減価償却の考え方を、ざっくり掴む

結論からお伝えすると、減価償却とは「建物や設備の代金を、使える年数で割って、毎年少しずつ経費にしていく仕組み」です。現金は出ていかないのに経費になる。ここが他の費用とまったく違う点で、帳簿の利益と手元に残る現金がずれる最大の理由でもあります。掴んでおくべきことは3つだけです。

収益物件をお持ちの方であれば感覚では分かっている話だと思いますので、ここでは仕組みの骨格だけを整理します。なお以下は2026年7月時点で一般に用いられている取り扱いです。年数や計算方法は制度改正で変わることがありますので、実際の申告は税理士か所轄の税務署にご確認ください。

先に、よくある失敗から

減価償却でつまずく場面は、だいたい買うときと、終わるときの2つです。

  • 売買契約書に土地と建物の内訳を書かないまま契約し、建物の金額が小さく計算されて、毎年の償却費が思ったより伸びなかった
  • 中古物件の年数の数え方を知らず、法定の年数のまま長期間で償却していた
  • 償却が終わった翌年に急に税額が増え、資金繰りが苦しくなった
  • 建物と設備を分けずに一本で計上し、設備の分を早く経費にできなかった

いずれも、あとから取り返すのが難しいものばかりです。とくに1つ目は、契約書に一行入れるかどうかだけの話なのに、その後10年以上の申告に影響します。

押さえるべき3つの前提

ひとつ目。土地は減価償却しません。土地は使っても減らないという考え方だからです。ですから物件を買ったとき、代金のうちどれだけが建物なのかが決定的に重要になります。

ふたつ目。建物と、建物に付属する設備は年数が違います。給排水設備や電気設備、エレベーターなどは建物本体より短い年数が使われるのが一般的です。分けて計上できれば、早い時期の経費を厚くできます。

みっつ目。中古で買った建物は、残りの年数で計算します。新築と同じ年数をかけるわけではありません。ここは次の見出しで具体的に見ます。

住宅用建物の法定耐用年数(目安)

2026年7月時点で一般に用いられている、住宅用建物の年数です。実際には構造の細かい区分によって変わりますので、確定は税理士にご確認ください。

構造年数
木造22年
軽量鉄骨造(骨格材の厚み3mm以下)19年
鉄骨造(骨格材の厚み3mm超4mm以下)27年
鉄骨造(骨格材の厚み4mm超)34年
鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造47年

軽量鉄骨は骨格材の厚みで年数が3段階に分かれます。図面や検査済証を見ないと分からないことも多いので、購入時に資料を取っておくことをおすすめします。

中古を買ったとき、年数はどう数えるか

中古の場合、簡便法と呼ばれる数え方が広く使われています。考え方はこうです。

  • 法定の年数をすべて過ぎている建物は、法定年数の20%にあたる年数
  • 一部だけ過ぎている建物は、残っている年数に、経過した年数の20%を足した年数
  • いずれも1年未満は切り捨て、最短は2年

木造アパートで当てはめてみます。築30年なら法定22年をすでに超えているので、22年の20%で4.4年、切り捨てて4年。築10年なら、残り12年に経過10年の20%である2年を足して14年です。同じ木造でも、築年数によって毎年の経費の大きさがまったく変わることが分かると思います。

ただし、この数え方が使えるかどうかには条件があり、大規模な改修を行った場合などは扱いが変わります。実際の計算は必ず専門家にご確認ください。

なぜ「黒字なのに現金がない」が起きるのか?

ここが減価償却のいちばん大事なところです。減価償却費は、現金が出ていかないのに経費になります。一方でローンの元本返済は、現金が出ていくのに経費になりません。この2つがちょうど逆を向いています。

持ち始めた頃は償却費が大きく、元本返済が小さいので、帳簿上の利益は抑えられます。年数が進むと償却費は減り、元本返済の割合は増えていきます。やがて償却が終わると、経費が一気に消えて、現金は出ていくのに帳簿は黒字という状態になります。いわゆるデッドクロスです。

だからこそ、償却がいつ終わるかを最初から知っておくことに意味があります。4年で終わるのか14年で終わるのか。それだけで、その間に何をしておくべきかが変わります。

そして、もう一つ申し上げておきたいことがあります。法定耐用年数を過ぎた建物は「価値がない」と言われがちですが、税務上の年数と建物の実際の寿命はまったくの別物です。木造22年というのは税金を計算するための区切りであって、22年で住めなくなるわけではありません。手入れをした築30年の木造アパートは、現場では十分に現役です。

まとめ

土地は償却しない。建物と設備は分ける。中古は残りの年数で数える。この3つを掴んでおけば、税理士との会話が一気に楽になります。そして償却が終わる年を先に知っておくこと。そこから逆算して修繕や募集の計画を立てられるようになります。日々の運営面については空室が3か月埋まらないときに見直す6つのポイントもご参照ください。

本記事は仕組みの説明にとどめており、個別の計算は税理士か税務署にご確認ください。そのうえで、さいたま市周辺で築年数の経った物件の運営にお悩みでしたら、ご相談ください。まだ何も決めていない段階でもかまいません。

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