更新事務手数料は誰が払うのか|大家が探すのは契約書ではなく契約前の説明書面です
結論からお伝えすると、更新事務手数料に法律上の上限はありません。宅地建物取引業法の報酬の上限は、この費目には届いていないからです。届いていない以上、金額を決めているのは契約だけです。
そして、その契約のどこに書いてあるかというと、多くの大家さんが見ている管理委託契約書ではなく、契約を結ぶ前に渡された説明の書面のほうです。法律が「書いて説明しろ」と名指ししているのは、そちらだけです。

更新のときに動くお金は、3つあります
更新の時期になると、明細に似た名前の項目がいくつも並びます。まず、別のお金だということを分けておきます。
- 更新料 入居者から大家さんへ。賃貸借契約に定めがあるときだけ発生します
- 更新事務手数料 大家さんから管理会社へ。管理委託の側のお金です
- 保証会社の更新保証料 入居者から保証会社へ。保証委託契約の側のお金です
3つとも根拠になる契約が違います。更新料そのものについては大家は更新料を取るべきか|国の標準契約書に「更新料」の欄はないにまとめました。ここでは2つ目だけを見ます。
宅建業法の報酬の上限は、更新事務には届いていません
宅地建物取引業法第46条第1項は、こう書いています(出典:e-Gov法令検索・2026年8月30日時点)。
「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる」
そして第2項が「前項の額をこえて報酬を受けてはならない」。第4項は、事務所の見やすい場所に報酬額を掲示しろと定めています。仲介手数料が家賃1か月分と消費税に収まっているのは、この条文と、これを受けた国土交通大臣の告示があるからです。
では、更新事務手数料はどうなるのか?
条文が上限をかけている相手は「代理又は媒介」です。更新の事務は、新しい借り手と貸し手を引き合わせる行為ではありません。すでに当事者同士で続いている契約を、書面にして回すだけの作業です。代理でも媒介でもない以上、第46条の上限は及びません。
ここは実務の人ほど取り違えます。「宅建業者なんだから、上限があるはずだ」と考えてしまう。上限があるのは仲介の報酬だけで、更新事務手数料は別の棚に置かれています。掲示されている報酬額の紙を見ても、この費目は載っていません。
賃貸住宅管理業法の「管理業務」にも、更新事務は入っていません
では管理の側の法律ならどうか。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律第2条第2項は、管理業務を2つに限定しています(出典:e-Gov法令検索・2026年8月30日時点)。
- 賃貸住宅の維持保全を行う業務(点検、清掃その他の維持を行い、及び必要な修繕を行うこと)
- 家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理を行う業務(前号に掲げる業務と併せて行うものに限る)
賃貸借契約の更新事務は、点検でも清掃でも修繕でもなく、家賃や敷金の管理でもありません。この法律が言う「管理業務」の外側にある作業です。管理業務の範囲そのものについては管理を「一部委託」にするという選択で扱いました。
ただし、更新事務手数料が法律とまったく無関係になるわけではありません。むしろ、ここからが本題です。
法律が名指ししているのは、契約書ではなく「契約前の書面」です
同法第13条第1項は、管理受託契約を結ぶ前に、国土交通省令で定める事項を書面を交付して説明しなければならないと定めています。その省令が施行規則第31条で、11項目が並んでいます。そのうちの第4号と第5号を並べます。
- 第4号 報酬の額並びにその支払の時期及び方法
- 第5号 前号に掲げる報酬に含まれていない管理業務に関する費用であって、賃貸住宅管理業者が通常必要とするもの
更新事務手数料は、管理報酬とは別に取られるお金です。つまり第5号の「報酬に含まれていない費用」に当たります。契約の前に、書面で説明されているはずの項目です。
締結時の書面には、この項目がありません
ここが分かれ目です。契約を結んだあとに交付される書面(同法第14条・施行規則第35条)の記載事項を見ると、第4号の「報酬の額並びにその支払の時期及び方法」は入っていますが、第31条第5号にあたる「報酬に含まれていない費用」は入っていません。
法律の作りとして、こうなっています。
