空室を民泊に回す前に見る4つのこと|家主が留守なら管理の委託は法律上の義務です

結論からお伝えすると、空室を民泊に回すときにいちばん効いてくるのは、届出でも設備でもなく「宿泊させている間、その建物に自分がいるかどうか」です。いないなら、住宅宿泊管理業者への委託が法律上の義務になります。任意ではありません。

そして、その委託先は今の賃貸管理会社とは限りません。賃貸住宅管理業の登録とは別の登録が要るからです。ここを先に確かめておかないと、届出の直前で止まります。

きっかけは、2026年8月28日の発表です

総務省は2026年8月28日、長崎県雲仙市が新設する「宿泊税」に総務大臣が同意したと発表しました(出典:総務省「宿泊税の新設」・令和8年8月28日)。条例の施行は令和9年4月1日の予定です。

遠い話に見えますが、資料の1行を読むと、賃貸の大家さんに関係が出てきます。課税の対象になる宿泊施設が、こう書かれています。

  • 旅館業法の許可を受けて営む旅館・ホテル及び簡易宿所
  • 住宅宿泊事業法の届出をして営む住宅宿泊事業に係る住宅

2つ目が、いわゆる民泊です。税率は1人1泊につき宿泊料金5千円未満で100円、5千円以上で350円。徴収方法は特別徴収です。つまり税を負担するのは宿泊者ですが、集めて市に納めるのは施設の側になります。

宿泊税は法定外目的税で、地方税法第731条第2項により、新設するにはあらかじめ総務大臣に協議して同意を得なければなりません(出典:e-Gov法令検索・2026年8月30日時点)。だから、どこかの市町村が入れようとすると、必ず総務省の報道資料に載ります。自分の物件がある市が動いているかどうかは、そこで追えます。

ここから、賃貸の空室を民泊に回すときに先に見る4つを順に見ます。

空室を民泊に回す前に確認する5か所。自治体の条例による期間制限、法律上の住宅にあたるか、宿泊中に家主がいるか、委託先の住宅宿泊管理業の登録、年6回の報告と宿泊税の事務

1.募集中の空室は、そのまま「住宅」に当たります

住宅宿泊事業法は、対象になる家屋を第2条第1項で定義しています。第2号がこうです(出典:e-Gov法令検索・2026年8月30日時点)。

「現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるもの」

条文に「募集が行われている家屋」と書いてあります。誰かが住んでいなければ民泊にできない、ではありません。退去して、次の入居者を募集している空室は、この法律の「住宅」に当たります。

ここは実務の人でも取り違えます。空室だから対象外だと思って調べるのをやめてしまう。逆で、賃貸の空室は、法律が最初から想定している形のひとつです。

ただし、募集をやめると外れます

裏を返すと、募集を止めて完全に空けたままにすると「人の居住の用に供されている」と言いにくくなります。民泊に回すつもりなら、賃貸の募集を止めない。ここは順番の問題です。空室のまま置いたときの費用の話は空室が続くと固定資産税は上がるのかにまとめました。

2.家主が留守にするなら、管理の委託は義務です

同法第11条第1項は、次のときに住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託しなければならないと定めています。

  • 第1号 届出住宅の居室の数が省令で定める数を超えるとき(施行規則第9条第2項により5室
  • 第2号 届出住宅に人を宿泊させる間、不在となるとき

アパートの空室を1室だけ回す場合、第1号にはかかりません。問題は第2号です。宿泊者が泊まっている間、大家さんがその建物にいないなら、委託が義務になります。

「不在」から除かれる一時的なものは、施行規則第9条第3項が定めています。「日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内の不在」。買い物や食事のための外出です。自宅から通う形は、ここには入りません。

例外は同条第4項で、次の両方を満たすときだけです。

  • 大家さんの生活の本拠である住宅と届出住宅が、同一の建築物内・同一敷地内・隣接のいずれかにあること
  • 自分で管理業務を行う居室の数の合計が5以下であること

アパートの1階に自分が住んでいて、2階の1室を回す。この形なら自分でできます。別の場所に住んでいるなら、委託です。

今の管理会社に頼めるのか?

