大家が自分で直してよい範囲はどこまでか|壁の中のコンセント交換は資格が要ります

空室の壁で、コンセントのプレートがひとつ、ゆるんで斜めになっていました。押し込んでも戻りません。ドライバー1本あれば外せます。ホームセンターに同じ形の器具が置いてあって、値段は数百円です。ここまでは、誰でも思いつくところです。

結論からお伝えすると、壁に埋め込まれているタイプ(埋込型)のコンセントは、資格がないと交換できません。プレートを外すところまでは問題ありませんが、中の電線をつなぎ直す作業には第二種電気工事士の免状が必要で、これは自分の建物であっても変わりません。ただし例外が1つあり、壁の表面に箱ごと出ている「露出型」の取換えだけは、条文が資格の対象から外しています。大家さんが自分で手を動かしてよい範囲は、法律のほうが先に決めています。境目があるのは、電気・水・石綿の3つです。

大家さんが自分では触らない線を5点で示した図。電気は埋込型のコンセントとスイッチの交換が第二種電気工事士の範囲、露出型の取換えだけは免許不要で新設は不可、水は単水栓とパッキンまで、築古の建物は改修でも有資格者の事前調査、建設業許可の金額は別の話。

壁の中(埋込型)のコンセント交換には、資格が要ります

電気工事士法は、第3条2項でこう定めています。

第一種電気工事士又は第二種電気工事士免状の交付を受けている者(以下「第二種電気工事士」という。)でなければ、一般用電気工作物等に係る電気工事の作業(一般用電気工作物等の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)に従事してはならない。

アパートの各室の配線は、この一般用電気工作物にあたります。カッコの中に注目してください。資格が要る作業から「経済産業省令で定めるもの」が除かれています。ここが後半で効いてきます。

一方で、第2条3項のただし書きが「政令で定める軽微な工事を除く」としており、その中身は電気工事士法施行令の第1条に6つ並んでいます。

  • 電圧600ボルト以下で使う接続器や開閉器に、コードまたはキャブタイヤケーブルを接続する工事
  • 電圧600ボルト以下で使う電気機器(配線器具を除く。)または蓄電池の端子に、電線をねじ止めする工事
  • 電圧600ボルト以下で使う電力量計、電流制限器、ヒューズを取り付け、または取り外す工事
  • 電鈴、インターホーン、火災感知器、豆電球などに使う小型変圧器(二次電圧が36ボルト以下のもの)の二次側の配線工事
  • 電線を支持する柱、腕木などの工作物を設置し、または変更する工事
  • 地中電線用の暗渠または管を設置し、または変更する工事

2番目の項目に、はっきりと「配線器具を除く」と書かれています。コンセント、スイッチ、シーリングの引掛金具は、この配線器具にあたります。つまり、この6項目の中に、コンセントとスイッチの交換は入っていません。「電球の交換ができるのだから、コンセントも同じだろう」という順番で考えると、ここで外れます。

罰則もあります。第14条は、第3条1項・2項・3項の規定に違反した者を「三月以下の拘禁刑又は三万円以下の罰金に処する」としています。資格は「作業をする人」にかかっているので、自分の持ち物かどうかは関係がありません。

「露出型コンセントの取換え」だけは、免許が要りません

ここは条文が2本あるので、順番に読む必要があります。先に挙げた施行令1条は「軽微な工事」ですが、施行規則のほうに「軽微な作業」という別の定めがあります。3条2項が除いていた「経済産業省令で定めるもの」が、これです。

電気工事士法施行規則2条2項1号は、資格の要らない「軽微な作業」を「次に掲げる作業以外の作業」と定め、そのイで同条1項1号の「イからヌまで及びヲ」に掲げる作業を挙げています。その中のホがこれです。

ホ 配線器具を造営材その他の物件に取り付け、若しくはこれを取り外し、又はこれに電線を接続する作業(露出型点滅器又は露出型コンセントを取り換える作業を除く。

カッコ書きが、露出型の取換えをホから外しています。ホから外れれば「次に掲げる作業以外の作業」の側に入りますから、露出型コンセントと露出型点滅器(スイッチ)の取換えは軽微な作業に当たり、電気工事士でなくてもできます。

