大家がもらう重要事項説明書は2種類ある|入居者に渡る35条の紙は大家のものではない

管理会社との打ち合わせの席で、分厚いホチキス留めの束を出されて「重要事項の説明です」と言われたことはないでしょうか。契約の日に初めて見せられて、読み終わる前に説明が終わる。あの束が何の法律に基づいた書類なのか、はっきり説明できる大家さんは多くありません。

結論からお伝えすると、大家さんが「説明を受ける側」として法律で決まっている重要事項説明書は2種類あります。管理を頼むときの「管理受託契約重要事項説明」(賃貸住宅管理業法13条)と、サブリースの「特定賃貸借契約重要事項説明」(同30条)です。そして、入居者に渡る宅地建物取引業法35条の重要事項説明書は、大家さんに渡すための書類ではありません。この3つを混ぜたまま「重説」と呼んでいると、本来もらえるはずの説明を受け取り損ねます。

大家に関わる重要事項説明書が3種類あることを整理した図。入居者に渡る宅建業法35条、管理を頼むときの賃貸住宅管理業法13条、サブリースの30条。

入居者がもらう「重要事項説明書」は、大家の書類ではありません

宅地建物取引業法35条1項は、説明の相手をこう限定しています。

「宅地建物取引業者は、(中略)その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(中略)を交付して説明をさせなければならない」(e-Gov法令検索・現行条文)

「取得し、又は借りようとしている」側、つまり買う人と借りる人に説明する規定です。貸す側である大家さんは、この条文の名宛人ではありません。宅建士が宅地建物取引士証を提示して説明する義務(35条4項)も、書面に記名する義務(35条5項)も、借主に向けたものです。

だから、大家さんの手元に35条の重要事項説明書の写しが回ってこなくても、それ自体は違法ではありません。もらいたければ「写しをください」と言う必要があります。言えばたいてい出てきます。

もうひとつ、見落とされやすい話があります。大家さんが仲介を通さずに自分で入居者と契約する場合、35条の重要事項説明はそもそも発生しません。宅建業法2条2号の「宅地建物取引業」の定義は「宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの」で、自分の物件を自分で貸す行為(自ら貸借)は入っていません。自主管理で直接契約すると、重要事項説明という工程が制度上どこにも無い状態で契約が成立します。

大家が説明を受けるのは、管理を頼むときです

賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律13条1項は、こう定めています。

「賃貸住宅管理業者は、管理受託契約を締結しようとするときは、管理業務を委託しようとする賃貸住宅の賃貸人(中略)に対し、当該管理受託契約を締結するまでに、管理受託契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるものについて、書面を交付して説明しなければならない

ここで初めて、大家さんが説明を受ける側として名指しされます。何を説明するかは同法施行規則31条に11項目が並んでいて、そのまま読むと管理会社選びのチェックリストになります。

  • 管理受託契約を締結する賃貸住宅管理業者の商号、名称又は氏名並びに登録年月日及び登録番号
  • 管理業務の対象となる賃貸住宅
  • 管理業務の内容及び実施方法
  • 報酬の額並びにその支払の時期及び方法
  • 前号に掲げる報酬に含まれていない管理業務に関する費用であって、賃貸住宅管理業者が通常必要とするもの
  • 管理業務の一部の再委託に関する事項
  • 責任及び免責に関する事項
  • 法20条の規定による委託者への報告に関する事項
  • 契約期間に関する事項
  • 賃貸住宅の入居者に対する管理業務の内容・実施方法の周知に関する事項
  • 管理受託契約の更新及び解除に関する事項

実務でいちばん効くのは5番目です。「報酬に含まれていないが、通常必要とする費用」——毎月の管理料に入っていないのに、あとから請求されるものを、契約前に書き出すことが法律で決まっています。更新事務手数料、契約書の作成料、鍵の受け渡し費用、退去立会いの費用。見積書には「管理料5%」としか書いていなくても、この欄には書いてあります。

6番目の再委託も同じです。清掃や巡回を別の会社に出しているのかどうかは、この欄で分かります。「担当者が現地を見ていない」という不満の原因が、ここに書いてあることがあります。

管理委託契約書のどこを読むかについては、管理委託契約書はどこを読むべきか|大家が必ず確認する5つの条項で条項ごとに整理しています。重要事項説明書は、その契約書に入る前の段階の書類です。

重要事項説明が来ない管理会社は違法ですか?

