単身向けの部屋に大家が設備を足す順番|ガス会社に費用を持たせる形は省令で名指しされました

結論からお伝えすると、単身向けの部屋に設備を足す順番は、人気ランキングでは決まりません。その設備の費用を誰が持つのかから決まります。そして「ガス会社に持たせて実質ゼロ円で入れる」というやり方は、2017年から2025年にかけて4段階で、省令に名指しで書かれてきました。

プロパンガスの単身アパートで、給湯器の交換をガス会社が「うちで持ちます」と引き受けてくれる。そのかわり入居者のガス料金に月々乗る。長く行われてきた形です。液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則(以下「液石法施行規則」)の16条を開くと、この形が号を分けて書かれています。

賃貸のLPガスに効く液化石油ガス施行規則16条の6項目の図解。大家への利益供与の禁止、変更を縛る貸与契約の禁止、料金の3分割、設備費の範囲、大家負担分の付け替え禁止、既存契約への不適用。

省令に書かれた5つの号を、順に読む

16条は「販売の方法の基準」を並べた条文です。賃貸に効くのは次の号です(出典:e-Gov法令検索・液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則/2026年9月4日時点)。

  • 15号の3(2017年6月1日から)|入居者とガス会社の契約を自社と結ばせる目的で、建物の所有者等に「正常な商慣習を超えた利益」を供与しないこと
  • 15号の5(2024年7月2日から)|建物の所有者等との間で、入居者がガス会社を変更することを制限するような条件を付した貸与契約等を締結しないこと
  • 15号の7(2025年4月2日から)|入居者に請求する費用を、ガスの使用量にかかわらず生ずる費用・使用量に応じて生ずる費用・消費設備の貸与等に係る費用の3つに整理し、算定根拠を通知すること
  • 15号の8(同)|配管とガス器具の設置等に係る費用以外の費用を、消費設備の貸与等に係る費用として請求しないこと
  • 15号の9(同)|入居者に料金を請求するとき、建物の所有者が本来負担すべき消費設備の貸与等に係る費用を請求しないこと(合意があるときは別)

ここでよく言われる「2025年4月から変わった」は、いちばん最後の段だけを指しています。法令検索で日付を指定して16条を取り直すと、施行の段は4つに分かれていました。

  1. 2017年4月1日|11号(ガス会社所有の設備であることを供給開始時までに入居者へ確認)と15号の2(賃貸借契約の前に料金表等を提示する努力)
  2. 2017年6月1日|15号の3(大家への過大な利益供与の禁止)
  3. 2024年7月2日|15号の5(変更を縛る貸与契約の禁止)と15号の10(他社の供給設備を勝手に撤去しない)
  4. 2025年4月2日|15号の7から15号の9まで(費用の3分割と算定根拠の通知、設備貸与費用の範囲、大家負担分の付け替えの禁止)

最後の段が1年遅れているのは、改正省令の施行期日の条文が「公布の日から起算して三月を経過した日から施行する。ただし、(略)第十六条第十五号の七から第十五号の九までの改正規定は、公布の日から起算して一年を経過した日から施行する」と書き分けていたからです。実際に2025年4月1日時点の16条には15号の7から9が存在せず、翌4月2日時点で現れます。

「2025年4月から入居者への付け替えは終わった」で合っているのか?

合っていません。ここが実務でいちばん取り違えるところです。改正省令の附則2条は、こう書いています。

「この省令による改正後の第十六条第十五号の八及び第十五号の九の規定は、この省令の施行の日前に締結された液化石油ガス販売契約については、適用しない」

つまり2025年4月2日より前に結ばれた販売契約には、15号の8と15号の9が及びません。附則3条は販売事業者に「必要な液化石油ガス販売契約の更新を速やかに行うよう努めるものとする」と求めていますが、努力義務です。契約が更新されるまで、古い形はそのまま残ります

そして見落としやすいのが、附則2条が挙げているのは15号の8と9だけだということです。15号の7(3つに分けた費用の算定根拠の通知)には、この経過措置がありません。既存の契約でも、内訳と根拠は通知される側に立ちます。

大家の側に紙が回ってくる号もある

16条には、貸す側の手元に情報が来る号も並んでいます。

  • 15号の2(2017年4月1日から)|入居者と建物所有者が異なる場合、賃貸借契約が締結される前に、入居者に直接、または建物の所有者等を通じて料金表等を提示するよう努めること
  • 11号(同)|ガス会社が所有する消費設備を入居者が利用する場合は、供給開始時までに、その設備がガス会社の所有であることを入居者に確認すること
  • 17号|解約の申出があった場合、ガス会社が所有する配管は、適正な対価で入居者に所有権を移転すること

