土地を買った大家に2週間の届出義務がある場合|国が対象面積の引き下げを提言
結論からお伝えすると、土地を買ったとき、面積が一定以上なら買った側に、契約から2週間以内の届出義務があります。売った側ではありません。届出をしなかった場合の罰則も法律に書かれています。そして2026年8月7日、国土交通省の有識者会議が「この届出の対象面積を引き下げる方向で見直すべき」という提言を公表しました。
この記事では、いまの線がどこにあるのか、さいたま市ではどこへ出すのか、そして提言で何が動きそうなのかを、2026年8月12日時点の情報で整理します。
登記の段取りとは別に、期限が動き出しています
アパートの隣の空き地を買う。駐車場にしていた土地を広げる。こうした場面で、決済と登記は司法書士が段取りしてくれます。契約書に判を押し、法務局に書類が出て、数週間後に登記識別情報が届く。
そのあいだ、まったく別の期限が進んでいることがあります。国土利用計画法にもとづく届出です。登記の手続きとは連動していないので、誰も声をかけてくれないまま2週間が過ぎることがあります。

いまの線はどこにあるのか
国土利用計画法23条1項は、こう定めています。土地売買等の契約を締結した場合、権利の移転または設定を受けることとなる者(=買った側)は、その契約を締結した日から起算して2週間以内に、土地が所在する市町村の長を経由して、都道府県知事に届け出なければならない——。
届け出る内容は、当事者の氏名と住所、契約した年月日、土地の所在と面積、権利の種別、取得後の土地の利用目的、そして対価の額です。
そして23条2項1号が、届出が要らない面積を定めています。
- 市街化区域……2,000平方メートル未満(2,000平方メートルは約605坪)
- 市街化区域以外の都市計画区域……5,000平方メートル未満(約1,512坪)
- それ以外の区域……1万平方メートル未満(1ヘクタール・約3,025坪)
ここに、見落とされやすいかっこ書きが入っています。買った側が「当該土地を含む一団の土地」でこの面積以上の権利を取得することとなる場合は、除かれません。つまりひとまとまりの土地を2回3回に分けて買っても、合わせて面積に達すれば届出の対象になります。隣地を少しずつ買い足していく買い方は、まさにここに当たります。
出さなかったらどうなるのか
同法47条1号は、23条1項に違反して届出をしなかった者を「六月以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金」に処すると定めています。虚偽の届出をした者も同じ条文です。さらに50条は、法人の代表者や従業者が違反したときに、行為者を罰するほかその法人に対しても罰金刑を科すとしています(両罰規定)。
届出の後に何が起きるのかも見ておきます。
- 都道府県知事は、届け出られた利用目的が公表されている土地利用に関する計画に適合せず、周辺の適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障があると認めるときは、土地利用審査会の意見を聴いて利用目的の変更を勧告できます(24条1項)。勧告は届出から3週間以内で、必要があれば3週間の範囲で延長されます
- 勧告を受けた者が従わないときは、その旨と勧告の内容を公表できます(26条)
- 一方、この事後届出で価格についての指導や勧告が行われることはありません(埼玉県の案内による)。審査されるのは利用目的です
(出典:国土利用計画法/e-Gov法令検索。条文はいずれも現行のものを確認しています)
さいたま市の土地は、どこへ出すのか
ここが地域によって違います。原則は「市町村長を経由して都道府県知事へ」ですが、さいたま市は政令指定都市なので、市長に直接届け出ます。窓口は都市局 都市計画部 開発・盛土調整課(さいたま市浦和区常盤6丁目4番4号・市役所9階)です。
さいたま市の案内でも、市街化区域は2,000平方メートル以上、市街化区域以外は5,000平方メートル以上が対象で、届出は譲受人(取得者)が契約後2週間以内(契約日を含む)に行うこととされています(出典:さいたま市「土地を売買した際の国土利用計画法の届出について」)。
