雇う人が10人未満なら、就業規則を作らなくても法律違反ではありません|労働基準法89条は「常時10人以上」の事業場に課されます

結論からお伝えすると、管理人や清掃のパートを雇っていても、常時10人以上の労働者を使っていなければ、就業規則を作って届け出る義務はありません。労働基準法89条が義務を課しているのは、常時10人以上の労働者を使う使用者だけです。ただし、10人未満でも、作った就業規則には効力が生じます。作る前に、その点も知っておいてください。現行の条文で確かめました(2026年10月5日時点)。

就業規則の線引き。作成と届出は常時10人以上、10人未満でも作れて、作ると契約の内容になりうる。

89条が義務にしているのは「常時10人以上」の事業場です

89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して、行政官庁に届け出なければならないと定めています。変更したときも同じです。栃木労働局の解説は、この義務を、事業場ごとに見る形で説明しています。アパート1棟を1人の管理人と数人のパートで回している大家さんは、ほとんどの場合、この線の下です。

義務がないことは、違法でもないことを意味します。10人未満で就業規則を持っていなくても、89条の違反にはなりません。違反に罰則があるのは、10人以上の事業場が作成と届出を怠ったときです(120条1号に89条が入っています。30万円以下の罰金)。

「常時10人」は、パートやアルバイトも数えるのですか?

条文には、「常時10人」の数え方の定義が書かれていません。パートやアルバイトを数えるか、一時的に10人を超えた週があったらどうなるかは、条文だけでは読み切れません。10人に近づいてきたら、数え方を所轄の労働基準監督署に確かめてください。

10人未満でも、「就業規則その他これに準ずるもの」が出てくる場面があります

管理人を1人雇うだけの大家さんでも、条文が就業規則を前提にしている場面に当たることがあります。

  • 4週で4日の休日にする:4週間の起算日を、就業規則その他これに準ずるものに明らかにします(施行規則12条の2第2項。管理人にも毎週1回の休日が要ります)
  • 1か月以内の期間で労働時間を平均する:32条の2は、労使協定か、就業規則その他これに準ずるものによって定めるとしています

「これに準ずるもの」に何が入るかは、条文に定義がありません。10人未満の事業場で、雇用条件の書面や管理人へ渡す約束事の紙がそれに当たるのかは、条文からは読み取れないので、使う前に労働基準監督署で確かめてください。

作ると、書いた中身に自分も縛られます

労働契約法7条は、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を、労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件になるとしています。この条文に、10人以上という線は書かれていません。つまり、10人未満の大家さんが任意で作った就業規則も、周知すれば契約の内容になりえます。

労働契約法12条は、就業規則で定める基準に達しない労働条件の契約は、その部分が無効になり、就業規則の基準になるとしています。あとから労働条件を変えるときは、変更の合理性が問われます(労働契約法10条)。罰として「遅刻したら1回で罰金」のような制裁を書くなら、減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、総額も1賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはいけません(労働基準法91条)。

就業規則が必要になったときの手順。必ず書く事項を決め、意見を聴き、届け出て、労働者に知らせる。

10人以上になったら、何を書いて、どこへ出しますか?

89条は、必ず書く事項として、次の3つを挙げています。

  1. 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇(交替制なら就業時転換)
  2. 賃金の決定・計算・支払いの方法、締切りと支払いの時期、昇給
  3. 退職に関すること(解雇の事由を含む)

「休暇」には年次有給休暇も入ります。日数の決まりは週2日の清掃パートにも有給休暇は付きますに書きました。退職手当・賞与・食費の負担・安全衛生・表彰と制裁などは、定める場合に書きます。作成や変更のときは、労働者の過半数で組織する労働組合、なければ労働者の過半数を代表する者の意見を聴き(90条1項)、その意見を記した書面を添えて届け出ます(同2項)。出したあとは、掲示・書面の交付・電子ファイルの備付けのいずれかで、労働者に知らせます(106条1項、施行規則52条の2)。

なお、90条1項は「10人以上」と書いていません。10人未満で作るときに、意見を聴く義務が働くかは、条文だけでは読み切れません。聴いて、その記録を残しておくのが無難です。

都合の悪いことも書いておきます

  • 就業規則がなくても、雇用条件を明示する義務は10人未満でも残ります(15条1項)。何を書面で示すかはアパートの管理人を雇う大家が書面で示すことに整理しました。
  • 就業規則は、労働基準法などの関係法令に反して作れません(栃木労働局の解説も同じ説明です)。管理人の休憩は、6時間を超えたら45分ですのような法律の最低ラインを下回る定めは書けません。
  • ひな型をそのまま写すと、実際の働き方と食い違います。写した結果、守れない約束を自分に課すことになりえます。
  • 家事使用人には労働基準法が適用されません(116条2項)。賃貸経営のために雇う管理人が当たるかは、条文だけでは判断できません。

今日やることを1つだけ選ぶなら

いま雇っている人の数を、管理人・清掃のパート・事務のアルバイトまで含めて書き出してください。10人にはるか届かないなら、就業規則の作成より先に、雇用条件の書面に休日の起算日と辞めるときの決まりが書いてあるかを見ます。9人や10人に近いなら、数え方を労働基準監督署に確かめてから動きます。個別の判断は、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確かめてください。

出典

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