- 契約前の説明書面(13条書面) 報酬 + 報酬に含まれない費用
- 契約時の書面(14条書面) 報酬
だから、手元の管理委託契約書をいくらめくっても更新事務手数料が出てこないことがあります。書いていないのは、管理会社が隠したからではなく、そもそも書けと定められているのが別の紙だからです。探すなら、契約前に受け取って、印鑑を押して控えをもらったはずの説明書面のほうです。
国の標準契約書は、更新手数料を「大家が負担する費用」の側に置いています
国土交通省の「賃貸住宅標準管理受託契約書」を開くと、第4条が管理報酬、第5条が管理業務に要する費用です。第5条はこう書いています。
「甲は、前条の報酬のほか、頭書(5)の記載に従い、乙が管理業務を実施するのに伴い必要となる費用を負担するものとする」
甲が大家さん、乙が管理会社です。そして、この頭書(5)の書き方を説明したコメント欄に、はっきり例示があります。
「管理報酬のほか、空室管理時の水道光熱費や更新手数料など乙が管理業務を実施するのに伴い必要となる費用を記入してください」(出典:国土交通省「賃貸住宅標準管理受託契約書」・2026年8月30日確認)
国の様式は、更新手数料を大家さんが負担する費用の例として名指ししています。取ってはいけない費目ではありません。ただし、頭書(5)の欄に金額を書き込んでおく前提で作られています。欄が空いていれば、根拠になる記載がないまま請求されていることになります。
ついでに確認したいのが、第14条のただし書きです
同じ標準契約書の第14条第1項は、管理会社に代理権を与える業務を6つ挙げています。第4号が「賃貸借契約の更新」です。ただし、条文にはこう続きます。
「乙は、第四号から第六号までに掲げる業務を実施する場合には、その内容について事前に甲と協議し、承諾を求めなければならない」
更新の代理は、渡しっぱなしにできる権限ではありません。標準契約書どおりなら、更新の中身は事前に大家さんへ相談が来ます。相談なしで更新が終わり、手数料だけが明細に載っているなら、その部分は契約書の形と合っていません。送金明細の読み方は送金明細書から引かれている5つの項目にまとめています。

手元で確かめる順番
- 契約前の説明書面(13条書面)を探す。報酬とは別に「通常必要とする費用」の欄があるはずです。更新事務手数料の記載と金額を見ます
- 管理委託契約書の頭書と、費用の条項を見る。標準契約書の形なら頭書(5)です。空欄なら、次の更新の前に埋めてもらいます
- 「誰の負担か」を確認する。大家さんから取り、入居者からも同じ名目で取っていないか。入居者の負担分は、賃貸借契約書に定めがあって初めて発生します
- 更新の連絡が来ているか。標準契約書どおりなら、更新の実施前に協議と承諾があります
- 登録業者かどうかを見る。国土交通省の賃貸住宅管理業者登録で検索できます。登録していない相手には、そもそも13条の説明義務がかかりません
金額そのものについて
更新事務手数料の額は、法律で上限が決まっていないので、地域と会社によって幅があります。「相場だから」で判断せず、自分の契約でいくらと書かれているかを先に見るほうが早く終わります。書いていない金額は、相場と比べる前に、根拠を聞くべきものです。
逆に、書面にきちんと書いてあり、更新のたびに協議の連絡が来ているなら、額の多少は判断の問題です。管理手数料の全体像は管理手数料に含まれるもの・含まれないもの、料率の見方は管理手数料5%は高いのかで扱いました。
まとめ
- 宅建業法第46条の報酬の上限は「代理又は媒介」にかかるもの。更新事務手数料には及びません
- 賃貸住宅管理業法第2条第2項の「管理業務」にも、更新事務は入っていません
- それでも施行規則第31条第5号により、報酬に含まれない費用は契約前に書面で説明する義務があります
- 締結時の書面(施行規則第35条)には、この項目がありません。探す紙が違います
- 国の標準管理受託契約書は、更新手数料を頭書(5)「管理業務に要する費用」の例として挙げています
- 更新の代理は、標準契約書第14条第1項ただし書きにより、事前の協議と承諾が要ります
更新は2年に一度しか来ません。だからこそ、次の更新通知が届いたときに書面を1回探しておくと、そのあと10年分の判断が楽になります。
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