賃貸経営で経費にできるもの・できないもの
結論からお伝えすると、賃貸経営で経費にできるかどうかの分かれ目は、領収書があるかどうかではなく、その支出が賃貸経営のために必要だったと説明できるかどうかです。金額の大小はほとんど関係ありません。そして判断に迷う支出は、だいたい「自宅と兼用しているもの」「家族に関わるもの」「修繕」の3か所に集中します。
ご存じの方も多いと思いますが、税制は毎年のように改正されます。ここで整理するのは2026年7月時点での一般的な考え方であり、個別の判断は必ず税理士か所轄の税務署にご確認ください。国税庁のタックスアンサーにも、項目ごとの取り扱いが公開されています。
先に、よくある失敗から
経費の扱いは、二つの方向に振れます。入れすぎる人と、怖くて入れない人です。実際によく聞くのは、こうした話です。
- 家族旅行の費用を物件視察として計上したが、行き先と所有物件の関係を説明できず、修正することになった
- 逆に、迷うものをすべて外した結果、本来計上できたはずの火災保険料や物件までの交通費まで申告に入れていなかった
- 100万円台のリフォーム代を全額その年の経費にしたが、資本的支出と判断され、複数年に分けることになった
- 領収書は箱に入れていたが、何のための支出か分からなくなり、集計だけで3日かかった
前者は追徴のリスク、後者は払わなくてよい税金を払っているという話です。逆方向に見えて、原因は同じところにあります。判断の基準を持っていないこと、それだけです。
一般に経費として扱われるもの
まず、迷うことの少ないものから並べます。賃貸経営を続けるために出ていくお金は、おおむねここに入ります。
| 支出 | 補足 |
|---|---|
| 管理委託料 | 管理会社に支払う手数料。集金代行分も含む |
| 修繕費 | 原状回復や故障の修理。資本的支出との区分に注意 |
| 損害保険料 | 火災保険・地震保険。数年分の一括払いは期間で按分するのが原則 |
| 減価償却費 | 建物・設備の取得費を年数で分割したもの |
| 固定資産税・都市計画税 | その物件にかかる分 |
| 借入金の利息 | 利息部分のみ。元本の返済は経費にならない |
| 広告宣伝費 | 募集の広告料など |
| 旅費・交通費 | 物件の巡回、立会い、打ち合わせの移動 |
| 通信費 | 入居者や管理会社との連絡に使った分 |
| 税理士・司法書士への報酬 | 賃貸経営に関する業務の分 |
見落としが多いのは、借入金の利息と減価償却費の2つです。ローンの返済額のうち経費になるのは利息部分だけで、元本の返済は経費になりません。一方で減価償却費は現金が出ていかないのに経費になります。この二つが逆を向いているため、返済は進んでいるのに帳簿は黒字という、大家さん特有のズレが生まれます。
経費にならないもの、扱いに注意が必要なもの
| 支出 | 一般的な扱い |
|---|---|
| 借入金の元本返済 | 経費にならない |
| 所得税・住民税 | 個人にかかる税金は対象外 |
| 交通違反の罰金など | 対象外 |
| スーツ・時計・眼鏡 | 生活費との区別がつきにくく、認められにくい |
| 家族旅行を兼ねた視察 | 事業に使った部分を説明できるかどうかで変わる |
| 資本的支出にあたる工事 | その年に全額ではなく、減価償却で分割 |
| 自宅の家賃・光熱費 | 業務に使っている割合の分だけ |
この表の下の3行は、白黒がはっきりしない領域です。だからこそ、あとで説明できる形にしておく必要があります。
自宅兼用のものは、どこまで入れていいのか?
自宅の一室を賃貸経営の事務作業に使っている、という方は多いと思います。この場合は全額ではなく、業務に使っている割合だけを計上するのが原則です。いわゆる按分です。
割合の出し方に決まった正解はなく、面積で分ける、時間で分ける、日数で分けるといった方法があります。たとえば延べ40平米の住まいのうち8平米を作業に使っているなら20%、週7日のうち2日を賃貸経営の作業にあてているなら7分の2、という具合です。通信費なら回線の使用状況、車なら走行距離で分ける考え方もあります。
大事なのは割合の数字そのものよりも、なぜその割合にしたのかを説明できること、そして毎年その基準を変えないことです。根拠を1枚のメモに残しておくだけで、後々の説明がまったく違ってきます。ただし、按分の妥当性は個別の事情によりますので、判断に迷う場合は税理士にご相談ください。
領収書がすべてではない
一般には「領収書がなければ経費にできない」と言われますが、現場で起きているのはむしろ逆のことです。領収書があっても中身を説明できなければ通りませんし、領収書が手元になくても、支払の事実と目的が記録からたどれれば認められる余地はあります。
もちろん、原則として領収書は保存するものです。そのうえで、領収書だけに頼らない記録の残し方を持っておくと、いざというときに強くなります。通帳の入出金、クレジットカードの明細、工事前後の写真、管理会社とのメールのやりとり。これらは支出の目的を示す材料になります。
保存期間は、帳簿類が原則7年、書類の種類によっては5年とされています。年数は制度の見直しで変わることがありますので、直近の取り扱いは国税庁の案内でご確認ください。確定申告の期限は例年3月15日前後です。1年分をこの時期にまとめて思い出すのは無理があるので、月に一度、30分でも整理する時間を取るほうが結果的に早く終わります。
まとめ
賃貸経営のために必要だったと説明できるか。按分の根拠を一貫させているか。領収書以外の記録を残しているか。この3点が揃っていれば、経費で悩む場面はかなり減ります。なお、管理委託料や広告料といった支出が妥当な水準かどうかは、税務とは別の話です。そちらは管理会社を変えたいと思ったときに、最初に確認する3つのことや空室が3か月埋まらないときに見直す6つのポイントで整理しています。
本記事は一般的な考え方の整理であり、個別の判断は税理士や税務署にご確認ください。そのうえで、さいたま市周辺で賃貸管理の見直しを考えていらっしゃる方は、ご相談ください。管理料や工事費の内訳をどう整理すれば申告のときに困らないか、といった実務の段取りだけをお伝えすることもできます。
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