1階が決まらないとき大家が先に見る場所|空き巣の侵入口は窓より玄関です
結論からお伝えすると、1階が決まらないときに先に手を入れるのは、窓ではなく玄関です。警察庁が2026年8月に公表した令和7年の統計では、3階建て以下の共同住宅で起きた空き巣2,095件のうち、侵入口は窓が776件、玄関などの表出入口が1,031件でした。一戸建てとは逆の並びになっています。値下げを検討する前に、この事実と、床下の構造と、1階にしかない条件の3つを並べてください。
築32年、木造2階建て6戸のアパート。1階の角部屋が3か月空いています。2階の同じ間取りは退去から18日で決まりました。募集条件は同じ、家賃も同じ。仲介会社に理由を聞くと「1階はやっぱり敬遠されますね」と返ってきます。内見は月に2件入っていて、どちらも15分ほどで帰りました。感想は伝わってきていません。

「1階は危ない」を、数字で分けます
警察庁「令和7年の刑法犯に関する統計資料」(令和8年8月公表)に、住宅形態別の空き巣の認知件数が載っています。10万世帯当たりに直した数字がこちらです(令和7年・空き巣)。
- 一戸建住宅 27.1件
- 3階建て以下の共同住宅 17.8件
- 4階建て以上の共同住宅 8.3件
木造アパートを含む3階建て以下は、4階建て以上のおよそ2倍です。ここまでは「アパートは狙われやすい」という感覚と合います。ただし一戸建てはさらにその1.5倍で、いちばん多い。「共同住宅だから危ない」という順番ではありません。
もう1つ、同じ表に世帯構成別の数字があります。3階建て以下の共同住宅で最も高いのは30歳未満の単独世帯で34.4件。全体の17.8件のほぼ2倍です。若い単身者が住む小規模アパートに集中している、という読み方になります。学生や新社会人を客層にしている物件では、ここを避けて通れません。
侵入口は、一戸建てとアパートで逆になります
同じ資料の「発生場所・侵入口・侵入手段別」の表(令和7年)を、空き巣だけ取り出します。
- 一戸建住宅(8,214件):窓 5,006件/表出入口 1,340件
- 3階建て以下の共同住宅(2,095件):表出入口 1,031件/窓 776件
- 4階建て以上の共同住宅(1,266件):表出入口 822件/窓 290件
一戸建ては窓が6割強を占めますが、共同住宅は玄関のほうが多い。ここが取り違えられているところです。「1階だから窓を割られる」という話が先に立ちますが、3階建て以下のアパートでは、窓は2番目です。
さらに、表出入口1,031件の手口の内訳を見ると、こうなっています。
- 無締り 503件
- 合い鍵 304件
- その他の施錠開け 52件
- ドア錠破り 28件
- サムターン回し 4件
- その他 86件
- 不明 54件
玄関からの侵入でガラス破りは0件、ドア錠を壊されたのは28件です。上位2つ、鍵をかけていなかったものと合い鍵で、玄関からの侵入の約8割を占めています。窓776件のほうは、ガラス破り429件・無締り313件でした。
面格子を付ければ決まるようになりますか?
