家賃はいつ大家の口座に入るのか|支払期日と送金日は別の日です

毎月10日、通帳に1行だけ入金がある。ところが今月は10日に入っておらず、12日の朝に入っていた。管理会社に聞くと「10日が土曜だったので翌営業日になりました」という答えが返ってくる。ここで納得して電話を切ってしまうと、次に3日遅れたときも、同じ説明で終わります。

結論からお伝えすると、入居者が家賃を払う日(支払期日)と、そのお金が大家さんの口座に入る日(送金日)は、別々に決まっています。決めているのも別の契約です。支払期日は入居者との賃貸借契約、送金日は管理会社との管理受託契約。そして、送金日が動く場所は3か所しかありません。

送金日が動く3か所。入居者の支払期日、管理会社の締め日、管理受託契約に書かれた送金日。民法614条の原則は毎月末の後払いで、前払いは契約で決めたもの。

民法の原則は「後払い」です

先に土台の話をします。民法第614条は、賃料の支払時期をこう定めています。「賃料は、動産、建物及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない」。

建物の家賃は、条文の原則ではその月が終わってから払うものです。当月分を前月末までに払う「前払い」は、契約でそう決めているからそうなっているだけで、法律がそう定めているわけではありません。

賃貸借そのものも、第601条で「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと(中略)を約することによって、その効力を生ずる」とされる諾成契約です。紙がなくても成立します(この点は入居申込から契約まで何日かかるのかで扱っています)。

ここを押さえておくと、滞納の話をするときの立ち位置が変わります。「前払いが常識」ではなく「うちの契約は前払いにしてある」。自分の契約書を開いて、支払期日が何日になっているかを先に確認してください。

送金日は、契約書の空欄で決まっています

国土交通省が公表している「賃貸住宅標準管理受託契約書」の第7条は、家賃と敷金等の引渡しについて定めています。2項がこうです。

「乙は、入居者から徴収した当月分の家賃等を、毎月、頭書に記載する振込先に、頭書に記載する期日までに振り込むことにより、甲に引き渡さなければならない」(甲=大家さん、乙=管理会社)

つまり送金の期日は、条文に日付が書かれているのではなく、契約書の頭書に書き込む欄になっています。ここが空欄のまま契約している物件が、実際にあります。空欄なら「毎月10日まで」という約束は存在せず、慣行で10日に入っているだけ、という状態です。遅れたときに何を根拠に言えるかが変わります。

同じ第7条で、もう2つ確認できることがあります。

  • 3項/管理会社は「当月分の管理報酬で家賃等から差し引くことについてあらかじめ甲の承諾を得ているもの」を差し引くことができる。承諾を得ていない費目を差し引く形は、標準契約書の想定に入っていません
  • 1項/入居者から代理受領した敷金等は、振込先に振り込むことにより「速やかに」引き渡さなければならない。敷金は毎月の送金日を待つものとして書かれていません

送金明細から差し引かれている項目を1つずつ確認するときは、この3項が起点になります。管理委託契約書のどこを読むかは管理委託契約書はどこを読むべきかにまとめました。

家賃はどこにプールされているのか

入居者が払ってから大家さんに届くまでの間、そのお金は管理会社の口座にあります。ここには法律の定めがあります。

賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)第16条は「賃貸住宅管理業者は、管理受託契約に基づく管理業務において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭を、整然と管理する方法として国土交通省令で定める方法により、自己の固有財産及び他の管理受託契約に基づく管理業務において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭と分別して管理しなければならない」と定めています。

その「国土交通省令で定める方法」が施行規則第36条です。読むと、求められているのは2つだけです。

  1. 家賃等を管理するための口座を、自己の固有財産を管理するための口座と明確に区分すること
  2. その金銭がいずれの管理受託契約に基づくものであるかが、自己の帳簿により直ちに判別できる状態で管理すること

ここで、よくある思い込みが1つ外れます。大家さんごと、物件ごとに別の口座を用意する義務はありません。他の大家さんの家賃と同じ口座に入っていること自体は、違反ではないのです。条文が求めているのは「会社のお金と混ぜないこと」と「帳簿でどの契約のお金かが直ちに分かること」の2点です。

標準管理受託契約書の第10条も同じ構造で、「入居者から受領した家賃、敷金、共益費その他の金銭について、(中略)甲に引き渡すまで、自己の固有財産及び他の甲の財産と分別して管理しなければならない」としています。国交省が同じ資料に載せている記入例は、こう書かれています。「乙の保有財産に係る口座とは別個の家賃等収納・保管専用口座を設け受領するとともに、帳簿や会計ソフト上でもオーナー毎に固有財産と家賃等を分別等」。

口座は1つでよく、分けるのは帳簿の側。管理会社に確認するなら「専用口座ですか」ではなく「帳簿でうちの物件分が直ちに判別できる状態になっていますか」と聞くほうが、条文に沿った質問になります。管理会社が倒産した場合にこの分別管理がどう効くかは管理会社が倒産したらどうなるかで扱っています。

分別管理で求められていること。会社のお金と口座を分ける、帳簿で直ちに判別できる、引き渡すまで分別して管理する。求められていないのは大家ごとの口座分けと物件ごとの専用口座、そして業法の帳簿に入金明細を載せること。

