管理人に辞めてもらうときは、30日前に伝えるか30日分の平均賃金を払います|労働基準法20条の予告は日数を短縮できます
結論からお伝えすると、雇っている管理人や清掃のパートに辞めてもらうときは、少なくとも30日前に予告するか、予告しない日数ぶんの平均賃金を払う決まりです(労働基準法20条)。予告をした日から辞める日までの日数は、1日について平均賃金を払えば、その日数ぶん短くできます。ただし、予告手当を払えば解雇できるわけではありません。解雇そのものの有効性は、労働契約法16条が別に見ます。現行の条文で確かめました(2026年10月5日時点)。

30日前の予告と、30日分の平均賃金は、組み合わせられます
20条1項は、使用者が労働者を解雇しようとするときは、少なくとも30日前にその予告をしなければならず、予告をしない使用者は30日分以上の平均賃金を払わなければならないと定めています。2項は、1日について平均賃金を払った場合は、予告の日数を短縮できるとしています。
- 30日前に予告する:手当は要りません
- 予告をせずに、その日に辞めてもらう:30日分以上の平均賃金を払います
- 10日前に予告する:足りない20日分の平均賃金を払います
民法627条1項は、期間の定めのない雇用は解約の申入れから2週間で終わると定めています。しかし、使用者のほうから解雇するときは、労働基準法20条がそれより長い30日を求めています。
平均賃金は、直前3か月の賃金を日数で割ります
12条1項は、平均賃金を、事由が起きた日の前の3か月間に払った賃金の総額を、その期間の総日数(暦の日数)で割った額としています。7月から9月の92日間に、賃金を合計92万円払った管理人なら、平均賃金は1日あたり1万円です。30日分なら30万円になり、10日前に予告したなら、足りない20日分の20万円を払います。
時給や日給で働くパートには、下限が付いています。12条1項1号は、賃金の総額をその期間に実際に働いた日数で割った額の60%を、下回ってはならないとしています。3か月の賃金が36万円、暦の日数が92日、実際に働いた日が36日なら、暦の日数で割ると3,913円ですが、働いた日数で割った1万円の60%は6,000円です。この場合は6,000円を使います。
業務上のけがで休んだ期間、産前産後の休業、使用者の責任で休ませた期間、育児・介護休業の期間、試みの使用期間は、日数も賃金もその3か月から外して計算します(12条3項)。

予告が要らない人と、解雇そのものが禁じられる時期があります
21条は、次の人には20条を適用しないとしています。ただし、それぞれ期間を超えて引き続き使うと、20条が働きます。
- 日々雇い入れる人:1か月を超えて引き続き使うと適用
- 2か月以内の期間を定めて使う人:所定の期間を超えて使うと適用
- 季節的な業務に4か月以内の期間を定めて使う人:所定の期間を超えて使うと適用
- 試みの使用期間中の人:14日を超えて引き続き使うと適用
逆に、解雇そのものができない時期があります。19条1項は、業務上のけがや病気で療養のために休む期間とその後30日間、産前産後の休業の期間とその後30日間は、解雇してはならないと定めています。例外は、打切補償を払う場合と、天災などで事業の継続が不可能になった場合です。後者は行政官庁の認定が要ります(19条1項ただし書・2項)。
横領や無断欠勤のときも、予告は要らないのですか?
20条1項ただし書は、労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合は予告も手当も要らないとしています。ただし、20条3項により、この場合も行政官庁の認定が要ります。栃木労働局の解説は、この例として、横領・傷害・2週間以上の無断欠勤を挙げています。認定は労働基準監督署長が行います。大家さんの側で「これは本人が悪い」と決めて、認定を受けずに予告なしで解雇することはできません。
予告手当を払えば、解雇してよいのですか?
いいえ。労働契約法16条は、解雇が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは、権利の濫用として無効だとしています。20条は、予告と手当の手続きを決めているだけで、解雇の理由が足りるかどうかは別に問われます。
期間を決めて雇っているときは、もっと厳しくなります。労働契約法17条1項は、有期の労働契約では、やむを得ない事由がある場合でなければ、期間が終わるまでの間は解雇できないとしています。1年の契約で雇った管理人を、半年で解雇するのは、この条文が問題になります。
辞めてもらうときの書類は、ほかにもあります
22条1項は、辞める人から、使用期間・業務の種類・賃金・退職の事由(解雇ならその理由を含む)について証明書を請求されたら、遅滞なく渡すことを求めています。2項は、解雇の予告があった日から辞める日までの間に、解雇の理由について証明書を請求された場合も同じです。帳簿の側では、解雇の記録も保存の対象です(109条、人を雇った大家が備える帳簿は2つです)。
辞めた人が雇用保険や労災保険に入っていたときの条件は、大家が雇う管理人や清掃のパートは、週20時間から雇用保険の対象ですと清掃のパートを1人雇う大家の労災保険に整理しています。
20条は予告の方法を指定していません。ただ、いつ予告したのかが後から食い違わないよう、日付を書いた書面で渡し、控えを残しておくことをおすすめします。
守らなかったときは、どうなりますか?
119条1号は、19条・20条に違反した者を、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処すると定めています。
都合の悪いことも書いておきます
- 話し合いで本人が納得して辞める合意退職は、使用者が一方的に終わらせる解雇ではありません。ただ、どちらに当たるかは、書面と経緯で決まります。条文だけでは線を引けません。
- 住み込みの管理人の部屋を、雇用と別の賃貸借の形にしているか、仕事の一部としてあてがっているかで、辞めたあとの明渡しの話が変わります。条文だけでは読み切れないので、弁護士か労働基準監督署に確かめてください。
- 家事使用人には労働基準法が適用されません(116条2項)。賃貸経営のために雇う管理人が当たるかは、条文だけでは判断できません。
- 解雇の理由が足りるかどうかは、事情ごとに裁判所が判断します。この記事は、20条の手続きの部分までを条文で確かめたものです。
今日やることを1つだけ選ぶなら
管理人との雇用条件の書面を取り出して、辞めるときの決まりが書いてあるかを見てください。解雇の事由と、予告の日数が書いてなければ、1行足します。辞めてもらう話が現実に出ているなら、先に過去3か月の賃金の総額と暦の日数を出して、30日ぶんがいくらかを計算しておくと、話し合いの数字がぶれません。アパートの管理人を雇う大家が書面で示すことも合わせて見てください。個別の判断は、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確かめてください。
出典
- 労働基準法12条・19条・20条・21条・22条・109条・116条・119条(e-Gov法令検索・2026年10月5日時点)
- 労働契約法16条・17条(同)
- 民法627条(同)
- 解雇の予告(第20条)(栃木労働局)
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