空室の報告を管理会社に求める頻度|賃貸の募集に法律上の報告義務はありません
結論からお伝えすると、空室の募集について「何日おきに報告すること」という法律は、賃貸には存在しません。売買にはあります。だから、頻度を決めたいなら法令を探すのではなく、契約と依頼のときに自分で書き込むしかありません。
「専任で任せているのだから2週間に1回は報告が来るはず」と考えている大家さんは少なくありません。その2週間に1回は、売買の条文です。賃貸の募集には、そのまま働きません。まず、どこにその線が引かれているのかを見ます。

2週間に1回の報告は、売買の話です
宅地建物取引業法第34条の2は、こう始まります。
「宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない」(出典:e-Gov法令検索・2026年8月29日時点)
主語のうしろに並んでいるのは「売買又は交換」だけです。貸借(賃貸)は入っていません。 この条文の中で報告義務を定めているのは、次の2つです。
- 第8項 媒介契約の目的物である宅地又は建物の売買又は交換の申込みがあったときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告しなければならない
- 第9項 専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、依頼者に対し、業務の処理状況を2週間に1回以上(専属専任の場合は1週間に1回以上)報告しなければならない
第10項では、これらに反する特約は無効とまで定めています。かなり強い義務です。ただし、その全体が「売買又は交換の媒介の契約」を対象にしている、というのがこの条の作りです。
では、賃貸の募集には何が残るのか?
賃貸の客付けは、宅建業でいう「貸借の媒介」です。第34条の2の書面交付義務も、専任媒介の3か月という期間制限も、2週間に1回の報告義務も、条文の文言のうえでは及びません。賃貸の募集で媒介契約書そのものを見たことがない、という大家さんが多いのは、ここに理由があります。
もうひとつ、賃貸住宅管理業法の側も見ておきます。同法第20条を受けた施行規則第40条第1項が、管理業務報告書の記載事項を3つ挙げています。
- 報告の対象となる期間
- 管理業務の実施状況
- 管理業務の対象となる賃貸住宅の入居者からの苦情の発生状況及び対応状況
ここにも「募集」「空室」「内見」は出てきません。しかも報告の周期は「管理受託契約を締結した日から一年を超えない期間ごと」です。この報告そのものの読み方は大家が管理会社に対応履歴を残してもらうにはにまとめています。
つまり、宅建業法にも賃貸住宅管理業法にも、空室の報告頻度の根拠はありません。報告が来ないことは、それだけでは違反ではないということです。

では、頻度は何を基準に決めるか
法律に根拠がないぶん、実務のリズムから決めます。募集の反応は、ポータルサイトの掲載データが週単位でたまります。土日に内見が集中するため、週明けにその週の数字が確定するという動き方をします。
- 募集開始から最初の1か月 週1回。ここで条件を直せるかどうかが決まります
- 2か月目以降 2週間に1回。動きが鈍い時期に週1回を求めても、同じ報告が繰り返されるだけです
- 繁忙期(1〜3月) 週1回に戻す。判断が1週間遅れると1か月遅れます
回数より、中身を決めたほうが効きます
「週1回連絡ください」だけを頼むと、「今週も動きがありませんでした」という1行が週に1回届くようになります。それは報告ではなく、報告の形をした空白です。求める項目を先に決めます。
- 問い合わせ件数(電話・メール・ポータル経由の内訳)
- 内見件数と、内見して決めなかった人の理由
- 掲載している媒体と、主要な検索条件での表示のされ方
- 同じ条件で募集中の近隣物件の件数と家賃
- 条件を変えるなら、どこを、いくらでという提案
この5つが埋まっていれば、頻度が2週間に1回でも判断できます。逆にこれが埋まらないなら、週1回にしても判断材料は増えません。問い合わせが止まっている原因の見つけ方は内見の申し込みが入らないのはなぜか、掲載面の直し方は募集図面(マイソク)で反響が変わるで扱っています。
どこに書いておくか
根拠になるのは契約書です。管理受託契約書の特約欄か、募集の依頼をするときのやり取りに、次の形で残します。
- 頻度 「募集開始から1か月は週1回、以降は隔週」
- 手段 「メールで」。電話だけにすると記録が残りません
- 項目 上の5項目を書き出す
- 期限 「毎週月曜まで」。曜日を決めると担当者の予定に入ります
管理受託契約書のどこを読むかは管理委託契約書はどこを読むべきか、月次報告そのものが来ないときの手順は管理会社から月次報告が来ない。これは普通なのかにまとめました。
都合の悪いことも書いておきます
- 報告の頻度を上げても、空室は埋まりません。 埋まるのは条件を直したときです。頻度は「直す判断を早くする」ための仕組みでしかありません
- 週1回を1年続けさせると、担当者の手が報告作成に取られます。 1人で数十戸から百戸以上を見ている担当者に、全物件で同じことを求める会社があれば、優先順位は下がります
- 報告がないことを理由に解約すると、こちらの解約予告期間の縛りは残ります。 順番としては、まず項目を決めて頼み直すほうが早いです
今日できること
- いま募集中の部屋について、直近1か月で何件の問い合わせと内見があったかを聞く。数字が即答されるかどうかで、記録の有無が分かります
- 上の5項目をそのまま貼り付けて、次回からこの形でお願いしたいとメールで送る
- 更新のタイミングで、契約書の特約欄に頻度と項目を書き足す
担当者で対応が変わる話は管理会社は会社で選ぶな、変えるかどうかの判断は管理会社を変えるべきか迷ったときの7つのチェック項目、変えたあとに見る場所は管理会社を変えたあとの3か月で見る5か所をご覧ください。
まとめ
宅建業法第34条の2の「2週間に1回」は売買又は交換の媒介の話で、賃貸の募集には及びません。賃貸住宅管理業法施行規則第40条第1項の報告事項にも、募集や空室は入っていません。空室の報告頻度に、法律の根拠はない。
だから、決めるのは大家さんの側です。頻度は週1回か隔週、手段はメール、項目は5つ。この3つを契約書か依頼のメールに残すだけで、報告は「善意」から「約束」に変わります。
※この記事は2026年8月29日時点の条文(e-Gov法令検索)に基づく一般的な整理です。個別の契約でどこまで求められるかの判断は、弁護士や、宅地建物取引業・賃貸住宅管理業を所管する都道府県・国土交通省の窓口にご確認ください。
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