自主管理の限界を、戸数と時間で見る
結論からお伝えすると、自主管理の限界は戸数だけでは決まりません。決まるのは戸数 × 物件までの距離 × 月に使える時間の掛け算です。5戸でも片道2時間で月に2時間しか取れなければ回りませんし、15戸でも徒歩10分で月20時間取れるなら回ります。この記事では、その掛け算を表で判定できる形にしています。
ご存じの方も多いと思いますが、賃貸管理の作業量は入居中の部屋からはほとんど発生しません。発生するのは退去したとき、設備が壊れたとき、滞納が起きたときの3つだけです。つまり作業量は戸数に比例するのではなく、出来事の件数に比例します。ここを取り違えると、限界の見積もりを毎回外します。
先に、よくある失敗から
限界を見誤ったときに起きているのは、たいてい次のような状況です。
- 10戸まで問題なく回っていたのに、同じ月に退去2件と給湯器の故障1件が重なって止まった
- 本業の決算期と3月の退去が毎年ぶつかり、募集開始が2週間ずつ遅れていた
- 2棟目を片道1時間半の場所に買い、1棟目の巡回が半年止まった
- 「まだ大丈夫」と判断した根拠が戸数だけで、退去件数を数えていなかった
- 入院で2週間動けなくなり、代わりに動ける人が誰もいなかった
共通しているのは、限界がじわじわ来るのではなく、ある1か月に突然来ている点です。平均で考えていると必ず外れます。
1年でかかる時間を、実際に数えてみる
作業ごとの所要時間をならしてみると、次のような水準になります。移動時間は片道30分の想定です。
| 作業 | 1回あたり | 頻度の目安 |
|---|---|---|
| 入金確認・記帳 | 30分 | 月2回 |
| 巡回・共用部の確認 | 1.5時間 | 月1回 |
| 入居者からの問い合わせ対応 | 30分 | 10戸あたり月1〜2件 |
| 退去1件の一連(立会いから募集開始まで) | 12〜20時間 | 年間で全戸の2〜3割 |
| 設備の故障対応 | 3〜5時間 | 10戸あたり年3〜5件 |
| 更新手続き | 1時間 | 1戸につき2年に1回 |
| 確定申告の資料整理 | 10〜20時間 | 年1回 |
10戸で計算すると、平常月が月6〜8時間、退去が出た月は20時間を超えます。年間では150時間前後です。片道1時間半の物件なら移動だけで年に40時間ほど上乗せになります。20戸だと平常月が12〜15時間、年間で280時間ほど。週に5〜6時間を確保できるかどうか、という数字です。
戸数 × 距離 × 使える時間の判定表
縦に戸数、横に「距離と月に使える時間の組み合わせ」を置いています。ご自身の条件が交わるところをご覧ください。
| 戸数 | 片道30分以内/月20時間 | 片道1時間/月10時間 | 片道1時間半超/月5時間 |
|---|---|---|---|
| 1〜4戸 | 余裕あり。自主管理で問題ない | 回る。緊急時の連絡先だけ決めておく | 回るが、一次受付は外に出したい |
| 5〜9戸 | 回る。退去が重なる月だけ注意 | ぎりぎり回る。退去2件が重なると崩れる | 厳しい。募集と立会いは部分委託を検討 |
| 10〜19戸 | 回る。ただし年150時間前後を確保できる前提 | 厳しい。部分委託か、一括委託の検討時期 | 回らない。委託を前提に組み直す段階 |
| 20戸以上 | 可能だが本業との両立は要検討 | 回らない | 回らない |
「回らない」に当たった場合でも、いきなり全部を委託する必要はありません。募集だけ、一次受付だけ、立会いだけ、という部分委託で1〜2年しのげることもよくあります。距離が問題になっているケースの組み立て方は遠方の物件をどう管理するかにまとめてあります。
限界のサインは、どこに出るのか?
戸数や時間の計算より先に、行動のほうに兆候が出ます。一般的には「戸数が増えたら委託」と言われますが、限界のサインは戸数ではなく、退去の連絡を受けたときの気持ちに出ます。「また来たか」と最初に思ったなら、そこがサインです。空室の1か月は家賃7万円の部屋で7万円の損失ですが、動く気力が落ちているとその1か月が2か月になります。
ほかに現れやすいサインは、入金確認が月1回に減っている、巡回が3か月空いている、見積を1社しか取らなくなっている、退去後の募集開始まで2週間以上かかるようになった、の4つです。2つ以上当てはまるなら、判定表の結果より実態が先に進んでいます。切り替えの時期そのものについては自主管理から管理委託に切り替えるタイミングをご覧ください。
まとめ
限界は戸数では測れません。戸数と距離と使える時間を掛け合わせ、そこに「退去と修繕が同じ月に重なったとき」を足して考えます。判定表で「厳しい」「回らない」に入ったなら、まず1業務だけ外に出してみる。それで足りなければ全体を任せる。この二段構えで十分です。
委託先を探す段になったら、会社の規模ではなく担当者を見てください。「あなたは何戸を担当されていますか」「5万円の修繕はご自身の判断で発注できますか」「経営者の方は、自分でも賃貸経営をされていますか」。担当戸数が分かれば自分の物件に割かれる時間が読めますし、3つ目の答えからは、その担当者に渡されている判断基準が誰の目線で作られているかが見えます。
ここに挙げた時間はならした目安です。物件の築年数や設備の状態で大きく変わりますので、実績のある方はご自身の記録で置き換えてください。
さいたま市周辺で、いまの体制が何年もつか数えてみたいという方は、ご相談ください。委託を決めていない段階でもかまいません。
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