学生向けと社会人向けで大家が変える3か所|18歳は2022年4月から単独で契約できます
結論からお伝えすると、学生向けと社会人向けで変えるのは設備や間取りではなく、契約の相手・住所の押さえ方・特約の効き方の3か所です。募集図面は同じままでも、この3か所を切り替えていないと、決まったあとの手間だけが増えていきます。
3月に届いた入居申込書を並べていくと、勤務先の欄が空白のまま、その下に大学名と学年だけが書かれた紙が混ざります。緊急連絡先は実家の固定電話。住民票の住所も実家のまま。この1枚から、社会人の申込とは違う手順が3つ立ち上がります。

1か所目|契約の相手は「18歳」で線が動いた
民法4条は「年齢十八歳をもって、成年とする」と定めています。ここは2022年4月1日に動いた場所です。法令検索で時点を指定して条文を取り直すと、2022年3月31日時点の4条は「年齢二十歳をもって、成年とする」で、翌4月1日から「十八歳」に変わっています(出典:e-Gov法令検索・民法/2026年9月4日時点)。
あわせて読むのは5条です。1項が「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない」、2項が「前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる」。つまり同意がないことを理由に賃貸借契約を取り消される相手は、18歳未満だけになりました。
- 大学1年生・専門学校1年生は、多くが18歳以上。本人だけで契約が成立します
- 高等専門学校や高等学校に在学中で、18歳になっていない人が借りるときだけ、5条の話が残ります
- 「学生だから親の同意書」は、法律が求めているものではなく、実務の慣行です
慣行を使うのは構いません。ただ、何のために使っているのかは分けて考える必要があります。支払いを担保したいのなら保証の設計の話であり、取消しを防ぎたいのなら18歳以上の相手には出番がありません。保証の設計そのものは、連帯保証人の保証が切れる3つの場面|極度額を書いていない契約は無効ですに整理しています。
親を契約者にすると、何が変わるのか?
借主が親、実際に住むのが子という形は、賃貸の現場ではよく使われます。借主の家族が住むこと自体は通常の使用の範囲で、転貸には当たりません。ただし借主が現地にいないため、次のものが全部実家を経由します。
- 設備が壊れたときの連絡と、工事日程の返事
- 室内に入る工事の立会い
- 更新の書面と、その署名
本人を借主にすれば連絡は早くなりますが、支払いは保証で受けることになります。どちらが良いという話ではなく、連絡の速さと支払いの担保のどちらを取るかを、募集の前に決めておくという話です。
2か所目|住所は「移してもらう」ところまで決める
住民基本台帳法22条1項は「転入をした者は、転入をした日から十四日以内に」届け出なければならないと定め、届出事項として氏名・住所・転入をした年月日・従前の住所・世帯主との続柄などを並べています。2項では、住所の異動に関する文書を添えて届け出ることも求めています。
これは入居者本人の義務で、大家が代わりに出すことはできません。学生の入居では、実家に住民票を残したまま暮らす例があります。本人にとっては生活が変わらなくても、貸す側では効いてきます。契約書に書いた住所と、実際に住んでいる場所が違う状態になるからです。
同じ法律には、貸す側から見て使える条文もあります。12条の3第1項は、次に掲げる者から住民票の写し(基礎証明事項のみが表示されたもの)が必要である旨の申出があり、市町村長が「当該申出を相当と認めるとき」は交付することができる、としています。
- 第1号「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者」
- 第2号「国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある者」
- 第3号「前二号に掲げる者のほか、住民票の記載事項を利用する正当な理由がある者」
同条3項は、本人に代わって申し出られる「特定事務受任者」を弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士に限定し、4項では申出のときに明らかにする事項(申出者の氏名と住所、申出の対象とする者の氏名と住所など)を定めています。
ここから言えるのは2つです。大家は住民票の第三者請求ができる立場になりうる。ただし出るかどうかは市町村長が「相当と認めるとき」の判断であって、申し出れば必ず取れるものではない。個別の可否と必要書類は、物件所在地の市区町村の窓口で確認してください。
そしてもう1つ。学生が住民票を移していなければ、その市に取れる住民票がそもそも存在しません。鍵を渡す条件として住民票の異動を並べておくかどうかは、学生向けと社会人向けで判断が変わるところです。申込時に受け取る書類の扱いは、入居申込書と身分証のコピーはいつまで持てるのか|大家も個人情報取扱事業者ですにまとめています。
社会人の申込では、2か所目はどう変わるのか?
勤務先が書かれています。勤務先は住民票のような公的な記録ではありませんが、連絡が取れる相手が2つになります。代わりに入ってくるのが転勤です。学生の「4年で出る」と、社会人の「いつ出るか分からない」は、募集条件の期間の設計に直接効いてきます。入居者層をどこに置くかという判断そのものは、築古アパートは誰に貸すか|オーナーが入居者層を決めてから募集する順番で先に整理しておくと迷いません。

3か所目|法人が借主になると、特約の効き方が変わる
ここがいちばん見落とされます。消費者契約法2条1項は「消費者」を個人と定義し、かっこ書きで「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く」と書いています。2項の「事業者」は「法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人」。3項で「消費者契約」は消費者と事業者との間で締結される契約とされています。
この定義を賃貸に当てはめると、次のようになります。
- 賃貸経営をしている個人の大家は、2項の後半に当たり事業者の側です
- 入居者が個人なら、その契約は消費者契約です
- 社宅として法人が借主になる契約は、借主が法人なので消費者契約ではありません
効いてくるのは10条です。「消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする」。この無効の主張は、消費者契約でなければ出てきません。学生本人や社会人本人を借主にすれば10条の枠の中、法人契約なら枠の外という差が生まれます。
ただし、個別の条項が有効か無効かは事案ごとの判断で、裁判例が積み上がっている領域です。原状回復の負担や違約金の条項を作るときは、一般的には弁護士に条文を見てもらうのが安全です。ここでお伝えできるのは、借主が個人か法人かで、同じ特約の危うさが変わるという枠組みまでです。
3か所を紙の上に落とす
やることは、募集図面の作り直しではありません。申込を受けたあとに使う書式を、2通りに分けておくだけです。
- 契約者を誰にするか。18歳以上なら本人でも成立する、という前提で選ぶ
- 住民票の異動を、鍵の引渡しの条件に並べるか。連絡が実家を回る形を許すかどうかと合わせて決める
- 借主が法人か個人かで、特約のひな型を分ける。法人契約の側では10条を前提にしない
学生向けを厚くするなら、3月に同時退去が来ることも同じ表に書き込んでおきます。審査の基準そのものをどこまで動かすかは、大家が入居審査をどこまで厳しくするか|空室が延びる基準と、緩めてはいけない一線と並べて考えると決めやすくなります。
まとめ
- 民法4条は2022年4月1日から「年齢十八歳をもって、成年とする」。5条2項の取消しが残るのは18歳未満だけ
- 住民基本台帳法22条の転入届は入居者の義務。12条の3第1項1号で大家も住民票の第三者請求ができるが、出るかどうかは市町村長の判断
- 消費者契約法2条1項・2項・3項の定義から、法人が借主の社宅契約は消費者契約ではなく、10条の無効の主張が出てこない
手元の入居申込書を開いて、勤務先の欄が空白の申込が何件あるかを数えてください。その件数が、上の3か所を切り替えなければならない件数です。
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