そうとは限りません。ここが誤解されやすいところです。

13条の義務を負うのは「賃貸住宅管理業者」です。そして同法2条3項は、賃貸住宅管理業者を「次条第一項の登録を受けて賃貸住宅管理業を営む者」と定義しています。登録を受けていない会社は、この条文の名宛人になりません。

では登録は全社に義務があるかというと、そうではありません。3条1項ただし書は「その事業の規模が、当該事業に係る賃貸住宅の戸数その他の事項を勘案して国土交通省令で定める規模未満であるときは、この限りでない」とし、施行規則3条がその規模を「賃貸住宅管理業に係る賃貸住宅の戸数が二百戸」と定めています。

つまり、管理戸数200戸未満で任意登録もしていない会社には、13条の重要事項説明の義務がありません。地元で長くやっている小さな管理会社に頼むと、重説が出てこないことがあります。それは手抜きではなく、法律の対象外だからです。

逆に言えば、登録番号があるかどうかは、説明を受けられるかどうかの分かれ目になります。規則31条の1号に「登録年月日及び登録番号」が入っているのは、そのためです。国土交通省は2026年6月5日に賃貸住宅管理業者への全国立入検査の結果を公表していますが、その読み方は国が管理会社168社を検査し118社に是正指導|大家が自分の書類で確認できる5か所にまとめています。

もうひとつ、大家さん側の属性で説明が省かれる場合があります。施行規則30条は、説明を要しない相手として賃貸住宅管理業者・特定転貸事業者・宅地建物取引業者・特定目的会社・組合などを挙げています。大家さん自身が宅建業の免許を持っていると、重説はもらえません。

管理受託契約の重要事項説明とサブリースの重要事項説明を左右で比べた図。義務者・登録の要否・説明事項の数と中身の違い。

サブリースは、登録に関係なく全員に義務があります

同じ法律の30条1項は、サブリース(特定賃貸借契約)についてこう定めています。

特定転貸事業者は、特定賃貸借契約を締結しようとするときは、特定賃貸借契約の相手方となろうとする者(中略)に対し、当該特定賃貸借契約を締結するまでに、(中略)書面を交付して説明しなければならない」

ここが13条と決定的に違います。13条の名宛人は「登録を受けた賃貸住宅管理業者」ですが、30条の名宛人は「特定転貸事業者」で、登録の有無を問いません。一括借上げを持ちかけてくる会社は、規模にかかわらず全社が説明義務を負っています。

説明事項は施行規則45条の14項目です。管理受託の11項目より多く、中身も重いものが並びます。

  • 特定賃貸借契約の相手方に支払う家賃の額、支払期日及び支払方法等の賃貸の条件並びにその変更に関する事項
  • 維持保全に要する費用の分担に関する事項
  • 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
  • 契約が終了した場合における特定転貸事業者の権利義務の承継に関する事項
  • 借地借家法その他特定賃貸借契約に係る法令に関する事項の概要

3号の「その変更に関する事項」と、14号の「借地借家法(中略)に関する事項の概要」。この2つが、サブリースで後からもめる論点をそのまま書かせている欄です。家賃が下がる可能性があること、そして借地借家法が適用されるために大家さん側からの解約には制約があること。説明されなかったのではなく、説明された束の中に埋もれていた——というのが実際に起きていることです。

サブリースからの切り替えを考えている場合は、サブリース(一括借上げ)から通常管理に戻せるか|解約の条件と進め方サブリース新法で変わったことを先に読んでおくと、重説のどこを見ればよいかが決まります。

大家が自分で説明しなければならない書類も、1つだけあります

ここまでは「大家が説明を受ける」話でしたが、逆向きが1つあります。定期借家です。

借地借家法38条3項は、義務者をこう書いています。

「第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない」

宅建業者でも管理会社でもなく、賃貸人=大家さんが名宛人です。そして5項が「建物の賃貸人が第三項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする」と定めています。

実務では仲介会社や管理会社が代わりに交付・説明しますが、効力を失うのは大家さんの契約です。普通借家に戻ってしまえば、期間満了では終われません。定期借家をどの場面で使うかは、定期借家は築古アパートのどこで使えるか|オーナーが外せない手続きと向く場面で手続きの順番を含めて整理しています。

都合の悪いことも書いておきます

13条にも30条にも、「契約の何日前までに」という定めはありません。条文はどちらも「締結するまでに」としか書いていません。契約当日に説明して、その場で押印してもらっても、条文の文言に反しているわけではありません。

読む時間は、大家さんが自分で要求するしかありません。「持ち帰って読みます」と言えば済む話ですが、言わなければ当日の30分で終わります。

それから、重要事項説明書があっても中身が良くなるわけではありません。書いてあるとおりに費用が請求され、書いてあるとおりに免責されます。説明を受けたという事実は、内容に納得した証拠として使われる側面もあります。読まずにサインをするなら、無いほうがましだという言い方すらできます。

今日やることを1つだけ選ぶなら

いま契約している管理会社の重要事項説明書を探して、「報酬に含まれていない費用」の欄だけ読んでください。施行規則31条5号の欄です。ファイルに綴じたまま一度も開いていない、という物件がほとんどのはずです。

見つからなければ、管理会社に「管理受託契約の重要事項説明書の写しをください」と伝えれば出てきます。出てこない場合は、その会社が登録を受けていない可能性があります。登録番号を聞くところから始めてください。

なお、この記事は2026年8月17日時点の条文と国土交通省令に基づく一般的な整理です。個別の契約が有効かどうか、説明義務違反にあたるかどうかの判断は、弁護士や司法書士などの専門家に確認してください。

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