さいたま市の重説で示す水の図面は、2026年4月23日から1枚増えました|大家が読む洪水と内水

さいたま市は「令和8年9月6日からの大雨に関する情報について」を公開しており、2026年9月9日の時点で避難情報の発令はなく、開設中の避難所もありません。市に出ているのは土砂災害注意報と雷注意報です。その前日9月8日の18時20分、気象庁と国土交通省は庄内川(愛知県・岐阜県)にレベル5氾濫特別警報を発表しました。被害に遭われた地域の方々に、お見舞いを申し上げます。

結論からお伝えすると、さいたま市の物件では、2026年4月23日から、重要事項説明で示す水の図面が1枚増えました。増えたのは内水ハザードマップです。それまで市が公開していた内水のマップは、市自身が「水防法の規定に基づかないもの」と説明していたため、重要事項説明の対象ではありませんでした。

重要事項説明で説明するのは「危険度」ではありません

まず、条文が何を求めているかを正確に見ます。宅地建物取引業法35条1項14号ロを受けた同法施行規則16条の4の3第3号の2は、こう書いています。

水防法施行規則(平成十二年建設省令第四十四号)第十一条第一号の規定により当該宅地又は建物が所在する市町村の長が提供する図面に当該宅地又は建物の位置が表示されているときは、当該図面における当該宅地又は建物の所在地

説明するのは「浸水のおそれが高い/低い」という評価ではなく、その図面の上で、この建物がどこにあるかです。そして同じ16条の4の3は、建物の貸借の契約について第1号から第5号まで及び第7号から第12号までを対象と定めています。3号の2は第1号から第5号までの中にあるので、賃貸でも説明の対象です。売買だけの話ではありません。

その図面は、すでに入居者の家にも届いているものです

引用されている水防法施行規則11条1号は、市町村が地域防災計画で定めた事項を住民に周知させるための措置を定めた条文で、こう書かれています。

「……図面に市町村地域防災計画において定められた法第十五条第一項各号に掲げる事項……を記載したものを、印刷物の配布その他の適切な方法により、各世帯に提供すること

つまり重要事項説明で示される図面は、市が各世帯に配っている紙です。大家の手元にも、入居者の手元にも、同じものが届いている前提になっています。「重説で初めて出てくる特別な資料」ではありません。

さいたま市で重要事項説明の対象となる水の図面6枚。洪水5種類と、2026年4月23日に加わった内水1種類を並べた図

さいたま市の対象は、洪水5種類と内水1種類

さいたま市が「水防法の規定に基づいて作成した」としている洪水ハザードマップは5種類で、いずれも令和7年1月作成です。

  • 荒川・入間川版(国管理河川/全区)
  • 利根川・江戸川版(国管理河川/見沼区、緑区、岩槻区)
  • 芝川・笹目川など版(埼玉県管理河川/北区、大宮区、見沼区、浦和区、南区、緑区)
  • 鴨川・鴻沼川・新河岸川など版(埼玉県管理河川/西区、北区、大宮区、中央区、桜区、南区)
  • 綾瀬川・元荒川・新方川など版(埼玉県管理河川/見沼区、緑区、岩槻区)

令和7年2月25日の更新は、避難所名称などの記載内容の更新で、洪水浸水想定区域や想定浸水深といった災害リスク情報に変更はないと市が明記しています。

ここに、2026年(令和8年)4月23日から内水ハザードマップが加わりました。

旧版と新版で、何が変わったのですか?

市のページに、宅地建物取引業者向けの断り書きがそのまま載っています。

「令和8年4月23日より公開している『さいたま市内水ハザードマップ』は水防法施行規則の規定に基づくものであり、上記法令により重要事項としての説明が必要となります」

そのうえで、注記としてこう続きます。「令和8年4月23日以前に公開していた『さいたま市内水ハザードマップ(令和3年4月)』につきましては、水防法施行規則の規定に基づかないものです」

根拠が変わった理由は、区域図の指定です。新しいマップは水防法14条の2の規定に基づく「雨水出水浸水想定区域図」(令和8年3月31日指定)を基に作成されています。区域図が指定されたことで、水防法の枠に入り、重要事項説明の対象になったという順番です。

つまり、同じ「内水ハザードマップ」という名前の紙が、2026年4月23日を境に法律上の位置づけを変えたということです。古いほうを持っている大家が、それを最新版だと思って入居希望者に見せると、いま重説で示されているものとは別の紙を見せていることになります。

新しい内水マップは、どういう前提で描かれているか

数字を押さえておくと、入居者から聞かれたときに答えられます。市が公表している作成条件はこうです。

  • 想定し得る最大規模の雨として、時間最大153ミリ、総雨量249ミリがさいたま市全域に降り、放流先河川の水位が高い場合を想定
  • 下水道の排水能力を超える大雨で内水はん濫が発生した場合の浸水区域と浸水深を、浸水シミュレーションで示したもの
  • 想定される浸水深0.1メートル以上の区域から10.0メートル未満の区域までを6段階で色分け
  • 令和7年3月時点のさいたま市地形図を使用
  • 一級河川の外水氾濫(洪水)は考慮していないため、洪水ハザードマップも併せて確認するよう市が求めている