ここがいちばん引っかかるところです。住宅宿泊管理業を営むには、同法第22条第1項により国土交通大臣の登録が要ります。5年ごとの更新制です。

賃貸住宅管理業の登録とは別の登録です。今の管理会社が賃貸住宅管理業者として登録していても、住宅宿泊管理業者として登録しているとは限りません。しかも施行規則第9条第1項第1号は、委託の方法をこう縛っています。

「届出住宅に係る住宅宿泊管理業務の全部を契約により委託すること」

一部だけ頼む、という形は取れません。1社に全部です。管理の範囲を切り分ける話は管理を「一部委託」にするという選択で扱いましたが、民泊の側ではその選択肢がありません。

なお、委託した場合は第11条第2項により、第5条から第10条までの義務(衛生の確保、騒音防止等の説明、苦情への対応、宿泊者名簿の備付けなど)は大家さんには適用されなくなります。責任ごと移る形です。

3.180日の起算は、4月1日の正午です

住宅宿泊事業は、人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないものと定義されています(法第2条第3項)。この「1年間」の数え方が、施行規則第3条に書かれています。

「毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの期間において人を宿泊させた日数とする。この場合において、正午から翌日の正午までの期間を一日とする」

暦年でも、会計年度でもありません。正午区切りです。3月31日から4月1日にかけて泊まってもらうと、その1泊は正午をまたぐので、どちらの年に入るかが変わります。繁忙期の予約を入れる前に、ここを1回確かめておくと計算が合います。

賃貸のほうの1年の流れは賃貸経営の1年は何月に何が来るかにまとめています。民泊を足すと、この年間表に4月1日正午という別の起点が1本増えます。

4.報告は年6回、税は集めて納める側になります

届け出たあとに毎年続く事務が2つあります。

ひとつは都道府県知事への定期報告です。法第14条を受けた施行規則第12条第2項は、こう定めています。

「住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の15日までに、それぞれの月の前2月における前項各号に掲げる事項を、都道府県知事に報告しなければならない」

年6回です。報告する中身は、宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳(同条第1項)。賃貸のほうの管理業務報告が年1回で足りるのと比べると、事務の量が違います。賃貸側の報告義務は大家が管理会社に対応履歴を残してもらうにはで扱いました。

もうひとつが、冒頭の宿泊税です。導入されている市町村なら、宿泊者から預かって納める事務が乗ります。自分の利益ではないお金を、いったん預かる立場になります。ここを見落とすと、料金設定のときに税込・税別の整理がずれます。

賃貸で貸す場合と民泊で回す場合の事務の比較。報告は年1回と年6回、登録は賃貸住宅管理業と住宅宿泊管理業で別、委託は一部可と全部を1社、日数の上限は無しと年180日

その前に、自分の市の条例を見る

最後に、いちばん先に確かめるべきものを置きます。法第18条です。

「都道府県は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、区域を定めて、住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができる

保健所を設置している市(さいたま市などが該当します)は、その市が事務を処理します。区域と期間の制限は、法律ではなく自治体の条例で決まります。住居専用地域は平日は不可、といった形の条例を持つ自治体があります。届出の準備を始める前に、物件の所在地の条例と、その区域図を1回見てください。

なお、届出が受け付けられるかどうか、条例の区域に入るかどうかの最終的な判断は、行政の窓口が行います。物件の所在地を管轄する都道府県または保健所設置市の住宅宿泊事業の担当窓口に、着手前に確認してください。ここで挙げた条文は、窓口で何を聞けばよいかの下調べのためのものです。

まとめ

  • 総務省は2026年8月28日、長崎県雲仙市の宿泊税に同意(令和9年4月1日施行予定)。課税対象に住宅宿泊事業法の届出住宅が含まれています
  • 募集中の空室は、法第2条第1項第2号によりそのまま「住宅」に当たります
  • 宿泊させる間に不在なら、住宅宿泊管理業者への委託が義務(法第11条第1項第2号)。しかも全部を1社に
  • 住宅宿泊管理業は賃貸住宅管理業とは別の登録(法第22条第1項)
  • 180日の起算は4月1日正午(施行規則第3条)
  • 都道府県知事への報告は年6回、2・4・6・8・10・12月の15日まで(施行規則第12条第2項)
  • 区域と期間の制限は自治体の条例(法第18条)。着手前に必ず確認します

空室を1室回すだけでも、賃貸とは別の届出・別の登録・別の年間カレンダー・別の税がついてきます。順番としては、条例、委託先の登録、この2つが先です。設備や写真は、そのあとで間に合います。

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