面格子は窓のガラス破りには効きますが、上で見たとおり、3階建て以下のアパートでいちばん件数が多いのは玄関です。順番としては、玄関の鍵と、その鍵が何本出ているかを先に片付けるほうが、同じお金でも効きます。面格子を付けるなら、その後で、道路や隣地から死角になる窓に絞るのが現実的です。
なお、内見に来た人に「この地域は空き巣が少ないですよ」と口で伝えるのは避けてください。犯罪の発生状況は物件ごとに判定できるものではありません。伝えるなら「鍵を今年交換した」「玄関の鍵はこの型」という、こちらが実際にやったことだけにします。
合い鍵304件が示していること
合い鍵での侵入が、玄関からの侵入の3割近くを占めています。前の入居者が作った鍵、工事のときに預けた鍵、管理会社と大家の双方が持っているスペア。1階かどうかに関係なく、本数を数えていない物件は少なくありません。大家が持つ鍵の本数と記録の残し方は大家が持つ鍵は何本か|スペアの記録と、自分の物件に入れない理由に整理しています。
費用の目安も置いておきます。一般的なシリンダーの交換であれば1万5,000円〜2万円ほどが目安です(計画して替えた場合。夜間や緊急の対応になると出張費や割増が乗ります)。ディンプルキーや上下2か所に錠が付いているタイプは、これより高くなります。空室のうちに替えるなら、退去立会いのあと、クリーニングの前に入れておくと工程が詰まりません。

1階のもう1つの不安は、床下にあります
内見で口に出されないもう1つの不安が、湿気とカビです。ここは感覚の話ではなく、法律に構造が書かれています。
建築基準法施行令22条は、最下階の居室の床が木造である場合について、次の2つを定めています。
- 床の高さは、直下の地面からその床の上面まで45センチメートル以上とすること
- 外壁の床下部分には、壁の長さ5メートル以下ごとに、面積300平方センチメートル以上の換気孔を設け、これにねずみの侵入を防ぐための設備をすること
ただし書きがあり、床下をコンクリート、たたきその他これらに類する材料で覆う場合と、大臣の認定を受けた床構造の場合は、この2つは適用されません。つまり、床下が土のままの木造アパートには、45センチと換気孔の定めがかかっているという読み方になります。
大家が今日確認できるのは、この換気孔が塞がっていないかです。実際に多いのは次の3つです。
- エアコンの室外機を基礎のすぐ前に置いて、換気孔の前をふさいでいる
- 入居者の自転車、物置、プランターが並んでいる
- 植栽が伸びて、基礎まわりに土や落ち葉が溜まっている
換気孔は5メートル以下ごとに1か所ですから、6戸のアパートなら外周に何か所も並んでいます。そのうち2つ3つが塞がっているだけで、床下の空気の流れは変わります。建物ごとに何センチ確保されているか、この規定が実際にかかる建物かどうかの判定は、建築士か特定行政庁に確認してください。この記事では判定をしません。
1階にしかない条件を、募集図面に文字で書く
ここまでは弱みの手当てです。ここからは、1階だけが持っている条件です。募集図面の備考欄が空いているなら、次のうち事実に合うものを書いてください。
- 下の階がない。足音や物を落とした音で下から苦情が来ることがありません。小さな子どものいる世帯、在宅勤務で日中に動く人には、これが決め手になります
- 搬入・搬出が階段を使わない。冷蔵庫や洗濯機の搬入費、引越しの追加料金が変わります
- 専用庭や物置があるなら、面積と使える範囲を書く。使える範囲は契約書の記載しだいなので、あいまいなまま「庭付き」とだけ書かないこと
- 地震のときに屋外へ出るまでが短い
いずれも「1階だから」ではなく「この部屋だから」の書き方にします。備考欄の埋め方そのものは募集図面(マイソク)で反響が変わる|書き換えるべき5か所にまとめています。写真の並びで詰まっているなら募集写真は「実物より明るく」でいい|やっていい撮り方と、不当表示になる加工も合わせてご覧ください。
それでも家賃を下げるしかない場面はありますか?
あります。ここまでの手当てをしても、同じ建物の2階と同じ家賃のままでは、選ぶ理由が消えてしまう物件はあります。ただし下げる前に初期費用の調整で届く距離かどうかを見てください。判断の順番は家賃を下げる前に試すこと|初期費用の調整という手と空室が3か月埋まらない。募集条件のどこを動かすかに書いています。
今日やることを1つだけ選ぶなら
建物の外周を1周して、床下の換気孔の前に物が置かれていないかを数えてください。室外機、自転車、プランター、積み上げた土。塞がっている数が分かれば、それが今日動かせる分です。鍵の本数を数えるのはその次で構いません。どちらもお金がかからず、内見の前に終わります。
出典:警察庁「令和7年の刑法犯に関する統計資料」(令和8年8月)/建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第22条(e-Gov法令検索・2026年9月5日時点)
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