さいたま市以外の埼玉県内の土地は、市町村の窓口を経由して埼玉県知事へ、という流れです。買う前に確かめるのは、面積と区域の2つだけです。
質問|自分には関係のない話ではないのか
605坪という数字を見ると、多くの大家さんには縁がない話に見えます。いまの制度でどのくらいが届出されているのか、国が数字を出しています。
不動産の所有権移転登記ベースでは全国で約157万件の取引があるところ、国土利用計画法にもとづく届出は約1.9万件。前者に占める割合は約1.2%で、経年で見ても概ね1%前後です。面積ベースでは約3割になります(いずれも令和6年の実績値)。
つまり件数で見れば、土地取引の98%以上は、国や都道府県が利用目的を把握していません。提言は、まさにここを課題として挙げています。

2026年8月7日の提言で、何が動きそうなのか
国土交通省が令和8年3月に設置した「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」は、計5回の議論を経て、2026年8月7日に提言を公表しました。大家さんに関わる部分を、原文にそって挙げます。
- 届出対象となる面積要件を「可能な範囲で引き下げる方向で見直すことを検討すべき」。引下げは全国一律で行うことが考えられるとしたうえで、地域の実情に応じて地方公共団体の意向により更に引き下げることを可能とする方策も併せて検討すべきとしています
- 相続や無償譲渡も届出の対象に加えることが考えられる。「相続後に特段の取引を行うことなく相続人自身が従前と異なる土地利用を行うケース」や、無償で取得したり借り上げたりするケースがあることを理由に挙げています。いまの制度は有償取引だけが対象です
- 届出後に利用目的を変えたら、再度の届出を求めるようにすべき。いまは届出事項に変更があっても変更届は要らず、利用目的を「未定」とした場合や後で変わった場合に実際の利用目的が捕捉できない、という理由です
- 届出の対象にならない小さな取引も、国がデータベースを整備して把握し、地方公共団体へ情報提供する仕組みを検討すべき
- 登記情報など他の取引情報と照合して、届出が必要なのに出ていない事案を把握する取組を強化すべき
(出典:国土交通省「『土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議』提言」令和8年8月7日公表)
ここは正確に押さえてください。2026年8月12日時点で、法律はまだ変わっていません。これは有識者会議の提言であり、面積がいくらに下がるのか、相続が本当に対象に入るのかは、これから制度設計と法改正の議論を経て決まります。いま慌ててやることは、何もありません。
それでも、いまのうちに済ませておけること
提言の方向が実現した場合に効いてくるのは、次のようなことです。どれも今日できて、無駄にならないものだけを挙げます。
- 持っている土地の面積と、市街化区域かどうかを一覧にする。固定資産税の課税明細書と、市町村の都市計画情報で確認できます
- 隣地を買い足してきた土地は、合計面積で見ておく。「一団の土地」の考え方は、いまの制度にもすでにあります
- 土地を買う予定があるなら、契約の前に面積と区域を確認して、届出が必要かを売買を仲介する会社に確かめる。期限は契約日から2週間で、動き出すのは登記より前です
- 相続で受ける見込みの土地について、いまの使い方と将来の使い方を家族と話しておく。相続が届出の対象に加わるかどうかとは別に、この整理は先に効きます
持っている土地の面積すら手元でまとまっていない、という状態は珍しくありません。制度が動くかどうかに関係なく、面積と区域が一覧になっているだけで、売るか貸すかの判断が速くなります。固定資産税の見方は固定資産税はいつ・いくら来るか、手放す選択肢の整理はもう続けられないと思ったときの選択肢|貸す・売る・任せるにまとめています。
税金や登記の扱いは個別の事情で変わります。一般的には、面積の大きい土地の取得や相続がからむ場合は、契約の前に税理士と司法書士に確認しておくほうが安全です。届出そのものの要否は、土地が所在する市町村の窓口で確かめられます。
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