集金だけを頼んでいると、この義務が及ばないことがあります

都合の悪い話も書きます。上の第16条が効くのは「賃貸住宅管理業者」に対してです。そして賃貸住宅管理業の定義が、思ったより狭いのです。

同法第2条2項は、管理業務を2号に分けています。1号が賃貸住宅の維持保全を行う業務。2号が「当該賃貸住宅に係る家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理を行う業務」で、ここにカッコ書きがついています。「(前号に掲げる業務と併せて行うものに限る。)」

読み替えると、維持保全を伴わない「集金だけ」の受託は、賃貸住宅管理業に当たりません。点検も清掃も修繕も自分(または別の会社)でやっていて、家賃の集金と送金だけを頼んでいる場合、その会社はこの法律上の賃貸住宅管理業者ではないので、第16条の分別管理義務も、次に書く第18条の帳簿の義務も、そのままでは及びません。

「登録している会社だから安心」とは別の論点です。登録そのものにも管理戸数による線があり、そこは大家がもらう重要事項説明書は2種類あるで整理しています。集金だけを頼む形にしている方は、分別管理を契約書の条項として自分で入れておくほうが確実です。標準管理受託契約書の第10条は、まさにその条項です。

業法の帳簿には、入金の明細は載っているのか?

載っていません。ここも取り違えやすいところです。

賃貸住宅管理業法第18条は、賃貸住宅管理業者に営業所または事務所ごとの帳簿の備付けを義務づけています。その記載事項を定めた施行規則第38条1項を開くと、6つしかありません。

  1. 管理受託契約を締結した委託者の商号、名称または氏名
  2. 管理受託契約を締結した年月日
  3. 契約の対象となる賃貸住宅
  4. 受託した管理業務の内容
  5. 報酬の額
  6. 管理受託契約における特約その他参考となる事項

入出金の明細は入っていません。この帳簿は「どんな契約をいくらで受けたか」の台帳で、お金の流れの記録ではないのです。事業年度の末日で閉鎖し、閉鎖後5年間保存することが3項に定められています。

ではお金の流れはどこで見るのか。毎月の送金明細と、定期報告です。標準管理受託契約書の記入要領は、大家さんへの定期報告で想定される事項として4種類を挙げています。①家賃等の収受状況等、②維持保全の実施状況、③建物・設備の法定点検等の状況、④入居者等からのクレーム対応。1番目が家賃です。報告が来ない場合の伝え方は管理会社から月次報告が来ない。これは普通なのか、報告書の読み方は管理会社の報告書は何を見ればいいかにまとめています。

送金日が動くのは、この3か所だけです

ここまでを1本の流れに並べると、日数が動く場所は3つに絞られます。

  1. 入居者の支払期日/賃貸借契約で決まっている。前月末までの前払いか、当月末の後払いか。民法614条の原則は後払い
  2. 管理会社の締め日/どこまでの入金をその月の送金に含めるか。締め日の翌日に入った家賃は、翌月の送金に回る
  3. 送金日/管理受託契約の頭書に書き込まれた期日。金融機関の休業日に当たったときに前にずれるか後にずれるかは、契約書に書いていないことが多い

2番目が抜けていると、滞納しているのか締め日をまたいだだけなのかが判別できません。締め日を聞いていない大家さんは、次の電話で1回だけ聞いておいてください。これを知っているだけで、「入っていない」と「まだ来ていない」を自分で分けられるようになります。

そして、送金日が遅れること自体は事故ではありませんが、遅れた理由の説明があいまいなときは別の兆候です。判断の材料は管理会社が倒産したらどうなるかに並べています。

税金の計上は、入金日ではありません

最後に1つ、送金日と混ざりやすい話を添えておきます。所得税基本通達36-5(1)は、不動産所得の収入すべき時期を「契約又は慣習により支払日が定められているものについてはその支払日」と定めています。12月分の家賃が翌年1月10日に送金されてきても、契約上の支払日が12月なら、その家賃は12月の収入です。

通帳の入金日を12回数えて1年分にすると、年末年始でずれます。計上の考え方は青色申告にすると何が変わるか賃貸経営で経費にできるもの・できないものもあわせてご覧ください。個別の当てはめは税務署または税理士に確認してください。

まとめ

家賃が自分の口座に入る日は、次の3つの積み上げで決まります。入居者の支払期日、管理会社の締め日、管理受託契約に書かれた送金日。民法614条の原則は後払いで、前払いは契約でそう決めているだけです。

間に挟まっている期間のお金には、賃貸住宅管理業法16条と施行規則36条の分別管理義務がかかります。ただし求められているのは「会社のお金と口座を分けること」と「帳簿で直ちに判別できること」で、大家さんごとに口座を分ける義務ではありません。そして維持保全を伴わない集金だけの受託には、この義務がそのまま及びません。

手元の管理受託契約書を開いて、送金の期日と締め日が書き込まれているかを確認するところから始めてください。空欄なら、次の更新のときに埋めてもらう。それだけで、遅れたときの話し方が変わります。自分の物件がどの経路で入金されているかは家賃はどこに入るのか|入金口座の変更手続きで判別できます。

投稿者プロフィール

Follow me!

この記事の内容について、個別に相談したい方へ

さいたま市周辺で賃貸管理をお探しの方、いまの管理に迷いがある方のご相談をお受けしています。 まだ何も決めていない段階でもかまいません。

相談する(お問い合わせフォーム)