これは当社の読み方ではありません。所管官庁である経済産業省が公表している資料「電気工事士等でなければ従事できない電気工事の作業」の5番が施行規則2条1項1号ホそのままで、同じカッコ書きが入っています。そして同じ資料は、資格がなくてもできる作業を「上記、1.~12で定める作業以外の作業」と書いています。

築古アパートには露出配線・露出型コンセントが実在します。壁の表面に配線が這っていて、コンセントが箱ごと出ているタイプです。この記事を読んでいる方の物件が、まさに該当することがあります。

ただし、この例外は範囲がかなり狭いです

「露出型なら大丈夫」と読んで進めると、別の号にぶつかります。次の4点を必ず添えて理解してください。

  1. 「取り換える」だけです。新設・増設・移設は入りません。1個増やせば「電線を直接造営材に取り付ける作業」(1項1号ハ)や「電線相互を接続する作業」(同イ)に当たり、免許が必要になります
  2. 「露出型」だけです。壁の表面に箱ごと出ているタイプを指します。主流の埋込型(プレートを外して壁の中でつなぐタイプ)は第二種電気工事士が必要で、冒頭のゆるんだコンセントはこちら側です
  3. 既存の電線を器具の端子につなぎ直す範囲までです。電線を切って継ぐ(同イ)に踏み込めば、免許が必要です
  4. 免許が不要でも、安全の基準は変わりません。内線規程・電気設備技術基準への適合義務は残り、感電や発熱のリスクも減りません

逆に、資格が要らない作業もあります

施行令1条の6項目は、そのまま「やってよいこと」の一覧です。実務でよく出てくるのは4番目です。玄関のチャイムやインターホンは、小型変圧器で電圧を落とした二次側の配線であることが多く、その範囲なら資格は要りません。ただし電源側から新しく引くとなると話が変わります。同じ「モニターホンにする」でも工事の中身が3段階に分かれることは、賃貸のチャイムをモニターホンに変えるかで扱っています。

ブレーカーの中のヒューズや電力量計の取り付け・取り外しも、6項目に入っています。感覚とは逆に見えるかもしれませんが、条文はそう書かれています。

水は「単水栓の取替え」と「パッキン」までです

水道は、資格の話ではなく「工事をした業者が指定を受けているか」で線が引かれています。水道法第16条の2は、水道事業者(市町村の水道局など)が、給水区域内で給水装置工事を適正に施行できると認められる者を指定できるとし、第2項で「指定を受けた者が施行した工事に係るものであること」を給水の条件にできるとしています。

そして第3項です。指定給水装置工事事業者以外が施工した給水装置については、水道事業者は給水契約の申込みを拒み、またはその者に対する給水を停止することができると定められています。工事のやり直しではなく、水が止まる可能性の話です。

ただし書きで外れるのが「国土交通省令で定める給水装置の軽微な変更」で、水道法施行規則第13条がその中身を「単独水栓の取替え及び補修並びにこま、パッキン等給水装置の末端に設置される給水用具の部品の取替え(配管を伴わないものに限る。)」としています。

読み替えると、こうなります。

  • ハンドルが固くなったので、こまとパッキンを替える → 自分でできる
  • 洗濯機用の単水栓を、同じ単水栓に取り替える → 自分でできる
  • ツーバルブの水栓を、シングルレバーの混合水栓に替える → 単独水栓ではないので、範囲の外
  • 配管を触る、増設する → 範囲の外

ツーバルブからシングルレバーへの交換は、大家さんが自分でやりたくなる工事の代表です。判断の材料はツーバルブの蛇口をシングルレバーに交換すべきかにまとめていますが、施工そのものは指定事業者の範囲だと考えてください。

