広告料(AD)は何か月分が適正か
結論からお伝えすると、広告料(AD)の適正額は「相場が何か月分か」では決まりません。その部屋の空室1か月分の損失と比べて、早く決まる見込みが釣り合うかどうかで決めます。首都圏の居住用でよく見るのは0か月から2か月分の範囲で、3か月分を常用している物件は、広告料が足りないのではなく別のところに理由があると考えたほうが実態に近くなります。
ご存じの方も多いと思いますが、ADは仲介会社に対して貸主から支払う募集の費用です。金額の水準は地域と時期でかなり動きます。同じさいたま市内でも、駅からの距離と間取りが変われば、ゼロで決まる部屋と2か月分を付けている部屋が並びます。
先に、よくある失敗から
ADの失敗は、金額の大小ではなく出し方に出ます。実際によく見るのは次のような形です。
- 空室3か月目にAD1か月、5か月目にAD2か月と積み増し、決まったのは7か月目。合計で家賃9か月分を失った
- ADを付けた事実だけが決まり、募集図面にAD表記が反映されていなかった。仲介会社側に伝わっていなかった
- AD2か月分を恒久条件にしてしまい、繁忙期でゼロでも決まる時期まで払い続けた
- ADの金額に気を取られ、室内の状態と写真が5年前のままだった
家賃6万円で7か月空けば、失った家賃は420,000円。そこにAD2か月分の120,000円が乗ります。ADは「決まらないから足すもの」ではなく、「いつまでに決めたいかを金額で示すもの」だと捉えたほうが、判断の順番が整います。
ADと空室損は、同じものさしで比べられる
AD1か月分は、金額としては家賃1か月分です。つまり空室が1か月縮まれば同額で、それより早ければ得になります。家賃6万円の部屋で並べると次のようになります。
| 条件 | AD支出 | 想定の空室期間 | 空室損+AD |
|---|---|---|---|
| ADなし | 0円 | 5か月 | 300,000円 |
| AD1か月分 | 60,000円 | 3か月 | 240,000円 |
| AD2か月分 | 120,000円 | 2か月 | 240,000円 |
| AD3か月分 | 180,000円 | 2か月 | 300,000円 |
数字は仮置きですが、構造ははっきりしています。ADは増やせば増やすほど効く費用ではなく、途中で頭打ちになります。この例では2か月分を超えたところで逆転しました。年間家賃72万円の部屋にAD2か月分を出せば、その年の家賃収入の約16.7%が募集費用に消える計算にもなります。
目安として、どのくらいが多いのか
| 状況 | よく見る水準 |
|---|---|
| 駅近・築浅・1月〜3月 | 0か月分 |
| 駅徒歩10分超・単身向け・通常期 | 0.5〜1か月分 |
| ファミリー向け・郊外・閑散期 | 1〜2か月分 |
| 再募集が続いている部屋・法人需要が薄い立地 | 2か月分 |
| 3か月分以上 | 条件そのものを見直す段階 |
この表はあくまで見かける頻度の話で、地域の商慣行によって変わります。近隣の水準は、管理会社に「この駅の同じ間取りで、いま何か月分が付いていますか」と聞けば具体的な数字が返ってくるはずです。返ってこない場合は、それ自体が判断材料になります。
ADを増やしても決まらないのはなぜか?
ADは、仲介会社が案内先の候補に入れる理由にはなります。ただ、案内した先で部屋を選ぶのは入居者です。業界では「ADを積めば決まる」と言われますが、実際にADが効くのは決まる条件が揃っている部屋であって、決まらない部屋のADは、決まらない理由を見えなくするだけです。内見は入っているのに契約に至らないのであれば、原因は募集費用ではなく室内側にあります。切り分け方は空室が3か月埋まらないときに見直す6つのポイントに整理しました。
もう一点、触れておきたいことがあります。ADの高い部屋を優先して案内する動きは、程度の差はあれ存在します。社名を挙げるような話ではありませんし、募集にかける費用を評価すること自体が悪いわけでもありません。ただ、賃貸借の媒介報酬については宅地建物取引業法に基づく告示で上限が定められており、広告料の実態によっては報酬の一部と見られる場合があると指摘されています。困るのは、条件の合わない部屋を案内された入居希望者です。金額が大きくなるときや、内訳の説明を求めても返答が曖昧なときは、複数の会社に相談したうえで、必要に応じて弁護士など専門家に確認してください。
出すと決めたときに、セットで決める3つのこと
ADを出すなら、次の3点をセットにしておくと恒久化を防げます。ひとつ、期間を切ること。「9月末までの申込に限りAD1か月分」とすれば、繁忙期に自動で戻ります。ふたつ、募集図面と業者間サイトに明記されているかを自分の目で確認すること。伝えたつもりで載っていない例は珍しくありません。みっつ、支払いのタイミングと、短期解約があった場合の扱いを事前に決めておくことです。
なお、支払った広告料の会計上・税務上の取り扱いは、金額や契約内容によって考え方が分かれる部分があります。計上の仕方については顧問税理士にご確認ください。
まとめ
空室1か月分の家賃を書き出す。ADを何か月分出せば何か月早まりそうかを見積もる。釣り合うところで止める。期間を切って出す。この4つで足ります。積み増しても動かないときは、費用ではなく条件の問題です。提案の中身が毎回「ADを増やしましょう」だけで終わるようであれば、管理会社を変えたいと思ったときに、最初に確認する3つのこともあわせてご覧ください。
さいたま市周辺で募集条件の見直しを考えていらっしゃる方は、ご相談ください。管理のご依頼を前提とせず、その部屋にADが必要かどうかの見立てだけをお伝えすることもできます。
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