角部屋でない中部屋をどう埋めるか|大家が見る国の音の等級は4項目です

結論からお伝えすると、「中部屋は両隣の音が気になる」という前提は、国の物差しでは4分の1の話です。住宅性能表示制度で音を評価する項目は4つあり、そのうち両隣の壁を見るのは1つだけ。残る3つは上下階の音と、外から入る音です。しかも4項目ともすべて選択項目で、評価を受けていない住宅のほうが多い。角部屋でないことを埋めるなら、この構図を知ったうえで、書けることと書けないことを分けてください。

木造2階建て、1棟8戸のアパート。同じ2DKで、角部屋は退去から3週間で申込が入り、真ん中の2部屋が2か月空いています。仲介会社に理由を聞くと「やっぱり角から決まりますね」。家賃は角部屋のほうが2,000円高く設定してあり、それでも先に決まります。中部屋の内見は入っているものの、申込には至っていません。

住宅性能表示制度で音を評価する4項目の図。重量床衝撃音対策と軽量床衝撃音対策は上下階、透過損失等級(界壁)は両隣、透過損失等級(外壁開口部)は窓を見る。すべて選択項目。

国には音の等級がある。ただし全部が「選択」です

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)3条は、国土交通大臣と内閣総理大臣が日本住宅性能表示基準を定めなければならないとしています。同法5条により、登録住宅性能評価機関がこの基準に従って評価し、住宅性能評価書を交付します。

この基準(平成13年8月14日国土交通省告示第1346号。最終改正は令和7年9月1日消費者庁・国土交通省告示第1号)は、性能を10の分野に分けています。そのうち8番目が「音環境に関すること」で、中身は次の4項目です。

  • 8-1 重量床衝撃音対策(上下階との界床。重いものの落下や足音)
  • 8-2 軽量床衝撃音対策(上下階との界床。軽いものの落下)
  • 8-3 透過損失等級(界壁)(居室の界壁を通る空気伝搬音)
  • 8-4 透過損失等級(外壁開口部)(外壁の開口部=窓のサッシを通る空気伝搬音)

新築住宅の必須評価項目は、令和4年10月1日施行の見直しで4分野10項目になりました。構造の安定、劣化の軽減、維持管理・更新への配慮、温熱環境・エネルギー消費量の4つです。音環境は4項目とも選択で、申請しなければ評価されません。さらに8-1から8-3までは共同住宅等のみが対象で、一戸建ては対象外とされています。

両隣を測る項目は、4つのうち1つだけです

並べ直すと、こうなります。

  • 上下階を見る項目 …… 8-1、8-2(2つ
  • 両隣を見る項目 …… 8-3(1つ
  • 外から入る音を見る項目 …… 8-4(1つ

中部屋の弱みとして語られるのは、ほぼ8-3の話です。ところが8-1と8-2は、角部屋でも中部屋でも同じ条件です。上の階に人が住んでいれば、角部屋も足音を受けます。音の不安の半分は、位置と関係のないところで起きているということになります。

実際、入居者から届く音の苦情がどこから来ているかを整理してみると、上下階のほうが多い物件は珍しくありません。苦情が入ったときの進め方は騒音の苦情が来たときの進め方に段階ごとに書いています。

透過損失等級が「1」なら、安心してよいのでしょうか

ここが読みどころです。8-3の等級は1から4まであり、告示はそれぞれをこう定義しています。

  • 等級4:特に優れた空気伝搬音の遮断性能(特定の条件下で日本産業規格のRr-55等級相当以上)
  • 等級3:優れた空気伝搬音の遮断性能(同 Rr-50等級相当以上)
  • 等級2:基本的な空気伝搬音の遮断性能(同 Rr-45等級相当以上)
  • 等級1建築基準法に定める空気伝搬音の遮断の程度が確保されている程度

