募集写真は「実物より明るく」でいい|やっていい撮り方と、不当表示になる加工

同じ部屋を2回撮ります。1回目は夕方、室内灯だけをつけてカーテンを閉めたまま。2回目は午前10時、カーテンを全開にして、照明も全部点けた状態。この2枚をポータルサイトのサムネイルに並べると、ほとんどの人が別の部屋だと思います。間取りも設備も家賃も、1文字も変えていないのにです。

結論からお伝えすると、募集写真は「実物より明るく」見えて構いません。ただしそれは撮り方で明るくする場合の話です。写真を加工して、部屋の広さ・形・構造を実際より良く見せたり、ない設備があるように見せたりすると、不動産の広告ルール上の問題になります。境目は「明るさ」ではなく「事実と違うかどうか」にあります。

なぜ明るさだけで反響が動くのか

入居希望者が最初に見るのは、一覧に並んだ小さなサムネイルです。ここで指が止まらなければ、家賃も設備も読まれません。縮小された画像で伝わる情報は「明るいか、暗いか」「広そうか、狭そうか」の実質2つしかありません。

暗い写真は、影で床と壁の境目がつぶれるので、部屋が狭く見えます。明るい写真は同じ面積でも奥行きが出ます。撮り直しで反響が変わる理由の大部分はこの一点です。写真全般の考え方は写真を撮り直すだけで反響が増える理由で整理しました。この記事は「明るさ」だけに絞ります。

費用をかけずに明るく撮る5点。電気を全部点ける、カーテンを全開にする、午前中に撮る、雨と曇りの日は撮らない、暗い部分をタップして露出を上げる。

お金をかけずに明るく撮る5つのこと

照明機材もカメラの買い替えも要りません。空室の鍵を開けて中に入ったら、撮影の前に次の5つを済ませます。

  1. 電気を全部点ける。玄関・洗面・浴室・トイレを含め、点かない電球があればその場で交換する。1個数百円です
  2. カーテンとブラインドを全開にする。レースも開ける。窓が汚れていれば拭く。ここが一番効きます
  3. 撮る時間を午前中にする。南向きなら10時前後、北向きの部屋ほど日中の明るい時間に寄せる
  4. 雨と曇りの日は撮らない。外観写真は特に差が出ます。晴れの日まで待つ
  5. スマートフォンなら、画面の暗い部分をタップして露出を上げる。窓に露出が合うと室内が真っ黒に落ちます

ここまでは全部「撮り方」です。電球代のほかは1円もかけずに、写真の印象が変わります。

どこからが「事実と違う」になるのか

不動産の広告には、業界の自主ルールである不動産の表示に関する公正競争規約があります。写真については、施行規則の表示基準に「宅地又は建物の写真又は動画は、取引するものを表示すること」とあります。建築工事の完了前などで例外が認められる場合もありますが、その場合は他の建物である旨を写真に接する位置に明示することとされており、すでに建っている賃貸住宅の募集では使えないと考えるのが自然です。

そして同じ規約は、次のような表示を不当表示として禁じています。

「写真、動画、コンピュータグラフィックス、見取図、完成図若しくは完成予想図による表示であって、物件の規模、形状、構造等について、事実に相違する表示又は実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示

禁じられているのは規模・形状・構造を偽ることです。「明るさ」という言葉は出てきません。照明を点けて、カーテンを開けて、晴れた日に撮る。これで部屋の広さも形も構造も変わりません。実物より明るく写ることそのものは、問題になりにくいと考えられます。

写真の明るさを画像編集で補正するのは不当表示になりますか?

一般的には、暗く写ったものを見た目に近づける程度の補正は、広さや形を変えるものではありません。問題になりやすいのは、補正を通り越して写っているものが変わってしまう場合です。明るさを極端に上げた結果、壁のシミやカビ、床の傷が消えているなら、それは「明るくした」ではなく「欠点を消した」に近づきます。

迷う写真は、実際にその部屋に立ったときの印象と並べて見比べるのが一番早い方法です。現地で見た人が「写真と違う」と感じるなら、入居につながらないうえに、掲載した仲介会社にも迷惑がかかります。個別の表現がルールに触れるかどうかは、地域の不動産公正取引協議会や、掲載している宅地建物取引業者にご確認ください。

やっていいのは撮り方で明るくすること(照明・カーテン・晴れた午前中・見た目に近づける補正)。やってはいけないのは事実を変えること(別の部屋の写真・今はない設備・超広角・古い写真の使い回し)。

やってはいけない4つ

大家さんが自分で写真を用意するときに、悪気なくやってしまいがちなものを挙げます。

  • 別の部屋の写真を使う。「同じ間取りの201号室のほうがきれいだから」は通りません
  • 今はない設備が写っている写真を使う。撤去済みのエアコン、前の入居者が付けた照明。撮った当時は本当でも、いま無いなら誤認のもとです
  • 超広角で撮って、実際より広く見せる。部屋の隅から撮るのは構いませんが、6畳が10畳に見える1枚を先頭に置くのは、規模について誤認させる表示に近づきます
  • 5年前の写真を使い回す。その間に入れた設備が写らないので損ですし、現況とも違います

この4つは「明るさ」の問題ではなく、事実が違うという一点で共通しています。逆に言えば、事実さえ動かさなければ、見栄えは遠慮なく良くしていいということです。

管理会社に撮り直しを頼むときの伝え方

撮っているのが管理会社や仲介会社の場合、「写真が暗いので何とかしてください」では担当者が何をすればいいか分かりません。いつ撮るか(晴れた日の午前中)/何を先にやるか(全室の電球を点けてカーテンを開けてから)/何枚か(玄関から順に10枚以上)/いつまでかの4点を指定します。電球代や手間について「かかった分は請求してください」と先に伝えておくと、話が早く進むことがあります。依頼の型は「空室なのに提案がない」管理会社への伝え方にまとめました。

それでも決まらないときは、写真の外を見る

ここまでやって反響が増えないなら、原因は写真ではありません。問い合わせは来るのに内見にならないなら図面の情報量、内見は来るが決まらないなら現地の状態です。前者は募集図面(マイソク)で反響が変わる|書き換えるべき5か所、後者は内見はあるのに決まらないときに見る場所が近い話です。家賃が近隣とずれていれば、どれだけ良い写真でも埋まりません。

まとめ

  • 募集写真は実物より明るく見えて構わない。境目は明るさではなく、事実と違うかどうか
  • 照明を全部点ける、カーテンを開ける、晴れた午前中に撮る。この3つで印象は変わり、費用はほぼゼロ
  • 規約が禁じているのは規模・形状・構造について事実と違う、または実際より優良と誤認させる表示
  • 別の部屋の写真、今はない設備、極端な広角、古い写真の使い回しは避ける
  • 個別の表現が問題になるかどうかは、不動産公正取引協議会や宅地建物取引業者に確認する

空室が長引けば、家賃1か月分がそのまま消えます。写真の撮り直しは、その中でいちばん安く、いちばん早く手を付けられる場所です。次の退去が出たら、鍵を返してもらったその日に、電気を全部点けて撮ってみてください。

※出典:不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」(写真・絵図の表示基準、第21条おとり広告の禁止、不当表示に該当する表示の例)。本記事は2026年8月7日時点の内容にもとづく一般的な整理です。

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