15号の2は「大家を通じて提示する」という経路を条文に書き込んでいます。料金表が手元に来るのは、契約前です。その紙を読まずに募集を続けると、入居者から「聞いていた金額と違う」と言われたときに、貸す側に何も残りません。

空室のうちに設備を決める順番3段の図解。壁と天井を開ける工事、本体だけを替えるもの、季節で値が動くもの。

では、順番はどう決まるのか

費用の持ち主を自分で決めると、そこから機械的に順番が出ます。

先に決めるのは、壁と天井を開ける工事

入居後にはできない工事から入ります。コンセントの新設、配管の引き直し、天井の器具の取り替え。空室のあいだしか手が入りません。

金額の目安を挙げます。大家さんの内装屋の設備工事の価格表(2026年7月改定・税別)では、温水洗浄便座の交換は壁にコンセントがある場合でおよそ33,000円程度、コンセントの新設が必要になると47,000円程度からに上がります。テレビドアホンも、既存のインターホンからの交換ならおよそ25,000円程度ですが、何もない状態から新規に設置すると46,000円程度からです。差はどちらも配線工事です。

なお、これらは大家さんや管理会社のように継続して発注する事業者向けの業者価格です。個人が単発で頼む一般消費者価格は、2割から3割ほど上がります

次に、本体を替えるだけのもの

換気扇のプロペラ式はおよそ25,000円程度、天井埋込型でおよそ35,000円程度(いずれも撤去・処分・材料込み・税別)。単身向けの部屋では、ここが「決まらない理由」に上がってくることがあります。入居中でも替えられるので、順番は後ろでかまいません。

最後に、季節で値段が動くもの

エアコンです。同じ価格表では6畳用(2.2kW)の本体と標準取付工事で通常期がおよそ70,000円程度、7月から9月のハイシーズンはおよそ76,000円程度(いずれも税別)。8畳用(2.5kW)は8万円台、10畳用(2.8kW)は9万円台に上がり、ハイシーズンはどちらも6,000円ほど乗ります。既存機の撤去と処分はそれぞれ別途で、撤去が5,500円、処分が5,500円(いずれも税込)です。

つまりエアコンは空室が出た月がいつかで、同じ工事の金額が変わる設備です。夏に壊れてから動くと、いちばん高い時期に当たります。エアコンを設備として持つのか、残置として置くだけにするのかという線引きは、熱中症で運ばれた場所の1位は住居|大家が空室のうちに決めるエアコンの扱いに整理しています。

設備として持つと、修繕義務が付いてくる

順番の話には、もう1つの軸があります。契約書に「設備」として書き込んだものは、壊れたときに直す側に回ります。民法606条1項の修繕義務です。逆に、置いてあるだけの残置物として扱えば、その義務からは外れます。

だから設備を足すときの判断は、入れるかどうかではなく、入れたものを設備として書くかどうかまで含みます。入居中に壊れたときの費用の分かれ目は入居中に設備が壊れたときの修繕費|大家負担と入居者負担が分かれる一点に、洗浄便座を付けたあとに付いてくる義務は温水洗浄便座を付けるかどうか|築古アパートのオーナーに金額のあとから付いてくる3つの義務にまとめてあります。

まとめ

  • 賃貸のLPガスの規制は2017年4月1日から4段階で積み上がっている。液石法施行規則16条15号の3・15号の5は、大家への過大な利益供与と、ガス会社の変更を縛る貸与契約を禁じている
  • 15号の7から9は2025年4月2日施行。ただし15号の8と9は、施行日前に結ばれた販売契約には適用されない(改正省令附則2条)。15号の7に経過措置はない
  • 15号の2により、料金表は賃貸借契約の前に大家を通じて提示される経路が条文に書かれている
  • 順番は「壁と天井を開ける工事 → 本体だけを替えるもの → 季節で値が動くもの」。エアコンは7月から9月に上がる

プロパンガスの物件をお持ちなら、ガス会社との貸与契約の日付を1枚だけ確認してください。2025年4月2日より前の日付なら、15号の8と9はその契約に及んでいません。個別の契約の扱いは、供給しているガス会社と、都道府県または指定都市の液化石油ガスの担当窓口に確認してください。

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