管理を「一部委託」にするという選択|集金だけを頼むと業法の外に出ます
結論からお伝えすると、管理を一部だけ委託するのは実務としてよくある選び方です。ただし、頼む範囲によっては相手が賃貸住宅管理業法の「賃貸住宅管理業者」に当たらなくなります。当たらなくなると、重要事項の説明も、契約時の書面も、帳簿も、定期報告も、法律上は要らなくなります。
違法な話ではありません。安く頼めるかわりに、法律が用意している後ろ盾が外れる、というだけです。外れることを知ったうえで契約書を厚くするか、外れない範囲で頼むか。決めるのは大家さんです。

「賃貸住宅管理業」は、2つの業務で定義されています
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)第2条第2項は、賃貸住宅管理業をこう定めています(出典:e-Gov法令検索・2026年8月29日時点)。
「賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて、次に掲げる業務(以下「管理業務」という。)を行う事業をいう」
- 当該委託に係る賃貸住宅の維持保全を行う業務(維持保全に係る契約の締結の媒介、取次ぎ、代理を含む)
- 当該賃貸住宅に係る家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理を行う業務(前号に掲げる業務と併せて行うものに限る)
第2号のかっこ書きが要点です。金銭の管理は、維持保全と併せて行うときだけ管理業務になります。
集金だけを頼むと、どうなるのか?
国土交通省が示している「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」(令和5年3月31日施行版)は、第2条第2項関係の4でこう書いています。
「金銭の管理を行う業務については、賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて、当該委託に係る賃貸住宅の維持保全を行うことと併せて行うものに限り、第2条第2項に規定する賃貸住宅管理業に該当することとなり、金銭の管理のみを行う業務については、賃貸住宅管理業には該当しない」
集金代行だけ。これが、いちばん頼まれやすくて、いちばん法律の外に出やすい形です。
清掃だけ、点検だけも同じです
同じ資料の第2条第2項関係の2は、「維持保全」を「点検・清掃等の維持を行い、これら点検等の結果を踏まえた必要な修繕を一貫して行うこと」と説明し、次の場合は維持保全に該当しないと書いています。
- 定期清掃業者・警備業者・リフォーム工事業者等が、維持又は修繕の「いずれか一方のみ」を行う場合
- エレベーターの保守点検・修繕を行う事業者等が、賃貸住宅の「部分のみ」について維持から修繕までを一貫して行う場合
- 入居者からの苦情対応のみを行い、維持及び修繕(維持・修繕業者への発注等を含む)を行っていない場合
清掃だけを頼んでいる。エレベーターの点検だけを頼んでいる。夜間の一次受付だけを頼んでいる。どれも、その相手は賃貸住宅管理業者ではありません。
外れるのは、この4つです
賃貸住宅管理業に当たらない相手には、次の義務がかかりません。
- 第13条 契約前の書面交付と説明(管理受託契約の重要事項説明)
- 第14条 契約時の書面交付(対象住宅・実施方法・契約期間・報酬・更新解除の定めなど)
- 第18条・施行規則第38条 帳簿の備付けと5年保存
- 第20条・施行規則第40条 委託者への定期報告
あわせて、第12条の業務管理者(営業所ごとに配置する有資格者)の配置義務もかかりません。定期報告の中身については大家が管理会社に対応履歴を残してもらうには、契約書のどこを読むかは管理委託契約書はどこを読むべきかにまとめています。
そもそも登録していない相手かもしれません
もうひとつ。同法第3条第1項の登録義務には、施行規則第3条で例外があります。管理戸数200戸未満なら登録は不要です。一部委託で頼む相手は小規模な事業者であることが多いので、そもそも登録業者ではない可能性があります。相手が登録しているかどうかは、国土交通省の賃貸住宅管理業者登録の検索で確認できます。会社の見分け方は管理会社の調べ方|看板と実態を見分けるにまとめました。
逆に、頼んだつもりがなくても該当することがあります
解釈・運用の考え方の第2条第2項関係の1は、「委託を受けて」について、「賃貸人から明示的に契約等の形式により委託を受けているか否かに関わらず、本来賃貸人が行うべき賃貸住宅の維持保全を、賃貸人からの依頼により賃貸人に代わって行う実態があれば、該当する」としています。
契約書がないことは、法律の外にいる理由になりません。実態で判断されます。長年の口約束で全部を見てもらっている、という状態なら、相手は管理業者としての義務を負っている可能性があります。

都合の悪いことも書いておきます
- 一部委託は、費用の面では有利です。 全部委託より安く、困っている部分だけ外に出せます。範囲ごとの選び方は自主管理から管理委託に切り替えるタイミングで扱っています
- 法律の後ろ盾が外れるぶん、契約書を自分で厚くする手間が増えます。 報告の頻度、記録の保存、解約の条件を自分で書くことになります
- 複数の相手に分けると、責任の境目が生まれます。 清掃はA社、修繕はB社、集金はC社という形にすると、水漏れのような「誰の担当か決まっていない事故」で連絡が止まります
- 安いには理由があります。 一次受付だけを月数百円で受けている会社は、その金額でできる範囲しか動きません
今日できること
- いま誰に何を頼んでいるかを書き出す。 そのうえで、それぞれを「維持保全」「金銭の管理」「どちらでもない」に振り分ける
- 両方に○が付く相手がいるか確認する。 付くなら、その相手には第13条・第14条・第20条の書類を求められます。手元に無ければ請求する
- 片方だけの相手には、契約書に自分で書き足す。 報告の頻度と項目、記録をどれだけ残すか、解約の予告期間の3つが最低限です
- 相手が登録業者かどうかを確認する。 200戸未満なら登録は不要なので、登録していないこと自体は問題ではありません。知らずに「登録業者だと思っていた」状態を避けます
自主管理でどこまでできるかは自主管理でできること・できないことと自主管理の限界を、戸数と時間で見る、切り替えの段取りは自主管理から委託に切り替えるときの手順、管理料に何が含まれるのかは管理手数料に含まれるもの・含まれないもの、家賃の入り方は家賃はどこに入るのかをご覧ください。
まとめ
賃貸住宅管理業法第2条第2項は、管理業務を「維持保全」と「維持保全と併せて行う金銭の管理」の2つで定めています。集金だけ、清掃だけ、点検だけ、苦情の一次受付だけ——どれも、国土交通省の解釈・運用の考え方では賃貸住宅管理業に該当しません。
該当しなければ、第13条の説明も、第14条の書面も、第18条の帳簿も、第20条の定期報告も付いてきません。一部委託で安くなった分は、契約書を書く手間として大家さんの側に戻ってきます。 どちらを選ぶかではなく、どちらを選んだのかを分かって選ぶことが先です。
※この記事は2026年8月29日時点の条文(e-Gov法令検索)および国土交通省「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」(令和5年3月31日施行版)に基づく一般的な整理です。個別の契約が管理業務に当たるかどうかの判断は、国土交通省または都道府県の窓口、弁護士にご確認ください。
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