2006年8月までに着工した建物は、内装工事でも石綿の調査が入ります

石綿障害予防規則の第3条1項は、建築物の「解体又は改修(封じ込め又は囲い込みを含む。)」の作業を行うときは、あらかじめ石綿等の使用の有無を調査しなければならないと定めています。解体だけの話ではありません。改修も対象です。

調査の方法は第2項で「設計図書等の文書を確認する方法」と「目視により確認する方法」の両方。そして第4項が、その調査を「適切に当該調査を実施するために必要な知識を有する者として厚生労働大臣が定めるもの」に行わせなければならないとしています。建築物石綿含有建材調査者などの資格を持つ人でなければ、事前調査そのものができないという定めです。この部分は2023年10月1日から施行されています(令和2年厚生労働省令第134号の附則第1条3号)。

ここで築年数が効いてきます。第3項3号は、新築工事の着工日が平成18年(2006年)9月1日以降の建築物であれば、その着工日を設計図書等の文書で確認する方法によることができるとしています。第4項の有資格者要件は「前項各号に規定する場合を除き」なので、2006年9月以降の着工なら、着工日の確認で済みます。

逆に言えば、それより前に着工した建物は、クロスの張替えや設備の入れ替えでも、有資格者の事前調査が前提になります。さいたま市周辺で築20年を超えるアパートを持っている方は、ほぼこちら側です。

報告の義務もあります。第4条の2は、建築物の解体工事で工事に係る部分の床面積の合計が80平方メートル以上のもの、建築物の改修工事で請負代金の額が100万円以上のものについて、あらかじめ電子情報処理組織を使って所轄労働基準監督署長に報告しなければならないとしています。第4項で、同一の事業者が2以上の契約に分割して請け負う場合は1つの契約とみなすとも書かれているので、工事を分けて100万円を下回らせる形は通りません。調査の記録は3年間保存です(第3条7項)。

この義務は「事業者」、つまり工事を請け負う側にかかっています。大家さんが直接負う義務ではありません。ただし調査の手間と費用は見積りに乗ってきます。築古の内装工事で、見積書に石綿の調査費が1行も入っていないときは、その業者が対象外だと判断した理由を聞いてください。「うちは調査しないので安い」は、安い理由になりません。

自分でやれる作業と資格者の範囲を左右で比べた図。やれる側はこまとパッキンの交換、単独水栓の同型取替え、ヒューズや電力量計の脱着、インターホンの二次側、露出型コンセントの取換え。資格者側は埋込型コンセントとスイッチ交換、露出型でも新設・増設、混合水栓への交換、配管を伴う給水工事、築古の建物の事前調査。

「500万円未満なら許可は要らない」は、資格の話ではありません

工事を頼むときによく出てくる金額が500万円です。建設業法第3条1項のただし書きが「政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない」としており、建設業法施行令第1条の2第1項が、その軽微な建設工事を1件の請負代金の額が500万円(建築一式工事は1,500万円)に満たない工事、または建築一式工事のうち延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事と定めています。

ここで2つ、見落とされやすい定めがあります。

  • 第2項/同一の建設業を営む者が工事の完成を2以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額で判定する(正当な理由に基づく分割は除く)
  • 第3項/注文者が材料を提供する場合は、その市場価格または市場価格および運送賃を請負代金の額に加えたものを請負代金の額とする

3項が実務に効きます。大家さんが便器やエアコンを自分で買って支給しても、その市場価格は請負代金に足して判定されます。施主支給で支払額を下げても、許可の判定額は下がりません。

そして、いちばん取り違えやすいのがここです。建設業許可が要らないことと、電気工事士や指定給水装置工事事業者でなくてよいことは、まったく別の話です。3万円のコンセント工事は建設業許可の対象外ですが、電気工事士法はそのまま効いています。「500万円未満だから誰がやってもいい」という理解でここを飛ばすと、上の3つに全部ぶつかります。

資格が要る工事が入ると、金額はどれだけ変わるのか?

