管理会社を変えたあとの3か月で見る5か所|旧管理会社には報告義務が1回残っています
切替から二か月が経った大家さんから、こんな相談を受けることがあります。新しい管理会社からの送金は毎月届いている。ただ、切替の前の月に一件だけ家賃が入っていなかったはずなのに、その滞納が新旧どちらの明細にも出てこない。前の会社の担当者は、もう電話に出ない。切替の日を境に、それまでの二年分の記録がまるごと消えたように見える瞬間です。
結論からお伝えすると、旧管理会社の義務は、契約が終わった日では切れません。賃貸住宅管理業法の施行規則は「契約期間の満了後」にも報告書を出すことを求めており、国の標準契約書には滞納状況を報告する条項が立っています。最初の三か月にやることは、新しい会社を評価することではなく、前の会社から出てくるべきものを受け取り切ることです。

旧管理会社の報告義務は、契約が終わった日で切れません
賃貸住宅管理業法第20条は「賃貸住宅管理業者は、管理業務の実施状況その他の国土交通省令で定める事項について、国土交通省令で定めるところにより、定期的に、委託者に報告しなければならない」と定めています。そして中身を決めているのが施行規則第40条です。
賃貸住宅管理業者は、法第二十条の規定により委託者への報告を行うときは、管理受託契約を締結した日から一年を超えない期間ごとに、及び管理受託契約の期間の満了後遅滞なく、当該期間における管理受託契約に係る管理業務の状況について次に掲げる事項……を記載した管理業務報告書を作成し、これを委託者に交付して説明しなければならない。
読んでいただきたいのは、報告の時期が二つ書かれているところです。「契約を締結した日から一年を超えない期間ごと」に加えて、「管理受託契約の期間の満了後遅滞なく」。つまり契約が終わったあとに、もう一回出す義務があります。そして、その報告書に書くべき事項も同じ条文が三つ挙げています。
- 報告の対象となる期間
- 管理業務の実施状況
- 管理業務の対象となる賃貸住宅の入居者からの苦情の発生状況及び対応状況
三つめに注目してください。引き継ぎでいちばん失われやすいと言われるのが、入居者ごとの対応履歴です。ところがその対応状況は、条文が定める報告書の記載事項そのものです。口頭で「教えてください」と頼むものではなく、書面で交付して説明する対象として並んでいます。切替後に届いていないなら、それは請求してよいものです。
契約書には「滞納状況を報告する」という条項が立っています
もう一つ、契約書側にも根拠があります。国土交通省が公表している賃貸住宅標準管理受託契約書の第22条は、契約終了時の処理をこう定めています。
本契約が終了したときは、乙は、甲に対し、本物件に関する書類及びこの契約に関して乙が保管する金員を引き渡すとともに、家賃等の滞納状況を報告しなければならない。
乙が管理会社、甲が大家さんです。引き渡すものが書類と金員の二つ、それとは別に滞納状況の報告が並んでいます。冒頭の「切替前の滞納が新旧どちらの明細にも出てこない」は、この条項が実行されていない状態です。
ただし、これは国が示している標準の様式であって、手元の契約書が同じ文言になっているとは限りません。まず自分の管理委託契約書を開いて、終了時の処理の条項を読んでください。読むべき箇所は管理委託契約書はどこを読むべきかにまとめています。
入居者への通知は、大家も出す側なのですか?
はい。ここは取り違えられやすいところです。同じ標準管理受託契約書の第23条2項は、こうなっています。
本契約が終了したときは、甲及び乙は、入居者に対し、遅滞なく、乙による本物件の管理業務が終了したことを通知しなければならない。
主語が「甲及び乙」です。管理会社が出すものだと思って任せきりにしていると、通知が届いていない部屋が残ります。届いていない部屋では、入居者が古い連絡先に電話をかけ続けます。誰の名前でいつ出すかについては管理会社を変えると入居者に迷惑がかかる?実際に起きることで扱っています。
新しい会社の報告は、いつから数え始めるのですか?
施行規則第40条の起算点は「管理受託契約を締結した日」です。前の会社との契約日ではありません。ですから、報告のサイクルは切替のタイミングでずれます。前の会社が三月に報告書を出していたとしても、新しい会社の一回目は新しい契約日から一年以内であればよいことになります。
条文が求めているのは「一年を超えない期間ごと」で、毎月ではありません。毎月の報告が欲しいなら、契約時に頻度を書き込む必要があります。この点は管理会社から月次報告が来ない。これは普通なのかと管理会社の報告書は何を見ればいいかで詳しく書いています。
最初の三か月で見る五か所
順番に意味があります。前の会社に連絡が取れるうちに済ませるものから並べました。
- 満了後の報告書が届いたか。届いていなければ書面で求めます。苦情の発生状況と対応状況が入っているかまで見ます
- 滞納の残高が新旧で一致しているか。誰の分がいくら残っているか、どちらが追うのかを文字にしておきます
- 敷金の預り残高が引き継がれているか。預かっているのは誰なのかは敷金は誰が預かっているのかで整理しています
- 入居者への通知が全戸に届いたか。掲示だけで済ませていないか、郵送の控えが残っているかを確認します
- 新しい契約の報告の起算日と頻度。一回目がいつ来るのかを、この時点で決めておきます
あわせて、送金日が前の会社と変わっているかも見てください。締め日と送金日の組み合わせで着金日は動きます(家賃はいつ大家の口座に入るのか)。

都合の悪いことも書いておきます
ここまでの根拠には、効かない相手があります。
- 登録していない会社には、法第20条の報告義務が及びません。登録の義務は管理戸数二百戸が線で、それ未満で任意登録もしていない会社は名宛人になりません(大家がもらう重要事項説明書は2種類ある)
- 維持保全を伴わない「集金だけ」の受託は、そもそも賃貸住宅管理業に当たりません。この場合も同じく及びません
- 標準契約書は雛形で、法律ではありません。手元の契約書に終了時の条項がなければ、根拠は法第20条と施行規則第40条の側だけになります
- もめた場合、条文を示しても書類がそろわないことがあります。金額が大きいときや相手が応じないときは、弁護士か、国土交通省または都道府県の窓口に相談してください
だからこそ、集めるのは解約を伝える前のほうが確実です。順番の話は引き継ぎで失われやすい情報と管理会社を変えたいと思ったときに、最初に確認する3つのことにあります。
まとめ
切替後の三か月は、新しい会社の腕を見る期間ではありません。前の会社から出てくるべきものを受け取り切る期間です。
根拠は二本あります。賃貸住宅管理業法第20条と施行規則第40条が「契約期間の満了後遅滞なく」の報告を求め、その記載事項に入居者の苦情の発生状況と対応状況が入っていること。そして国の標準管理受託契約書第22条が、書類と金員の引渡しに加えて滞納状況の報告を条項にしていること。
今日やることを一つだけ選ぶなら、手元の管理委託契約書を開いて、終了時の処理の条項があるかどうかを確認してください。まだ切替をしていない方は、その一行があるかどうかを、次の契約で見る場所に加えておくと後で効きます。
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