控除の内容で変わります。ここで断定はできませんので、税理士または所轄の税務署に、早い段階で一度確認してください。登記については法務局と司法書士が窓口です。自治体や専門家団体が無料の相談会を開いていることもありますので、まずはそこで日付だけ整理するという進め方でも構いません。

手順3|家賃が、いまどこに入っているかを確かめる

見落とされやすいのがここです。一般的に、金融機関が名義人の死亡を把握すると、その口座は凍結されます。家賃が親名義の口座に直接振り込まれていた場合、入金そのものが止まるか、入っても引き出せない状態になります。

管理会社が集金代行をしている場合は、いったん管理会社の口座に集まり、そこから毎月まとめて送金されます。この形なら止まるのは送金の出口だけなので、送金先を新しい口座に切り替えれば動き出します。どちらの形かは、管理委託契約書の集金と送金の条項、そして通帳の入金件数を見れば分かります。6戸の家賃が6件に分かれて入っていれば直接振込、1件にまとまっていれば集金代行です。凍結の扱いや解除に必要な書類は金融機関ごとに違いますので、取引先の窓口で確認してください。

管理会社は、そのまま引き継いでいいのか?

急いで決める必要はありません。相続の直後は、判断するための材料がまだ足りていないからです。ただし、管理委託契約書だけは早めに読んでおいてください。解約予告の期間は会社によって幅があり、1か月前から6か月前まで、3か月前としている契約が比較的よく見られます。ここを知らずに動くと、実務が止まったあとの管理料まで払うことになります。読む場所は管理委託契約の解約予告は何か月前?にまとめてあります。

半年ほど数字を見たうえで、それでも報告が来ない、空室が動かないということであれば、そこから検討して十分に間に合います。判断の材料は管理会社を変えたいと思ったときに、最初に確認する3つのことを参考にしてください。

まとめ

数字を1枚にする。期限のある手続きを日付から逆算する。家賃の入り口を確かめる。この3つが終わった時点で、売るか持つかを考える材料はおおむね揃います。まだ迷うのであれば、それは判断力の問題ではなく、単に数字が足りていないだけです。

さいたま市周辺で相続したアパートの扱いに迷っていらっしゃる方は、ご相談ください。売る売らないを決めていない段階でもかまいません。数字の並べ方や、どこに何を聞けばよいかだけをお伝えすることもできます。

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