数字で見たほうが早いので、公表されている料金表から引きます。関東で賃貸の原状回復を手がける大家さんの内装屋は、設備工事の料金を公表しています(東京都・埼玉県のみの対応)。温水洗浄便座の交換は次の2段です。

  • 壁にコンセントがある場合 32,800円〜(税込36,080円〜)/設備撤去・処分・材料込
  • 壁にコンセントがなく、配線工事とコンセント新設工事が必要な場合 46,980円〜(税込51,678円〜)/同

差は税抜で14,180円です。便器まわりの作業は同じで、増えているのは「資格が要る電気工事」の分だけです。しかもこれは新設なので、先ほどの露出型の例外(取換えだけ)には当たりません。同じ構造は他の工種にも出ます。テレビドアホンは、既存のインターホンから交換なら24,800円〜(税込27,280円〜)、チャイムからの交換は36,980円〜(税込40,678円〜)、何もない状態からの新規設置は46,000円〜(税込50,600円〜)。キッチンのシングルレバー水栓は壁付けが25,800円〜(税込28,380円〜)で、デッキ型とワンホールが37,800円〜(税込41,580円〜)です。

なお、これらは業者価格です。工事を継続して発注する大家さんや管理会社に向けた金額で、個人が単発で1件だけ頼む一般消費者価格は、これより2〜3割ほど上になります。自分で電話をかけて取った見積りがこの表より高くても、それは相手が高いのではなく、価格の層が違うだけです。

都合の悪いことも書きます

自分でやったほうが安いのは事実です。数百円の器具と工具だけで済む作業に、出張費を含めて1万円以上払うのは、感覚として納得しにくいところだと思います。そして上に書いたとおり、露出型の取換えは条文の上では自分でやれます。

それでも大家さんに手を止めていただきたい理由は、罰則よりも、そのあとに来るものです。工事の対象は自分が住む家ではなく、他人が生活する部屋です。数年後に発熱や漏水が起きたとき、「誰がどの資格で施工したか」を説明できる状態になっているかどうかで、話の進み方が変わります。火災保険や賠償責任の扱いも、契約と原因によって変わりますので、加入している保険会社や代理店に事前に確認してください。ここは一般論で当てはめると危険な部分です。

入居中に壊れたときの費用の分かれ目は入居中に設備が壊れたときの修繕費、交換の時期そのものの考え方はエアコン・給湯器はいつ替えるかにまとめています。工事費を抑える方向の話は原状回復を安くする方法と、安くしてはいけない場所と、見積書の読み方を扱ったクロスの張替え費用の目安と、見積書の見方もあわせてご覧ください。大家さんの立場と権利の全体像ははじめての大家さんが押さえる借地借家法の基本にあります。

まとめ

大家さんが自分で手を動かしてよい範囲は、次の形で覚えておけば足ります。

  1. 電気/電気工事士法施行令1条の6項目と、施行規則2条の「露出型コンセント・露出型点滅器の取換え」だけ。埋込型のコンセントとスイッチの交換は、第二種電気工事士の範囲で、露出型でも新設・増設は範囲の外
  2. /単独水栓の取替え・補修と、こまやパッキンの取替え(配管を伴わないもの)だけ。それ以外は指定給水装置工事事業者へ
  3. 石綿/2006年9月より前に着工した建物は、改修でも有資格者の事前調査が前提。改修で請負代金100万円以上なら労基署への報告も入る

そして、建設業許可の500万円は業者側の話で、資格の話ではありません。材料を自分で支給しても、判定する金額は下がりません。

この3つの線を先に決めておくと、見積りを見たときの判断が速くなります。「なぜこの工事にこの金額がかかるのか」の答えが、たいていこのどれかに入っているからです。なお、個別の工事がどの区分に当たるかは、所管の官庁(電気は経済産業省の産業保安監督部、水道は各市町村の水道局、石綿は労働基準監督署)に確認するのが確実です。

※本文で引用した条文は、2026年8月20日にe-Gov法令検索で現行条文を確認したものです。露出型の取扱いは、経済産業省の公表資料でも同日に確認しています。

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