相続したアパートの管理会社をそのまま引き継ぐべきか
結論からお伝えすると、相続したアパートの管理会社は、いったんそのまま引き継いで構いません。ただし「そのまま」でよいのは日々の実務だけで、①管理委託契約書の中身、②直近12か月の実績、③連絡先と担当者、この3つは相続した側があらためて確認し直してください。続けるか変えるかを決めるのは、そのあとです。
相続の直後は、名義の書き換え、入金口座の変更、親族との話し合いが同時に走ります。ここに管理会社の変更まで重ねると、どこで何が止まったのか分からなくなります。順番の問題です。
先に、よくある失敗から
相続後の管理でつまずく場面は、大きく2種類に分かれます。中身を見ずに続けてしまうか、中身を見ずにやめてしまうかです。
- 親の代から30年の付き合いだからと契約書を開かず、管理料が家賃の8%のまま5年が過ぎた。周辺の相場は3%から7%あたりだった
- 逆に、対応が遅いと感じて相続の直後に解約を伝えたところ、解約予告が6か月前と定められており、実務が止まったあとも半年分の管理料を払った
- 契約上の貸主が亡くなった親の名義のままで、退去精算の振込元が確定せず、敷金の返還が1か月遅れた
- 担当者の携帯番号しか知らず、その担当者が退職したあと、夜間の緊急対応の窓口が分からなくなった
- 集金代行の送金先だけを変えたつもりが、駐車場の月極契約は別扱いで、そちらの入金が3か月止まっていた
どちらも、続けたこと自体・やめたこと自体が失敗だったのではありません。確認の順番を飛ばしただけです。
確認1|契約は、相続でどう扱われるのか
一般的には、賃貸借契約の貸主の立場も、管理委託契約の委託者の立場も、相続によって引き継がれると考えられています。つまり、亡くなった時点で契約が自動的に消えるわけではありません。
ただし、契約書に「委託者の死亡により終了する」といった条項が入っていることもありますし、委託の性質をどう見るかによって解釈が分かれる部分もあります。ここは条文次第ですので、断定はできません。管理会社の説明と契約書の書き方が食い違うと感じたら、弁護士または司法書士に条文そのものを見てもらってください。
実務としては、名義変更の覚書を1枚交わすのが一般的です。相続登記が済んでいなくても、覚書と送金先の変更届があれば運用を続けられることがほとんどです。登記そのものの手続きと期限については、法務局と司法書士に確認してください。
確認2|引き継ぐ前に、手元へ集めておく6つの情報
親が持っていた情報の多くは、管理会社側にしか残っていません。相続した側に控えがないまま日が経つほど、集めるのが難しくなります。続けるにしても変えるにしても、先に手元へ揃えておくべきものは共通です。
| 集めるもの | なぜ必要か |
|---|---|
| 管理委託契約書の原本 | 解約予告の期間・契約期間・管理料の根拠 |
| 直近12か月の入出金明細 | 滞納の有無と、実際に手元に残っている金額 |
| 全戸の賃貸借契約書 | 更新日・特約・預かっている敷金の残額 |
| 家賃保証会社の契約者番号と窓口 | 滞納が起きたときの請求の入り口 |
| 鍵の本数と保管場所 | 水漏れなど緊急対応の初動 |
| 設備の設置年と修理履歴 | 給湯器やエアコンの交換予算の見通し |
特に抜けやすいのが設備の設置年です。給湯器の寿命はおおむね10年から15年と言われますが、設置年が分からないと、来年200万円の出費が来るのか、5年先なのかが読めません。8戸のアパートで給湯器が全戸10年超であれば、それだけで数百万円の話になります。
確認3|そのまま続けていい会社と、見直したほうがいい会社
集めた情報が揃うと、判断の材料が出てきます。感情ではなく、次の5項目で見てください。
| 見る項目 | そのまま続けてよい状態 | 見直しを考える状態 |
|---|---|---|
| 報告 | 毎月、書面かデータで届いている | こちらから聞かないと出てこない |
| 空室 | 退去から3か月以内に決まっている | 半年以上、内見の報告すらない |
| 修繕 | 見積もりが項目ごとに分かれている | 「一式」の金額しか出てこない |
| 連絡 | 会社の窓口で担当が引き継がれる | 個人の携帯番号しか窓口がない |
| 管理料 | 何が含まれるかを説明できる | 金額の根拠を説明できない |
ここで一つだけ、よく言われることに反論しておきます。親の代から続いている会社だから安心だ、という話です。付き合いが長い管理ほど、条件が20年前のまま止まっています。悪意があるわけではなく、誰も見直さなかっただけです。長い付き合いは、良し悪しの根拠にはなりません。中身を見てから判断してください。
変えるとしたら、いつがいいのか?
目安としては、相続から半年から1年です。名義や口座の変更が一段落し、12か月分の数字が見えてからのほうが、判断を間違えません。加えて、退去と入居が集中する1月から3月の直前に引き継ぎをぶつけるのは避けたほうが無難です。引き継ぎ作業そのものに、書類の受け渡しから入居者への通知までおおむね1か月から2か月かかります。
解約予告が3か月前なら、動き出すのは実行したい時期の半年前ということになります。予告期間の読み方は管理委託契約の解約予告は何か月前?に、確認の順番は管理会社を変えたいと思ったときに、最初に確認する3つのことにまとめてあります。
まとめ
相続の直後は、そのまま引き継いで構いません。ただし契約書を読み、12か月分の数字を出し、連絡先を会社の窓口に付け替える。この3つは相続した側の仕事です。ここまでやれば、続けるか変えるかの答えはたいてい自分の中に出ています。
さいたま市周辺で相続したアパートの管理をどうするか迷っていらっしゃる方は、ご相談ください。変えると決めていない段階でもかまいません。契約書のどこを読むか、何を集めればよいかだけをお伝えすることもできます。
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