賃貸経営で最初に覚える3つの数字

結論からお伝えすると、賃貸経営で最初に覚える数字は3つで足ります。①表面利回り、②実質利回り、③返済比率です。この3つを自分の物件で出せるようになると、修繕をするかどうか、家賃を下げるかどうか、管理を任せるかどうかの判断が、感覚から計算に変わります。

ご存じの方も多いと思いますので、言葉の説明は最小限にします。この記事では、実際の金額を入れて最後まで計算します。

先に、よくある失敗から

いちばん多いのは、表面利回りだけを見て判断してしまうことです。

  • 「利回り8%だから月1万4千円は残るはず」と考えていたら、固定資産税と修繕費が出た月は手元が赤字だった
  • 相続で引き継いだアパートの利回りを一度も計算しておらず、家賃を1万円下げたときに残るお金がいくら減るのか分からないまま値下げに応じた
  • 借入の返済額を「家賃の範囲に収まっているから大丈夫」と見ていたが、1戸空くだけで毎月の持ち出しが発生した

3つとも、数字を知らなかったのではなく、数字を1本しか持っていなかったために起きています。ここから、実在しそうな物件を例に、3本の数字を順に出していきます。

数字1|表面利回り|物件を並べるための入口

例として、次の条件で計算します。

  • 木造アパート4戸、購入価格2,000万円
  • 家賃1戸あたり3万5千円。満室で月14万円、年間168万円

表面利回りの式は「年間の満室家賃 ÷ 購入価格」です。

168万円 ÷ 2,000万円 = 8.4%

販売図面に載っているのはこの数字です。空室も、税金も、修繕費も、購入時の諸費用も入っていません。あくまで物件を横並びに見るための入口の数字だと考えてください。

数字2|実質利回り|出ていくお金を全部引いた後

次に、実際に出ていくお金を引きます。まず購入時の諸費用です。仲介手数料、登記費用、不動産取得税、火災保険の初回分などで、一般的には購入価格の6〜8%程度を見ます。ここでは7%として140万円、総投資額は2,140万円とします。

続いて、毎年の収入と支出です。年間を通じた稼働率を90%と見込むと、実際に入る家賃は168万円 × 90% = 151万2千円になります。

項目年間の金額考え方
満室想定の家賃1,680,000円3万5千円 × 4戸 × 12か月
空室損(稼働率90%)▲168,000円年間で約1.2か月分の空室
実際に入る家賃1,512,000円
管理料(入金額の5%)▲76,000円委託した場合
固定資産税・都市計画税▲120,000円物件により大きく変動
共用部の電気・水道▲36,000円月3,000円
火災保険(年割)▲20,000円
修繕・原状回復(年平均)▲120,000円退去時のクロス・清掃等
広告料(年2戸想定)▲70,000円家賃1か月分 × 2戸
差引き(年間の手残り前)1,070,000円

実質利回りの式は「(実際に入る家賃 − 年間の運営費)÷ 総投資額」です。

107万円 ÷ 2,140万円 = 5.0%

表面8.4%が、実質5.0%になりました。差は3.4ポイント。金額に直すと、年間で168万円と107万円の差、つまり61万円です。月あたり約5万円が、図面に載っていないところで出ていっている計算になります。この61万円を知らずに「毎月14万円入る」と考えていると、判断がすべてずれます。

数字3|返済比率|なぜ利回りより先に見るべきなのか?

借入がある場合の3本目です。返済比率は「年間の返済額 ÷ 満室想定の家賃」で出します。

先ほどの物件を、自己資金400万円・借入1,600万円・金利2.5%・期間25年で買ったとします。この条件での毎月の返済額は約71,800円、年間で約86万1千円です。

86万1千円 ÷ 168万円 = 約51%

手元に残るお金は、実質の107万円から返済86万1千円を引いて、年間20万9千円。月に直すと約1万7千円です。しかも、ここから所得税・住民税が引かれますので、実際に残る額はこれより少なくなります。修繕が想定より1回多く出れば、その年はほぼ残りません。

返済比率一般的な見られ方1戸空いたときの余裕
40%以下余裕がある空室が出ても持ちこたえやすい
50%前後標準的1戸までなら耐えられることが多い
60%以上余裕が乏しい1戸空くと持ち出しになりやすい

一般的には「利回りの高い物件を選べ」と言われます。ただ、現場で経営が続くかどうかを決めているのは利回りではなく返済比率です。表面利回り12%でも返済比率が65%なら1戸の空室で赤字になり、表面6%でも返済比率が35%なら満室でなくても回ります。利回りは物件を絞り込むための道具、返済比率は自分が持ち続けられるかを測る道具。役割が違います。

3つの数字が出せると、判断が変わる

たとえば家賃を3万5千円から3万2千円に下げる場合。満室想定家賃は年間で14万4千円減り、返済比率は51%から約56%に上がります。「3千円くらいなら」と感じるかどうかが、計算すると変わってきます。値下げの前に試せる打ち手は空室が3か月埋まらないときに見直す6つのポイントにまとめています。

管理料についても同じです。年7万6千円という数字が先に見えていれば、それに見合う仕事が返ってきているかを検証できます。判断の基準は管理会社を変えたいと思ったときに、最初に確認する3つのことをご覧ください。

なお、減価償却や必要経費の範囲、税額の計算は個別の事情で変わります。手残りの試算に税金まで含める段階になったら、税理士に確認してください。ここは一般論で判断してよい領域ではありません。

まとめ

表面利回りで物件を並べ、実質利回りで実際の力を測り、返済比率で持ちこたえられるかを見る。この3本があれば、値下げも修繕も委託も、勘ではなく数字で決められます。まずはお手元の物件で、この記事の表と同じ項目を埋めてみてください。埋まらない欄が、そのまま把握できていない部分です。

さいたま市周辺で賃貸経営の数字を一度整理したいという方は、ご相談ください。管理を任せるかどうかを決めていない段階でも、収支の項目出しだけでもかまいません。

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