自主管理から管理委託に切り替えるタイミング

結論からお伝えすると、自主管理から管理委託に切り替える判断は、戸数でも築年数でもなく、「自分が動けない時間帯・場所で、何かが起きたときに困るかどうか」で決まります。具体的には、①深夜と休日の一次対応、②滞納が3か月を超えたときの手続き、③退去から募集までの初動、この3つのどれかで実際に詰まったなら、そこが切り替えどきです。

釈迦に説法かもしれませんが、自主管理は決して劣った方法ではありません。手数料が0円で、入居者と直接やりとりができ、判断も早い。5戸から10戸くらいまでなら、自主管理のほうが利回りも満足度も高いという方は現実にたくさんいらっしゃいます。

自主管理でかかっている本当のコスト

手数料は0円ですが、時間はかかっています。まずそこを金額に置き換えてみます。

業務10戸のときの目安詰まりやすい点
入金確認・消込月1〜2時間通帳の記帳と名義の照合
滞納の督促発生時に月1〜3時間連絡が取れないときの次の一手
クレーム・設備不具合の一次対応月1〜3件時間帯を選べない
退去立会いと精算1件あたり2〜4時間負担区分の説明
募集と客付け業者との調整空室1件あたり数時間複数社への同時依頼
更新事務1件あたり1時間前後書類の作成と回収

合計するとおおむね月5時間から10時間です。家賃収入が月50万円の物件で管理委託の手数料5%なら2万5千円。時間に換算すると、時給2,500円から5,000円の作業を自分でしている計算になります。この数字をどう見るかは人によって違います。本業の時給と比べて安いなら自主管理、高いなら委託。それだけの話でもあります。

先に、よくある失敗から

自主管理が行き詰まるとき、たいていは戸数が増えたからではありません。次のような形で起きます。

  • 出張中の深夜に給水管が破裂し、階下への漏水になった。連絡がついたのは翌朝で、被害が広がった。修繕費と賠償の交渉に2か月かかった
  • 滞納が3か月分たまってから相談に来られた。保証会社に入っていなかったため、回収の手段が限られていた
  • 入院で3週間動けなくなり、その間の退去1件・入居申込1件がすべて止まった
  • 入居者と直接のやりとりが長く続いたことで関係が近くなりすぎ、家賃の値下げ要求や設備更新の要望を断りにくくなった
  • 相続で物件が増え、遠方の1棟だけ現地を年1回しか見に行けなくなった。共用部の劣化に気づくのが遅れた

共通しているのは、平常時ではなく「自分が動けなかったとき」に問題が起きていることです。自主管理の限界は、能力ではなく可用性の限界です。

戸数が増えたら委託すべきなのか?

よく「20戸を超えたら自主管理は無理」と言われます。ただ、現場で見ていると、限界が来るのは戸数が増えたときではなく、物件が離れた場所に増えたときです。同じ20戸でも、1棟にまとまっていて自宅から15分なら回ります。5か所に散らばって片道1時間なら、10戸でも回りません。

判断の目安として、次のどれかに当てはまるかを見てください。

  • 物件まで片道30分を超える場所がある
  • 平日の日中に電話を取れない仕事をしている
  • 1年以内に、対応が半日以上遅れた事案が1件でもあった
  • 保証会社に加入していない住戸が全体の3割以上ある
  • 今後1年以内に、相続や購入で物件が増える見込みがある

2つ以上当てはまるなら、検討を始めてよい段階だと思います。当てはまらないなら、急ぐ必要はありません。

全部を任せる必要はない

切り替えというと「今日から全部お任せ」を想像しがちですが、実務では部分委託もよく使われます。困っている部分だけを外に出す方法です。

任せる範囲向いている状況
集金代行入金管理・督促・送金滞納対応だけが負担
緊急対応のみ夜間休日の一次受付日中は自分で動ける
募集のみ(媒介)客付け・契約手続き空室が出たときだけ困る
一般管理委託上記をまとめて戸数が増えた、遠方になった

費用は範囲によって変わります。緊急対応だけなら1戸あたり月数百円台の設定もあり、10戸で月2千円から3千円程度に収まることもあります。全部を委託する前に、まずここだけ切り出すという選び方は現実的です。

委託先を選ぶときに聞くこと

自主管理から移る場合、比較対象を持っていないぶん、料率の話に流れやすくなります。聞くべきは料率よりも、担当者1人あたりの管理戸数、夜間対応が自社か外部委託か、直近1年の平均空室期間の3つです。料率の意味は管理委託契約の解約予告は何か月前?とあわせて読むと分かりやすくなります。契約前に解約条件まで確認しておくのが、後で効いてきます。

空室が理由で委託を考えている場合は、先に募集条件を見直すほうが早いこともあります。手順は空室が3か月埋まらないときに見直す6つのポイントにまとめてあります。

なお、委託開始にあたっての費用の経理処理や、それまで経費計上していた項目の扱いは個別事情によります。税務の判断は税理士にご確認ください。

まとめ

切り替えどきは戸数では測れません。動けない時間帯に何かが起きて実際に困ったかどうか、それが一番正直な指標です。困っていないなら、自主管理を続けて問題ありません。困った経験が一度でもあるなら、全部でなくてもいいので、その部分だけを外に出すところから考えてみてください。

さいたま市周辺で自主管理を続けるか迷っている方は、ご相談ください。全部を委託する前提でなくてもかまいません。

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