古いアパートを持て余したときの選択肢

結論からお伝えすると、古いアパートを持て余しているときに最初にやることは、選択肢を選ぶことではありません。「何に困っているのか」を、手間・お金・決断の3つに分けることです。持て余しの正体がこの3つのどれなのかで、取るべき道はまったく違ってきます。そして多くの場合、いきなり手放さなくても解決します。

釈迦に説法かもしれませんが、築古のアパートは「使えない資産」ではありません。使い方が決まっていないだけ、という状態が非常に多いのです。

先に、よくある失敗から

持て余した状態で数年が過ぎると、こういうことが起こります。

  • 退去が出るたびに「どうせ古いから」と募集をかけず、8戸のうち5戸が空いたまま3年が過ぎた。稼働が落ちた状態の収支で査定され、売却の話も進まなくなった
  • 雨漏りを1年放置したため、屋根の部分補修で済んだはずが、下地の交換まで必要になり工事費が3倍近くになった
  • 「建て替えか売却か」を家族で話し合ったまま結論が出ず、2年間なにも手を打たなかった。その間の固定資産税だけが出ていった
  • 相場を調べずに1社だけに査定を頼み、その金額が適正かどうか分からないまま話が進みかけた

共通しているのは、建物が古いことではありません。決めていない期間が長かったことです。空室は放置した分だけ埋めにくくなり、修繕は先送りした分だけ高くなります。

築30年を超えたら、もう終わりなのか?

一般的には「木造は法定耐用年数が22年だから、築30年を超えたら建て替えか売却」と言われます。ただ、耐用年数は税金の計算に使う年数であって、建物が住めなくなる年数ではありません。現場では、築40年で満室のアパートは珍しくありません。実際に空室が埋まっている築古物件と、埋まらない築古物件を並べて違いを探すと、築年数はほとんど関係がなく、差が出ているのは水回りの状態、清掃、募集条件、写真の4つです。

もちろん、構造の安全性や雨漏りといった建物本体の問題は別です。傾き、基礎のひび、雨漏りの痕跡があるなら、まず建築士や施工会社に見てもらってください。耐震性の判断は素人が見た目で決められる領域ではありません。

最初にやること|困りごとを3つに分ける

「持て余した」という言葉には、性質のまったく違う3つの困りごとが混ざっています。分けてしまえば、それぞれに別の打ち手があります。

困りごと症状の例まず向かう先
手が回らない入居者からの連絡がつらい、遠方、本業が忙しい、高齢管理を任せる
お金の見通しが立たないいくら修繕にかかるか分からない、収支が把握できていない数字を出す・部分修繕
次をどうするか決まらない家族で意見が割れている、相続の方向が見えない期限を切って比較する

ここで大事なのは、3つのうち「手が回らない」だけが原因なら、物件そのものには何の問題もないということです。この場合に売却を選ぶのは、疲れの解消手段としては有効でも、資産としてはもったいない判断になり得ます。

選択肢を、負担の軽い順に並べる

順番があります。負担が軽く、後戻りできるものから試すのが原則です。

選択肢初期の負担効果が出るまで後戻り
①管理を委託するほぼなし(家賃の5%前後)1〜2か月できる
②募集条件と見せ方を直す数万円〜(写真・図面)1〜3か月できる
③水回り中心の部分修繕1戸あたり数十万円〜3〜6か月できない
④用途を変える(事務所・倉庫・法人契約など)物件による6か月〜できない
⑤建て替え・大規模改修数千万円規模1年以上できない
⑥売却する3か月〜できない

①と②は、やってみて効果がなければやめられます。まずここを試さずに⑤や⑥へ飛ぶと、その物件が本当はいくら稼げたのかを知らないまま判断することになります。稼働が落ちた状態のままだと、収益還元で見られる査定額も低く出ます。売るにしても、直してからのほうが選択肢は広がるというのは、そういう意味です。

②の具体的な進め方は空室が3か月埋まらないときに見直す6つのポイントに、①ですでに委託していて動きが鈍いという場合は管理会社の対応が遅い。改善を求めるか、変えるかの判断基準にまとめています。

それでも手放すと決めたときに、知っておくこと

①から④を試したうえで、あるいは家族の事情や健康上の理由で、売却が最善という結論になることはあります。それ自体は失敗ではありません。ただ、次の3点だけは押さえてから動いてください。

  • 入居者がいる状態で売る(オーナーチェンジ)か、空にしてから売るかで買い手も価格も変わります。入居者に退去を求める場合、正当な事由や立退料の問題が絡みますので、必ず弁護士に確認してください
  • 査定は複数社から取ること。1社だけでは、その金額が高いのか安いのか判断できません
  • 税金の扱いは所有期間などで変わります。相続で取得した場合は取得日や取得費の考え方に特有のルールがあり、使える特例もあります。売却を検討し始めた時点で税理士に相談してください。ここは一般論で判断してよい領域ではありません

登記の名義が亡くなった方のままになっている場合は、売却の前に相続登記が必要です。手続きの見通しは司法書士に確認してください。

まとめ

持て余しているのは建物ではなく、たいていは時間と手間です。まず困りごとを3つに分け、後戻りできる手から順に試す。それでも合わなければ、手放すという道も普通の選択肢です。順番を守るだけで、結果は変わります。

さいたま市周辺で築古のアパートをお持ちで、どうしたものかと迷っていらっしゃる方は、ご相談ください。まだ持ち続けるか手放すかを決めていない段階でもかまいません。

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