はじめての大家さんが押さえる借地借家法の基本|更新・解約・家賃の3点

結論からお伝えすると、はじめて大家になった方が借地借家法で押さえるべきなのは、「契約は基本的に更新される」「大家からは簡単に終わらせられない」「家賃は一方的に変えられない」の3点です。条文を覚える必要はありません。この3点を知っているだけで、契約書の読み方も、入居者への伝え方も変わります。

逆にここを知らないまま「うちの物件だから」と動くと、法律上そもそも通らない要求を入居者に突きつけることになり、話がこじれます。相続や購入で急に大家になった方がつまずきやすいのが、この部分です。

借地借家法は、誰を守るための法律なのか

借地借家法は、建物の賃貸借(借家)と、建物を建てるための土地の賃貸借(借地)のルールを定めた法律です。アパートを貸している大家さんに関係するのは、主に「借家」の部分です。

この法律の考え方を一言でいうと、住まいを失うと生活の基盤ごと失う借主を、貸主より手厚く保護するというものです。不公平に感じられるかもしれませんが、ここを前提にしないと以下の話が腑に落ちません。あわせて、借主に不利な特約は無効になることがあるという点も押さえてください。契約書に書けば何でも通る、とはなりません。

借地借家法で大家が押さえる5点をまとめた図。契約は期間満了でも自動で終わらない、解約には正当事由が要る、家賃は一方的に変えられない、借主に不利な特約は無効になることがある、通知の前に専門家へ相談する。

はじめての大家さんが押さえる3つの基本

1. 普通借家契約は、期間が来ても自動で終わらない

「2年契約だから2年で終わり」ではありません。一般的な賃貸借契約(普通借家契約)では、期間が満了しても、大家側から更新を拒む正当な理由がなければ契約は更新されます。更新手続きをしないまま期間が過ぎた場合も、同じ条件で続いている扱い(法定更新)になるのが一般的です。「更新書類を出さなかったから契約は切れた」とはなりません。

2. 大家からの解約・更新拒否には「正当事由」が要る

大家側から契約を終わらせたいときは、期間満了の1年前から6か月前までに通知したうえで、正当事由が必要とされています。正当事由は次のような事情を総合的に見て判断されます。

  • 大家がその建物を使う必要性(自分や家族が住む必要があるか)
  • 入居者がその建物を使う必要性(生活・仕事の基盤になっているか)
  • これまでの経過(家賃の支払い状況、契約違反の有無)
  • 建物の現況(老朽化の程度、耐震性など)
  • 立退料の提示

「古いから建て替えたい」だけでは、通常は正当事由として弱いとされています。立退料を含めた条件を組み立てる必要が出ることが多く、金額も事情によって大きく変わります。建て替えや売却のために空室化を進めたい場合は、早い段階で弁護士に相談してください。

3. 家賃の増額・減額は、一方的には決められない

周辺相場や固定資産税が上がったときに増額を求めること自体は、一般的には認められています。ただし通知すれば自動的に上がるものではありません。入居者が応じなければ、協議、調停、訴訟という順に進みます。これは逆にも働き、「賃料は減額しない」という特約は効力が認められにくいとされています(定期借家契約では扱いが異なります)。

定期借家契約にすれば、更新しないと決められるのか?

できます。ただし条件があります。定期借家契約は期間満了で更新されずに終了する契約で、建て替え予定の物件などで使われます。成立には一般的に次の要件が必要とされています。

  1. 契約を書面で行うこと
  2. 契約書とは別の書面で「更新がなく期間満了で終了する」ことを事前に説明すること
  3. 期間1年以上の場合、満了の1年前から6か月前までに終了を通知すること

特に2番目を落とすと、定期借家のつもりが普通借家として扱われる可能性があります。

都合の悪いことも書いておきます。定期借家は入居者にとって不利な条件のため、募集では不利になりやすいです。同じ賃料なら普通借家の物件が選ばれます。使いどころを絞ったほうがよい契約形態だと考えてください。

普通借家契約と定期借家契約の違いを比較した図。普通借家は期間満了でも更新され解約に正当事由が必要で募集では選ばれやすい。定期借家は期間満了で終了するが書面と事前の別書面での説明が必須で、入居者に不利なため募集は不利になりやすい。

契約書に書いても通らないことがある

  • 「1か月滞納したら無催告で解除できる」…解除が認められるには、信頼関係が壊れたといえる程度の滞納が必要とされています
  • 「退去時はクロス全面張替えを借主負担」…通常損耗・経年劣化を借主に負わせる特約は、要件を満たさないと無効と判断されることがあります
  • 「大家はいつでも室内に立ち入れる」…借主の使用収益の権利があり、無断の立ち入りは認められません

原状回復の負担は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が実務の基準として使われています。退去立会いで確認すべき場所と、写真の撮り方もあわせてご覧ください。

実務でこの3点がきいてくる場面

どこまで自分で判断してよいか

実際の場面では、事実関係の細かい違いで結論が変わります。概説だけで判断すると、かえって遠回りになります。目安は次のとおりです。

  • 自分で判断してよい…契約書を読んで疑問点を洗い出す、更新時期を管理する、督促の記録を残す
  • 専門家に相談する…退去を求める、立退料を提示する、賃料の増額を通知する、契約解除を検討する

後者はいずれも、動き出してから引き返しにくい場面です。通知を出す前に相談するのが結果的にいちばん安く済みます。弁護士会や自治体の無料相談も使えます。最初の1年で起きやすいつまずきは賃貸経営で初心者がつまずく5つのポイントにまとめています。

まとめ

  • 普通借家契約は、期間満了でも自動では終わらない
  • 大家からの解約・更新拒否には正当事由が必要で、老朽化だけでは通りにくい
  • 家賃の増減額は一方的に決められない
  • 定期借家契約は要件が厳格で、募集面では不利になりやすい
  • 借主に不利な特約は、契約書に書いても無効と判断されることがある

本記事は一般的な考え方の整理です。個別の判断は必ず弁護士等の専門家にご確認ください。

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