最後の行が実務では大きいところです。内水と洪水は別々に見る設計になっているので、片方だけを見て「うちは白い」と判断すると外れます。河川から離れた物件が内水で色が付き、河川に近い物件が内水では白い、という組み合わせも起こります。

あわせて市は、想定されていない地域でも状況によっては浸水することがあるとして、地図のとおりに浸水するわけではないと注意書きを付けています。

説明する義務は大家にはありません。それでも見ておく理由

この説明義務は宅地建物取引業者にかかるものです。大家自身に説明義務はありません。仲介や管理を委託していれば、重要事項説明はその会社が行います。

それでも自分で見ておく理由は3つあります。

  1. 聞かれるのは大家のほう:内見のときに入居希望者が「ここは浸水しますか」と聞く相手は、立ち会っている人です。図面を見たことがなければ、その場で答えられません
  2. 色が付いている物件は、募集の書き方が変わる:1階と2階で条件を分けるのか、駐車場の位置を先に説明するのか。募集を始めてから考えるより、図面を見てから決めたほうが早い
  3. 火災保険の水災補償と話がつながる:内水も水災の対象になり得る一方で、補償の対象や免責の設定は契約ごとに違います。証券のどこを見るかは大家の火災保険料は2026年も上がるのか|値上げ記事の前に見る一次資料で扱っています
物件の浸水深を確かめる5つの段。さいたま市地図情報を開き、防災まちづくり情報マップを選び、住所で検索し、メッシュを押して数値を読み、洪水と内水の両方で繰り返す

自分の物件を確かめる手順

区ごとのPDFを開いて目で探す方法もありますが、浸水深を数値で読むなら市の地図情報のほうが早いです。

  1. さいたま市の地図情報検索サイト「さいたま市地図情報」を開く
  2. 地図名称「防災まちづくり情報マップ」を選ぶ
  3. 確認したいハザードマップ名称の「浸水深」を選び、利用上の注意に同意する
  4. 物件の住所で検索し、任意のメッシュをクリックすると浸水深がポップアップで数値表示される
  5. 洪水と内水の両方で同じ操作を繰り返す

紙が必要なら、内水ハザードマップは2026年4月23日から、区役所の情報公開コーナー、支所および市民の窓口、公民館、生涯学習総合センター、図書館で配布されています。

もうひとつ、シミュレーションではなく実際に起きた履歴を見る方法もあります。市は「さいたま市浸水履歴マップ」を公開していて、市民から通報のあった浸水情報は内水ハザードマップには反映されていない、と明記しています。色が付いていない場所でも、履歴のほうに記録が残っていることがあるということです。

大雨のあとに、大家の側に残る作業

今回のように避難情報が出ない雨でも、建物の側では小さな痕跡が残ります。ここは判定ではなく、記録の話です。

  • 雨が降っている間に、外まわりの写真を撮る:どこに水が溜まったかは、晴れると分からなくなります。駐輪場の低い側、外廊下の排水口、ゴミ置き場の床
  • 排水口に落ち葉が乗っていた位置を記録する:詰まりは同じ場所で繰り返します。放置したときに何が起きるかはアパートの雨樋の詰まりを放置すると何が起きるかにまとまっています
  • 入居者からの連絡は、内容と時刻をそのまま残す:「9日7時20分、201号室、玄関の三和土に水が入った」のように書けば、原因を調べる順番を決められます

台風の前後に動く順番は、台風が来る前に大家が見ておく5か所|風速15mで屋根瓦ははがれ始めるに整理しています。

なお、建物ごとの浸水の危険性や、対策工事が必要かどうかの判定は、この記事ではできません。個別の判定は、さいたま市の防災課(048-829-1126)、雨水出水浸水想定区域図については下水道計画課(048-829-1566)、水位情報については河川課(048-829-1585)が窓口として案内されています。保険の適用については、契約している保険会社か代理店に確認してください。

今日やることを1つだけ選ぶなら

物件の住所を「防災まちづくり情報マップ」に入れて、洪水と内水の2つで浸水深の数値を読み、その2つの数字を物件の台帳に書き込んでください。1回書けば、次に聞かれたときは台帳を見るだけで答えられます。数字がどちらも0のままだった場合も、その「0」を書いておくことに意味があります。

出典

  • 宅地建物取引業法施行規則16条の4の3第3号の2、水防法施行規則11条1号(e-Gov法令検索・2026年9月9日時点)
  • さいたま市「さいたま市内水ハザードマップについて(令和8年4月23日公開)」(2026年6月19日更新)
  • さいたま市「さいたま市洪水ハザードマップについて」(2025年2月25日更新)
  • さいたま市「令和8年9月6日からの大雨に関する情報について」(2026年9月7日更新)
  • 気象庁・国土交通省「庄内川にレベル5氾濫特別警報発表」(令和8年9月8日18時20分)

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