アパートの修繕費は1戸あたり年いくらか|国のガイドブックの例を割ると8万〜15万円

結論からお伝えすると、国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック(管理会社向け)」に載っている例のうち3つを、そのまま「計画期間の修繕費の合計 ÷ 戸数 ÷ 年数」で割ると、1戸あたり年8万円台から15万円台になります。ただし3つの数字は、入っている工事の範囲がそろっていません。自分の物件の数字を出すときは、まず「どこまでの工事を数えたか」を決めてから割ります(2026年10月8日時点で公開されている版で確かめました)。

アパートの通帳を1年分めくると、給湯器の交換、エアコンの入れ替え、水漏れの修理と、修繕の支払いは不規則に出てきます。ある年は30万円、次の年は200万円。これでは「うちは修繕にいくら使っているのか」が分かりません。年と戸数で割ってならすと、初めて比べられる数字になります。

国のガイドブックの3例を戸数と年数で割った1戸あたり年間修繕費。年約8万円から15万円。

ガイドブックの3つの例を割ると、いくらになるか

例 計画期間の修繕費 1戸あたり年額
福岡県・木造2階建て・6戸(2LDK) 40年で2,483万円 約10万3,000円
東京都・木造2階建て・8戸(1K・18.2平方メートル) 40年で2,575万円 約8万500円
積立額の設定例・18戸 35年で9,500万円 約15万800円(月1万2,566円)

上の2つは、ガイドブックに載っている実際の物件の長期修繕計画の「合計(建物全体)」欄を足したものです(いずれも1〜10年目、11〜15年目、…36〜40年目の7つの区切りで載っています)。3つめは、ガイドブックが修繕資金の積立額を説明するために置いた例で、35年間の修繕費の合計9,500万円を420か月で割ると月22万6,190円、18戸なら戸あたり月1万2,566円、と本文に書かれています。

同じ木造2階建てで、なぜ数字がずれるのか?

計画に入っている工事の範囲が違うからです。

  • 福岡の6戸は、給湯器・エアコン・浴室・キッチン・洗面化粧台・トイレの修理と交換を10年または15年の周期で入れています。室内設備の小計は、11〜15年目に237万円、26〜30年目に323万円です。
  • 東京の8戸は、室内設備の交換を個別に並べず、「専用部分リフォーム工事(水廻り改修)」を20年周期で21〜25年目と26〜30年目に384万円ずつ置いています。そのかわり、31〜40年目は合計で346万円まで下がります。
  • どちらにも「日常修繕」が毎年の項目として入っています。福岡は建物本体の日常修理・消防点検と室内の日常修理、東京は日常修理です。

つまり、「1戸あたり年いくら」を他の物件と比べるときは、①室内設備の交換を入れたか ②日常の小さな修理を入れたか ③計画期間を何年にしたか、の3つがそろっていないと比べられません。東京の例のように、計画の終わりの10年に工事が少なければ、期間を40年にした分だけ平均は下がります。

自分の物件で数字を出す手順

  1. 過去の支払いを並べる:通帳、送金明細、確定申告の修繕費の欄から、修繕に払ったものを年ごとに拾います。送金明細から引かれている項目の見方は送金明細書から引かれている5つの項目にあります。
  2. 「資本的支出」として計上したものも拾う:税務の上で修繕費にならず資産に計上した工事も、お金は出ています。区別は修繕費と資本的支出の違いに整理しています。
  3. ガイドブックの項目に振り分ける:屋根・外壁・鉄部・足場/共用設備/室内設備/日常修繕、の4つに分けると、上の例と並べられます。
  4. 年数と戸数で割る:持ってから3年しかたっていないなら、3年分で割った数字は「まだ大きな工事が来ていない数字」です。過去の平均として扱い、将来の目安にはしません。
  5. 次の大きな工事を足す:外壁や屋根は10年前後の周期で足場が要ります。ガイドブックの東京の例では、11〜15年目に屋根47万円・外壁96万円・足場34万円などが並んでいます。これから来る分を足してから割り直します。
自分の物件で1戸あたり年間修繕費を出す5つの手順。

積立額は、どう決めればいいのか

ガイドブックは、長期修繕計画の合計を月数で割る方法のほかに、管理業者がオーナーに案内している目安として2つの例を紹介しています。

  • 建築費の一定割合を年間の積立額にする:建築費1億円の1%なら年100万円、10年で1,000万円
  • 大規模修繕の費用が年間の総家賃収入を超えない程度にする:年間家賃収入300万円なら、10年で300万円を目安に月2万5,000円

どちらも「例」として載っているもので、国が決めた基準ではありません。積み立てたお金を払った年に経費にできるかは別の話で、修繕積立金を払った年に経費にできるのは、4つの事実がそろったときだけに書いています。積立の考え方は大規模修繕の積立をどう考えるかにもあります。

都合の悪いことも書いておきます

  • ガイドブックの2つの物件は、それぞれ1棟の計画です。全国の平均ではありません。構造・地域・間取り・築年数で大きく変わります。
  • 福岡の例は委託管理、東京の例はサブリース方式の物件です。誰が修繕を負担する契約かで、大家さんの通帳に出てくる金額は変わります。
  • 計画の金額は、作られた時点の工事費です。工事費は年によって動くため、古い計画は金額を見直す必要があります。原状回復の見積りが上がっている理由は原状回復の見積りが3年前より1割高いのは全国の動きですにあります。
  • 給湯器やエアコンを壊れてから替えるか、壊れる前に替えるかでも、年ごとの金額は変わります。エアコン・給湯器はいつ替えるかも合わせて読んでください。

今日やることを1つだけ選ぶなら

去年の確定申告の控えを開いて、修繕費の欄の金額を戸数で割ってください。その1つの数字が、ガイドブックの8万〜15万円と比べてどこにあるかを見るだけで、「次の大きな工事に備えている年」なのか「工事が来ていないだけの年」なのかの見当がつきます。税務の判断は税理士に確かめてください。

出典

  • 国土交通省住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)付「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック(管理会社向け)」(国土交通省ウェブサイト・2026年10月8日閲覧)

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