相続人がいない入居者が亡くなったとき|未払い家賃は清算人の公告期間内に申し出ないと、請求できなくなることがあります(民法958条)

一人暮らしの入居者が亡くなって2か月。親族を探したが、両親は先に亡くなり、きょうだいも子もいないと分かった。部屋には家具と荷物が残り、未払いの家賃が2か月分たまっている。誰に請求すればいいのか、そもそも請求できる相手がいるのかが分からない。

結論からお伝えすると、相続人のいることが明らかでないとき、亡くなった入居者の財産は「相続財産法人」になり、家庭裁判所が選ぶ清算人が窓口になります(民法951条・952条)。大家さんは未払い家賃の債権者として、清算人が出す公告の期間内に請求の申出をします。この期間を逃し、しかも清算人が大家さんの債権を知らなかった場合は、権利を行使できなくなります(958条)。部屋を空けることと、未払い家賃を回収することは、同じ手続きの中で進みます。

相続人がいないとき財産は法人になり、窓口は家庭裁判所が選ぶ清算人。請求は公告の期間内に出し、知れない債権者の権利は消える

相続人がいないとき、誰が手続きの相手になるのか

民法951条は「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする」と定めています。入居者の預金も、部屋の中の荷物も、賃借人としての地位も、この法人に属します。法人を動かすのが、家庭裁判所が選ぶ相続財産の清算人です(952条1項)。

清算人の選任を家庭裁判所に請求できるのは、利害関係人か検察官です。未払い家賃がある大家さんは利害関係人にあたり得ます。清算人が選ばれる前の、相続人がいるかどうかも分からない段階で財産を守る必要があるときは、897条の2で相続財産の管理人を選んでもらう道もあります。

選任されてから、何がどの順番で進むのか

2023年4月1日の民法改正で、この手続きの順番が変わりました。改正前は、管理人の選任の公告、債権者への公告(2か月以上)、相続人捜索の公告(6か月以上)が順番に続き、最短でも10か月ほどかかる組み立てでした。改正後は、清算人の選任と相続人捜索の公告が1回にまとまり、債権者への公告はその期間の中で並行して行われます。

  1. 清算人の選任と公告:家庭裁判所が、清算人を選んだことと、相続人がいれば一定の期間内に権利を主張するよう公告します。期間は6か月以上(952条2項)
  2. 債権者・受遺者への公告:清算人が、すべての相続債権者と受遺者に2か月以上の期間を定めて請求の申出をするよう公告します。この期間は、1の期間内に終わるように定められます(957条1項)
  3. 期間内に相続人が現れなかったとき:相続人と、清算人に知れなかった相続債権者・受遺者は、権利を行使できなくなります(958条)
  4. 特別縁故者への分与:生計を同じくしていた人や療養看護に努めた人は、1の期間の満了後3か月以内に財産の分与を請求できます(958条の2)
  5. 残った財産:国庫に帰属します(959条)

大家さんが「知れている債権者」になっておく

958条で権利を失うのは「清算人に知れなかった」債権者です。清算人が選ばれたら、すぐに未払い家賃・明渡しまでの賃料相当額・原状回復の見込みを書面で清算人に伝え、2の公告が出たら期間内に申出をします。選任を自分で申し立てた場合でも、債権の中身は改めて書面で出しておくのが確実です。

清算人の選任と公告6か月以上、請求の申出の公告2か月以上、相続人が現れなければ打ち切り、縁故者の請求は満了後3か月以内、残りは国庫へ

部屋を空けるのはいつになるのか

賃貸借契約は、入居者が亡くなっても終わりません。相続人がいなければ、賃借人の地位は相続財産法人に残ります。解約の申入れや合意解除の相手は清算人で、部屋の荷物の処分や引渡しも清算人と決めます。

  • 大家さんが自分の判断で荷物を処分すると、相続財産の価値を損なったとして責任を問われるおそれがあります
  • 清算人の権限を超える行為(財産の処分など)には、家庭裁判所の許可が要る場面があります(953条が28条を準用)。合意の日付が予定より遅れることを見込んで、次の募集を組んでください
  • 内縁の配偶者など、一緒に住んでいた人がいる場合は、借地借家法36条で賃借人の権利を承継することがあり、話が変わります

申立ての書式や必要書類、費用は家庭裁判所の案内で確かめ、個別の判断は弁護士や司法書士にご確認ください。

亡くなった直後に部屋に入るときの注意は入居者が亡くなったと連絡が来たら、入院や施設入所で後見人が付いたときは後見人から解約通知が来ても、大家はまだ部屋を戻せません、連絡が取れない段階の動き方は連絡が取れない入居者への対応にまとめています。入居審査の段階での備えは大家が入居審査をどこまで厳しくするかも参考になります。大家さんの側が相続したときの契約の扱いは入居者との契約はどうなる?相続後の契約の扱いにあります。

今日やることを1つだけ選ぶなら

未払い家賃と、明渡しまでにかかる見込みの金額を、月ごとの表にして1枚にまとめてください。清算人が選ばれた日に、その1枚を書面で送れる状態にしておくことが、958条で権利を失わないための最初の準備です。

出典

  • 民法28条・897条の2・951条〜959条、借地借家法36条(e-Gov法令検索・2026年10月9日時点。952条・957条・958条は2023年3月31日時点と4月1日時点の条文を突き合わせ)

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