原状回復を安くする方法と、安くしてはいけない場所
結論からお伝えすると、原状回復を安くする方法は①部分補修で済む場所を見極める、②複数の退去をまとめて発注する、③退去予告が入った時点で段取りを始めるの3つに集約されます。一方で、削ると確実に損をする場所もあります。水回りの清掃、におい、玄関を開けた瞬間の第一印象、この3つです。
金額の大きい工事から削りたくなるのが人情ですが、削った結果として空室が1か月延びれば、家賃1か月分が消えます。家賃7万円の部屋なら7万円。クロス代を2万円削った意味がなくなる、という構図です。
先に、よくある失敗から
費用を抑えようとして、かえって高くついた例を先に挙げます。
- クロスを1面だけ張替えたところ、既存部分との色差がはっきり出て、内見で必ず指摘されるようになった
- ハウスクリーニングを簡易清掃に切り替えたら、浴室の水垢が残り、内見後の申し込みが止まった
- 前入居者のペットのにおいを消臭剤で済ませ、入居後にクレームになって結局施工し直した
- 10年を超えた給湯器をそのまま残し、入居3か月目に故障。緊急対応の割増料金で交換費用が上がった
- 安い相手を探すのに3週間かけ、その間ずっと空室だった
最後の1つが本質です。原状回復で一番効くコスト削減は、工事を安くすることではなく、工事を早く終わらせることです。業界では「まず相見積もり」と言われますが、判断に3週間かけるくらいなら、単価が1割高い相手に翌週着工してもらったほうが手元に残ります。
安くできる場所
| 項目 | やり方 | 効き方の目安 |
|---|---|---|
| クロス | 全室張替えをやめ、傷んだ面と天井だけに絞る | 状態次第で3割から4割減 |
| 発注のまとめ方 | 複数戸の退去を1回にまとめて発注する | 1割から2割減 |
| 建具・扉 | 交換ではなく、傷の補修とダイノックシート | 交換の半分以下になることがある |
| キッチン | 台の交換ではなく、扉の面材と天板の再生 | 数十万円の差が出る場合がある |
| 照明・スイッチプレート | 大家さん側で部材を手配し、取り付けだけ依頼する | 数千円単位だが積み上がる |
| 残置物処分 | 回収業者に直接依頼する | 工事に含めるより下がることが多い |
クロスの部分張替えは、色差が出るかどうかで判断が分かれます。入居から6年以上経っている部屋は日焼けが進んでいるため、部分張替えは避けたほうが無難です。逆に2年から3年で退去した部屋なら、傷んだ1面だけを同じ品番で張替えても、ほとんど分かりません。品番を統一しておく意味はここにあります。
安くしてはいけない場所
| 項目 | 削るとどうなるか |
|---|---|
| 浴室・洗面・トイレの清掃 | 内見時に最も見られる場所。水垢とカビは一目で分かる |
| におい対策 | 写真では伝わらないが、内見では決定打になる。消臭剤で覆っても戻る |
| 玄関まわり | 扉を開けた3秒で印象が決まる。たたきの清掃と下駄箱内部は必須 |
| 10年を超えた給湯器・エアコン | 入居後の故障は緊急対応となり、平常時より高くつく |
| 網戸・パッキン・コーキング | 単価は小さいが、放置すると「管理されていない部屋」に見える |
内見でその場に立つ人が確認するのは、図面に載らない部分です。においと水回りは、家賃を3千円下げるより効きます。空室が長引いているときに見るべき点は空室が3か月埋まらないときに見直す6つのポイントにまとめています。
分離発注は、どこまでやるべきか?
クロス、清掃、設備をそれぞれ別の相手に頼めば、間に入るマージンは減ります。ただし、工程を組む人がいなくなります。清掃が終わる前にクロス屋が入れば、やり直しです。
- 物件が近く、平日に現場へ行ける方は分離発注が向きます。工程は自分で組みます
- 遠方の物件、あるいは本業がある方は一括で任せ、単価表と工程表をもらう形にします
- 年間の退去が10件を超えるなら一括で任せたうえで、年間の単価を先に決めておきます
どちらの形をとるにしても、部位ごとの単価と工程表の2つを必ず出してもらうことです。この2つが出せない相手だと、あとから金額の根拠を確認できません。
発注のタイミングで金額は変わる
退去予告は多くの契約で1か月前です。この通知が届いた日に日程を押さえれば、退去日の翌日から着工できます。逆に、鍵が返ってきてから相手を探し始めると、その時点で1週間から2週間の空白ができます。繁忙期はさらに延びます。
もう一つ、季節の要素もあります。1月から3月は職人の手が埋まりますから、急ぎの依頼には割増がつくこともあります。一方で7月から9月は比較的手が空きやすく、まとめて発注する条件を出しやすい時期です。年間の退去件数が読める物件なら、大きめの工事はこの時期に寄せるという組み立て方もあります。
また、削るかどうかを決める前に、その部屋の家賃と工事費の関係を一度計算してみてください。家賃7万円の部屋で、5万円の工事を削って空室が1か月延びれば、差し引きで2万円のマイナスです。逆に、家賃4万円台の部屋に20万円をかけるなら、その回収に何か月かかるかを先に出しておく必要があります。金額の大小ではなく、家賃の何か月分かで見るのが判断のものさしになります。
また、入居者に請求できる範囲は契約内容と使用状況によって変わります。安くすること自体は貸主の判断で自由にできますが、負担区分の線引きは別の話です。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方を確認し、迷う場合は専門家に相談してください。
まとめ
削るのはクロスの範囲と建具。削らないのは水回り・におい・玄関・寿命を迎えた設備。そして何より、退去予告の日に動き出すこと。この3点を守れば、費用は下がり、空室期間も延びません。
さいたま市周辺で、原状回復の進め方や管理の見直しについて相談先をお探しでしたら、ご連絡ください。まだ何も決めていない段階でもかまいません。
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