青色申告にすると何が変わるか

結論からお伝えすると、青色申告にして変わることは大きく3つです。①青色申告特別控除が使えること、②赤字を翌年以降に繰り越せること、③家族への給与を経費にできる道が開けること。ただし、そのすべてが誰にでも同じように効くわけではありません。持っている部屋数によって、受けられる内容が変わります。

ご存じの方も多い話だと思いますので、ここでは「自分の場合はどれが効くのか」を判断できる形で整理します。以下は2026年7月時点での一般的な取り扱いです。控除額や要件は改正されることがありますので、申請の前に必ず税理士か所轄の税務署にご確認ください。

先に、よくある失敗から

青色申告は「手続きの期限」でつまずく人がいちばん多い制度です。

  • 申告の時期になってから青色にしようとしたが、その年分にはもう間に合わなかった
  • 承認は受けていたのに帳簿を複式で付けておらず、最大の控除を受けられなかった
  • 相続でアパートを引き継いだが、亡くなった方の青色申告はそのまま承継されないことを知らず、届出をしていなかった
  • 部屋数が少ないのに家族へ給与を出す前提で計画を立て、あとで組み直すことになった

いずれも制度の中身ではなく、段取りの問題です。青色申告は、始めたい年が始まる前に決めておく制度だと思っておくと間違えません。

青色申告で変わること

項目一般的な内容
青色申告特別控除複式簿記で記帳し、e-Taxによる申告または電子帳簿保存を行う場合は65万円。複式簿記だが電子の要件を満たさない場合は55万円。簡易な記帳の場合は10万円
純損失の繰越赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越し、黒字と相殺できる
青色事業専従者給与生計を一にする家族に払う給与を、届出の範囲で経費にできる
少額減価償却資産の特例一定額未満の資産を取得した年に一括で経費にできる制度が使える場合がある
貸倒引当金一定の条件のもとで計上できる場合がある

ここで注意が必要なのは、65万円・55万円の控除と、専従者給与には「事業的規模であること」が関わってくるという点です。次で見ます。

5棟10室という線引き

不動産の貸付けが「事業的規模」にあたるかどうかの目安として、独立した家屋であれば5棟以上、アパート等であれば10室以上、という基準が広く知られています。いわゆる5棟10室基準です。

事業的規模にあたる場合あたらない場合
特別控除要件を満たせば65万円または55万円原則10万円
専従者給与届出により経費にできる認められない
資産の取壊し等の損失全額を経費にできる場合がある所得の範囲までに制限される場合がある

ただし5棟10室は絶対の線ではなく、賃貸料の収入状況や管理の実態を含めて総合的に判断されるとされています。9室だから必ず駄目、というわけでもありません。境界にいる方こそ、税理士に一度見てもらう価値があります。

部屋数が少なければ、青色にする意味はないのか?

よく聞かれるところです。一般には「10室に届かないなら青色にしても意味がない」と言われますが、現場の感覚は違います。10万円の控除より、赤字を3年繰り越せることのほうが効く年があるからです。とくに、外壁塗装や給湯器の入れ替えが重なって大きく赤字になった年、その赤字を翌年以降の黒字と相殺できるかどうかで、手元に残る現金は変わります。

もう一つ、数字に表れない効果もあります。青色にすると帳簿を付けざるを得なくなるので、物件ごとの収支が毎月見えるようになります。どの部屋にいくらかけているのか、管理料は収入の何%なのか。それが分かるだけで、翌年の打ち手が具体的になります。管理費用の妥当性を考えるときは管理会社を変えたいと思ったときに、最初に確認する3つのこともあわせてご覧ください。

手続きと期限

手続き自体は難しくありません。所轄の税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を出すだけです。期限の考え方が要点になります。

  • すでに賃貸をしている方が翌年分から青色にする場合は、その年の3月15日までに提出するのが原則
  • 新たに賃貸を始めた場合は、開始した日から一定期間内に提出する扱いがある
  • 相続で引き継いだ場合は、被相続人の青色申告はそのまま引き継がれないため、相続人が改めて申請する必要がある
  • 専従者給与を出す場合は「青色事業専従者給与に関する届出書」が別途必要

期限日は状況によって細かく分かれます。ご自身のケースがどれに当たるかは、税務署に電話で確認するのが確実です。相談は無料ですし、5分で終わる話です。

まとめ

特別控除、赤字の繰越、家族への給与。この3つのうち、いま自分に効くのはどれかを考える。部屋数が少なくても繰越は使えるので、規模だけで判断しない。そして何より、始めたい年が来る前に申請しておく。この順で考えれば迷いません。

なお本記事は一般的な制度の説明であり、控除額や要件は改正されることがあります。実際の申請は必ず税理士か所轄の税務署にご確認ください。そのうえで、さいたま市周辺で賃貸経営の日々の運営にお困りでしたら、ご相談ください。まだ管理会社を決めていない段階でもかまいません。

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