ファミリー向けの部屋で見られている場所|大家が先に用意する紙は就学と車庫の2枚です
結論からお伝えすると、ファミリー向けの部屋でいちばん見られているのは、収納や間取りではありません。子どもがどの学校に入るのかと、車をどこに置くのかです。そしてどちらも、大家の側が先に用意できる紙があります。就学の指定に関する手続きと、保管場所の使用承諾です。
1月の下旬、市の教育委員会から入学期日の通知が各家庭に届きます。そこには入る学校が書かれています。この紙が届いたあとに引っ越しを決める家庭と、届く前に決める家庭では、動き方がまったく違います。ファミリー向けの募集は、この1枚の到着時期から逆算するものです。

学校の指定は、住所で自動的に決まる
学校教育法施行令5条1項は、市町村の教育委員会は就学予定者の保護者に対し、「翌学年の初めから二月前までに」小学校・中学校・義務教育学校の入学期日を通知しなければならないと定めています。4月からの入学なら、1月末までに届くということです(出典:e-Gov法令検索・学校教育法施行令/2026年9月4日時点)。
同条2項に、実務でよく取り違えられる条件が書かれています。
「当該市町村の設置する小学校及び義務教育学校の数の合計数が二以上である場合又は(略)中学校及び義務教育学校の数の合計数が二以上である場合においては、前項の通知において当該就学予定者の就学すべき小学校、中学校又は義務教育学校を指定しなければならない」
つまり「指定」があるのは、その市町村に学校が2つ以上あるときだけです。小学校が1校しかない市町村では、指定という手続き自体が発生しません。「学区」という言葉が全国どこでも同じ意味で通じるわけではない、ということです。
学区が違うと、その物件は選ばれないのか?
そうとは限りません。同施行令には、指定を動かす条文が2本置かれています。
- 8条(指定校の変更)|市町村の教育委員会は、5条2項の場合において「相当と認めるときは、保護者の申立てにより、その指定した小学校、中学校又は義務教育学校を変更することができる」
- 9条(区域外就学)|住所地の市町村以外の学校に通わせようとする場合、保護者はその学校の教育委員会等の「承諾を証する書面を添え」、住所地の市町村の教育委員会に届け出なければならない。9条2項では、承諾を与える側があらかじめ住所地の教育委員会に協議するとされています
8条の「相当と認めるとき」の中身は、条文には書かれていません。市町村ごとの基準です。兄姉が在学している、通学路の安全上の理由がある、部活動の関係、といった項目を並べている自治体があります。そして5条3項は「前二項の規定は、第九条第一項又は第十七条の届出のあつた就学予定者については、適用しない」と書いていて、区域外就学の届出があった子には、そもそも指定の通知が出ません。
ここから大家の側の動きが決まります。「うちは学区が弱い」で終わらせず、その市町村の指定校変更の基準を1回読んでおく。変更が通る項目に当てはまる家庭なら、学区は決め手から外れます。個別の可否は、必ず物件所在地の市町村の教育委員会に確認してください。

車の置き場は、大家が紙を出す側にいる
2台目の駐車場を探すのは、ファミリーの内見で必ず出る話です。ここは大家が書類を出す立場になります。
自動車の保管場所の確保等に関する法律(車庫法)3条は「自動車の保有者は、道路上の場所以外の場所において、当該自動車の保管場所(略)を確保しなければならない」と定めています。その要件は施行令1条で3つに分かれています。
- 使用の本拠の位置との間の距離が2キロメートルを超えないものであること
- 道路から支障なく出入させ、かつ、その全体を収容することができるものであること
- 保有者が当該自動車の保管場所として使用する権原を有するものであること
3番目が大家の出番です。入居者が自分の土地ではない場所を車庫にするとき、権原を示す書面(保管場所使用承諾証明書)を出すのは、その土地や駐車場を貸している側です。募集の段階でこの様式を用意してあるかどうかで、契約から登録までの日数が変わります。
普通車と軽自動車で、要る手続きが違う
