管理委託契約は3か月前の予告を待たずに解除できるのか|管理の委託は民法上の「委任」です

結論からお伝えすると、管理を委託する契約は民法の分類では「委任」にあたり、民法第651条第1項は「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる」と定めています。契約書に「3か月前までに書面で」と書いてあっても、それは解除できる時期の話ではなく、解除に伴う清算の話に変わります。まず条文の並びを知っておくと、交渉のしかたが変わります。

「3か月前までに書面で」を見た瞬間に、止まってしまう

管理委託契約書の解約条項は、多くが「解約しようとするときは3か月前までに書面で申し出るものとする」という一文です。これを読むと、次のように考えるのが自然です。

  • 9月に決めたのだから、動けるのは12月末より先だ
  • その間に退去が出たら、辞めると決めた相手に立会いを頼むことになる
  • 先に次の委託先と話を進めるのは、順番として気が引ける

ここで3か月を待つと、繁忙期の入口をまたぐことがあります。待つかどうかを決める前に、その条項が何を縛っているのかを確かめる価値があります。

管理の委託が委任だからできることを4点並べた図。いつでも解除できる、賠償が要るのは2つの場合、効力は将来に向かってのみ、途中終了でも報酬は割合で清算

管理の委託は、法律の分類では「委任」です

民法第656条は「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する」と定めています。これが準委任です。集金、入居者対応、点検の手配といった管理業務は、契約を結ぶ行為そのものではないので、この準委任にあたるのが通常です。

そして準用される第651条第1項が、こう書かれています。

委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる

「委任者は」ではなく「各当事者が」です。大家さん側からも、管理会社側からも、いつでも解除できるのが原則の形です。賃貸借であれば借地借家法が借主を厚く守りますが、管理の委託にその種の規制はかかりません。

では、契約書の予告期間は意味がないのですか?

意味はあります。第651条は当事者の取り決めで変えられる規定(任意規定)と解されており、予告期間の特約そのものは有効に働くのが一般的な理解です。ただし、「予告期間を守らなければ解除の意思表示自体が無効になる」とまでは書かれていません。実際には、予告期間を置かずに解除したときに、残りの期間分の報酬相当額をどう扱うかという清算の問題として現れます。

ここは条文の読み方だけで結論が出る場所ではありません。予告条項の効力や違約金の定めが個別の事情のもとでどう扱われるかは、契約書の文言と経緯によって判断が分かれます。金額が大きい、書き方が不明確といったときは、その条項そのものを弁護士に見てもらってください。

契約書の予告条項と民法651条1項の比較図。予告条項は3か月前までに書面でという当事者の取り決めであり、民法は各当事者がいつでも解除できると定めていることを並べた

賠償が必要になるのは、2つの場合だけです

第651条第2項は、解除した側が相手方の損害を賠償しなければならない場合を、次の2つに限っています。

  1. 相手方に不利な時期に委任を解除したとき
  2. 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき

そして「ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない」という但書が付いています。

2号のかっこ書きが、実務では効きます。「専ら報酬を得ることによるもの」は、受任者の利益から除かれています。管理料を受け取ることだけが管理会社側の利益である通常の管理委託では、この2号には当たらないという読み方になります。「うちは報酬を失うのだから賠償だ」という主張は、条文の文言からは素直に出てきません。

1号の「不利な時期」も、時期の問題であって、解除できるかどうかの問題ではありません。賠償が要るかどうかと、解除できるかどうかは、別の話です。

解除の効力は、過去に遡りません

第652条は第620条を準用しています。第620条は「賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない」と定めています。

つまり、解除したからといって過去に払った管理料が戻るわけではありませんし、逆に、それまでの管理業務がなかったことになるわけでもありません。敷金の預り残高、当月分の家賃の日割り、修繕費の前受分は、そのまま引き継ぎの対象として残ります。

月の途中で終わったときの報酬については、第648条第3項第2号が「委任が履行の中途で終了したとき」は「既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる」と定めています。丸ごと1か月分か、まったくのゼロか、という二択ではありません。

通知の中身は、契約時にもらった書面から拾えます

賃貸住宅管理業法第14条第1項は、管理受託契約を締結したときに交付しなければならない書面の記載事項を6号まで並べており、その第5号が「契約の更新又は解除に関する定めがあるときは、その内容」です。同項に違反した書面の交付は、同法第44条第4号で30万円以下の罰金の対象になっています。

手元の契約書が見つからないときは、この契約時書面を探してください。予告期間と起算日の読み方は管理委託契約の解約予告は何か月前?契約書のどこを見るかに、契約書全体のどこを読むかは管理委託契約書はどこを読むべきかにまとめてあります。

都合の悪いことも書いておきます

  • 「いつでも解除できる」は「もめずに終わる」という意味ではありません。予告期間を無視した解除は、清算の交渉が長引く可能性が高くなります
  • 次の委託先を決めずに解除すると、空白ができます。入金の管理、緊急対応、鍵の保管を自分で受けることになります。引き継ぎで受け取る書類の一覧は管理会社を変更するときの引き継ぎ書類に整理しました
  • サブリース(特定賃貸借契約)は、この記事の話ではありません。あちらは大家さんが貸主で管理会社が借主になる賃貸借であり、借地借家法の適用を受けます。同じ「解約」でも、条文がまるごと違います
  • 違約金条項があるときは、条文だけで判断しないでください。有効性は金額の合理性や個別の事情によって判断が分かれる領域です

今日できることを1つだけ選ぶなら

解約条項の中の、「何か月前」ではなく「何を起算日にしているか」を確かめてください。「契約期間の満了日の3か月前まで」なら動ける日は年に一度しかなく、「申し入れの日から3か月を経過したとき」ならいつ出しても3か月後です。ここが分かって初めて、民法第651条を持ち出す必要があるかどうかが決まります。

まとめ

管理の委託は委任であり、民法第651条第1項は各当事者がいつでも解除できると定めています。賠償が必要なのは不利な時期の解除と、受任者の利益をも目的とする委任の解除の2つで、後者からは「専ら報酬を得ることによるもの」が除かれています。解除の効力は将来に向かってのみ生じ、報酬は履行の割合で清算できます。予告期間は「動けない期間」ではなく「清算の条件」だと読み替えると、話の進め方が変わります。

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