等級1の定義が「建築基準法どおり」です。つまり法律を守っているだけの壁は、国の等級では最下位に置かれています。「基準法に適合しているから問題ない」と「音が気にならない」は、制度の上でも別のことだと書かれている、ということです。

この4段階が付いているのは、評価を申請した住宅だけです。多くの賃貸アパートは、そもそも等級を持っていません。だから募集図面に「遮音性能」を書ける物件はごくわずかで、書けないことのほうが普通です。

角部屋と中部屋で外の音を受ける面の数を比べた図。角部屋は外壁に面する方向が2つ、中部屋は1つで、外の音を受ける面が半分になる。上下階の条件は同じ。

中部屋が角部屋より有利な1点

8-4の透過損失等級(外壁開口部)は、告示の書き方が他と違います。

東面、南面、西面及び北面の各方位について、等級(1、2又は3)による。

方位ごとに評価する項目です。そして中部屋は、外壁に面している方向が原則1つ。角部屋は2つです。幹線道路、線路、コンビニの駐車場、隣地の給湯器。外から入る音を受ける面が、中部屋は角部屋の半分になります。

これは机上の理屈ではなく、内見でそのまま確かめられます。角部屋の窓を開けて外の音を聞き、中部屋でも同じことをしてみてください。道路側に面した角部屋のほうがうるさいことは、実際にあります。

同じ理由で、冬の寒さも中部屋のほうが軽くなります。外気に接する壁が少ないためです。ここは「暖房費が安い」と断定して書くところではありませんが、内見で「角部屋より冷えにくいと思います」と言えるだけの理屈はあります。

募集でどう書くか

いちばんやってはいけないのが、測っていないものを「静かです」と書くことです。等級を持っていない物件で遮音性能をうたえば、あとで入居者と揉めます。書けるのは次のようなものです。

  1. 両隣の間取りと使い方。両隣とも同じ1Kなのか、片方が階段室や物置なのか。階段に面していれば、実質的に片側は角部屋と同じです
  2. 建物の構造と、界壁の作り。分かっている範囲だけ。分からないものは書かない
  3. 入居者層。学生中心か社会人中心か。生活時間帯が揃っているほうが音の苦情は減ります。どの層に貸すかを先に決める話は大家が入居審査をどこまで厳しくするか|空室が延びる基準と、緩めてはいけない一線にあります
  4. やった工事。床にカーペットを敷いた、建具の隙間を直した、といった事実

そのうえで、家賃の付け方を見直してください。角部屋と中部屋で差を付けているなら、その差額が「音の不安の値段」として妥当かどうかです。差が小さすぎれば角部屋から順に決まり、中部屋だけが残ります。募集条件をどこから動かすかは空室が3か月埋まらない。募集条件のどこを動かすか、初期費用で調整する手は家賃を下げる前に試すこと|初期費用の調整という手にまとめています。

募集図面の備考欄そのものの直し方は募集図面(マイソク)で反響が変わる|書き換えるべき5か所を参照してください。

なお、界壁が実際にどう作られているか、その建物にどの条文がかかるかは、建築士か特定行政庁に確認してください。天井裏を開けて見る作業は下地や配線を傷めるおそれがあるので、大家が1人でやるところではありません。この記事では個別の建物の判定をしません。

今日やることを1つだけ選ぶなら

空いている中部屋の両隣が何の部屋かを紙に書き出してください。左右とも住戸なのか、片方が階段室・物置・エレベーターなのか。片側が住戸でないなら、その部屋は実質的に角部屋と同じ条件です。それを募集図面に書けるかどうかで、同じ部屋の見え方が変わります。

出典:住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)3条・5条(e-Gov法令検索・2026年9月5日時点)/日本住宅性能表示基準(平成13年8月14日国土交通省告示第1346号。最終改正 令和7年9月1日消費者庁・国土交通省告示第1号)/国土交通省「住宅性能表示制度における性能表示事項(必須/選択項目の範囲)」(令和4年10月1日施行)

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