ここは条文の作りがかなり変わっています。車庫法4条1項は、登録などの処分を受けようとする者に、警察署長が交付する保管場所を証する書面(いわゆる車庫証明)の提出を求めています。5条は軽自動車について、証明ではなく「届出」を求めています。
そして法附則2項が、この4条と5条を「政令で定める地域以外の地域に使用の本拠の位置が在る自動車の保有者については、適用しない」としています。その地域は施行令附則2項で、次のように分かれています。
- 普通車(法4条1項の処分に係る自動車)|特別区並びに市、町及び別表第一に掲げる村の区域
- 軽自動車|特別区及び別表第二に掲げる市の区域
普通車は市と町なら全域が対象です。一方で軽自動車の届出は、別表第二に名前が載っている市だけです。この別表を開くと、条文の作りが見えてきます。
施行令附則2項には「その区域は、平成十二年六月一日における区域とする」と書かれています。そのため別表第二の埼玉県の欄には、川越市・熊谷市・川口市・浦和市・大宮市・所沢市・岩槻市・春日部市といった市名が並んでいます。浦和市・大宮市・与野市は2001年5月1日に合併してさいたま市になり、岩槻市は2005年4月1日に編入されました。条文に「さいたま市」という文字は1度も出てきませんが、旧4市の区域なので軽自動車も届出の対象です。
逆に、同じ埼玉県内でも杉戸町は「町」なので普通車の車庫証明は必要ですが、別表第二に載っていないため軽自動車の届出は要りません。同じ県内で、同じ軽自動車でも手続きが分かれます。なお、軽自動車の本拠を届出が必要な地域へ移して保管場所も変えた場合は、法附則6項1号により保管場所の位置を変更した日から15日以内の届出とされています。個別の必要書類と様式は、保管場所を管轄する警察署に確認してください。
もう1つ、条文の外にある置き場がある
バイクです。車庫法2条1号は「自動車」の定義から「二輪の小型自動車、二輪の軽自動車及び二輪の小型特殊自動車を除く」と明記しています。バイクは車庫法の対象外で、保管場所を確保する義務も、証明も届出もありません。
だからこそ、置き場は契約書で決めるしかありません。共用部にバイクや自転車が並んでいく物件は、法令が助けてくれないところで先に決めていなかった物件です。無断駐車や放置自転車をどう止めるかは、アパートの無断駐車と放置自転車をどう止めるか|築古アパートのオーナーが自分で動かす前に踏む3つの段に整理しています。
2枚の紙を、募集の前に用意しておく
ファミリー向けで先に手元に置くのは、次の2つです。
- 物件所在地の指定校と、その市町村の指定校変更の基準。市のウェブサイトに掲載されている自治体が多く、印刷して1枚で足ります
- 保管場所使用承諾証明書の様式。駐車場の位置と、使用の本拠からの距離が2キロメートル以内であることを示せる形にしておきます
この2枚があると、内見の場で答えが返せます。逆に「調べておきます」と持ち帰ると、その家庭は次の物件を見に行きます。単身向けとファミリー向けのどちらに寄せるかという判断はさいたま市で単身向けか、ファミリー向けか、地域ごとの性格の違いは大宮・浦和・岩槻|賃貸経営の違いにまとめてあります。間取りで客層が変わるところは築古の1Kと2DK、どちらが埋まりやすいか|間取りで変わる客層で扱っています。
まとめ
- 入学期日の通知は翌学年の初めから2か月前まで(学校教育法施行令5条1項)。4月入学なら1月末までに届く
- 学校の「指定」があるのは、その市町村に学校が2つ以上あるときだけ(同5条2項)。8条の指定校変更と9条の区域外就学で、指定は動く
- 保管場所の要件は本拠から2キロメートル以内・道路から出入りできる・使用する権原がある(車庫法施行令1条)。3番目の権原を示す書面を出すのは大家
- 軽自動車の届出が要るのは別表第二の市だけで、その区域は平成12年6月1日で固定。条文に「さいたま市」は出てこないが旧4市の区域として対象、杉戸町は対象外
- バイクは車庫法2条1号の定義から外れている。置き場は契約書で決めるしかない
お持ちの物件の住所で、市のウェブサイトの通学区域の一覧を1回だけ開いてください。指定校の名前と、指定校変更の基準のページを印刷しておけば、次の内見でそのまま渡せます。
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