空室の光熱費は止めれば消えるのか|大家が止められるのはガスだけです

結論からお伝えすると、空室の光熱費は「止めれば消える」ものと「止めても残る」もの、そして「止めると別の損が出る」ものの3つに分かれます。3つの契約のうち、止めて基本料金がゼロになるのはガスだけです。電気と水道には、使わなくても払う形が最初から組み込まれています。

使用水量が0立方メートルでも、さいたま市の口径13ミリなら1か月979円(税込)の請求が立ちます。2か月検針なら1,958円。ここに下水道の基本使用料が乗ります。空室が4か月続けば、水道だけで4,000円近くが出ていく計算です。

空室で残る固定費を並べた図。ガスは止めれば0円、電気は最低月額料金が残り、水道の基本料金には8立方メートルが含まれる。下水道の基本使用料と共用部の電気も別に立つ。

止まるのはガスだけ。電気と水道は「使わなくても払う」形になっている

3つを並べると、性格がまるで違うことがわかります。

  • ガス:止めている間は基本料金がかからない。出張料や手続きの費用もかからない(出典:東京ガス「よくあるご質問」2025年7月4日更新)
  • 電気:契約を残せば基本料金がかかる。東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bなら、30アンペアで1か月935円25銭、20アンペアで623円50銭(税込)。使用量がゼロでも最低月額料金328円08銭は残る
  • 水道:さいたま市の一般用・口径13ミリで基本料金890円(税抜)。この中に1か月8立方メートルまでの水量が含まれている

電気の単価は東京電力エナジーパートナーの料金単価表(電灯)(2026年9月7日時点)、水道の単価はさいたま市「水道料金・下水道使用料の料金表・早見表」(2026年3月23日更新)によります。

水道の基本料金には、8立方メートルの水が最初から入っている

ここがいちばん誤解されている部分です。水道の基本料金は「回線を維持するための固定費」ではありません。さいたま市の料金表は、口径13ミリから25ミリの基本料金について「8立方メートルまで」と水量を明記しています。

つまり、1滴も使っていない空室でも、8立方メートル分の権利を買わされているということです。市の説明も「一般家庭用であれば基本水量は16立方メートルまでです(1か月であれば8立方メートル)」と書いています(出典:さいたま市「【終了しました】物価高騰対策支援として水道料金の基本料金を減額します」2026年8月1日更新)。

下水道使用料も同じ構造で、基本使用料が1か月666円(税抜)。汚水排水量が0でも、この基本使用料は立ちます。

電気を止めると、内見のときに何が起きるか

金額だけを見れば、電気は止めたほうが安く済みます。30アンペアで月935円25銭、3か月で2,805円。止めればゼロです。

ただし、電気が止まった部屋では次のことが同時に起きます。

  1. 照明が点かない。日没後の内見が受けられない。冬なら16時半で終わりです
  2. エアコンが試せない。動くかどうかを内見者にも自分にも確認できない
  3. 換気扇が回せない。閉め切った部屋のにおいが抜けない
  4. 工事の電源が取れない。職人が発電機を持ち込むか、仮設電源を引くことになる

募集の開始時期をどう置くかは、空室の募集開始はいつにするか|大家が見るのは退去日ではなく入居可能時期ですに整理しています。内見を受ける期間と、電気を止める期間は、別々に決めたほうが安全です。

短い空室で止めると、かえって高くつくことがあるのですか?

水道については、あります。さいたま市は使用開始・中止時の料金算定を次のように定めています(出典:さいたま市「水道使用開始時・中止時の料金算定方法」2026年4月20日更新)。

  • 使用日数が31日以上の場合、2月分として請求
  • 使用日数が31日未満の場合、1月分として請求
  • ただし、使用期間内に定例検針日が含まれる場合は、定例検針日を境に請求期間を区切るため、計2月分の請求になる

2週間で次の入居者が決まった部屋でも、いったん中止の届出を出せば、1月分は請求されます。定例検針日をまたいでいれば2月分です。「短いから止めておこう」が、そのまま得になるとは限りません。

ガスにも別の注意があります。東京ガスの一時停止は、案内文に「ガス契約が解約扱いとなります」「解約後1年間は『一般料金』以外の料金メニューへの再申込みができない場合があります」と書かれています。セット割を組んでいる物件では、割引が外れます。

止めた部屋で、いちばん先に切れるのは封水です

水を止めた空室で最初に起きるのは、排水口の水が蒸発して、下水管と部屋がつながることです。

この水を封水といいます。どれくらいの深さがあるかというと、法令が求めているのは5センチメートル以上10センチメートル以下です(阻集器を兼ねる排水トラップは5センチメートル以上)。建築基準法施行令129条の2の4第3項の委任を受けた、昭和50年建設省告示第1597号の第二・三・ニに書いてあります。

コップ半分ほどの水しかありません。夏場の空室なら、数週間で乾きます。同じ告示の第二・五・イは、通気管について「排水トラップの封水部に加わる排水管内の圧力と大気圧との差によつて排水トラップが破封しないように有効に設けること」と定めています。破封は、法令があらかじめ想定している現象です。止まった部屋では、圧力ではなく蒸発で同じことが起きます。

対策は、内見や巡回のたびに各排水口へコップ1杯の水を流すだけです。台所・洗面・浴室・洗濯機の排水口・トイレの5か所を回ります。水道を中止していると、この水を持ち込むところから始まります。

敷地内の水道管そのものの扱いはアパートに鉛の給水管が残っていないか|敷地内の水道管は大家の財産ですに、冬に向けた凍結の手当てはアパートの水道管の凍結対策は11月までに決まるにあります。

2026年8月の検針分から、さいたま市の水道基本料金は元に戻っています

2026年に入ってから、さいたま市は物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を使って、水道の基本料金を4か月分減額していました。口径13ミリで2か月あたり1,958円、口径20ミリで2,376円、口径25ミリで3,850円の減額です。

この措置は令和8年7月検針分をもって終了しました。手続きが不要だったぶん、終わったことにも気づきにくい形です。8月以降の検針で「上がった」と感じたなら、値上げではなく減額の終了です。

大家にもう1つ関係するのは、共同住宅用の一括検針を使っている物件です。市は減額のときに、所有者・管理会社へ「各戸入居者へご請求される金額から基本料金減額により減額される分を差し引いていただくなど、ご配慮ください」と求めていました。減額分を差し引いて請求していたなら、減額が終わった今、その差引きを止める作業が残っています。止め忘れると、入居者から取りすぎになります。

空室の光熱費を止める判断と残す判断を左右で比べた図。止めればガスは0円で電気も月935円浮くが、照明も換気扇も動かず封水が乾く。残せば夜の内見と工事の電源が使える。

都合の悪いことも書いておきます

  • ここに挙げた金額は、さいたま市・東京電力エナジーパートナー・東京ガスのものです。水道は市町村ごとに料金体系も基本水量も違います。電気とガスは契約している会社とプランで変わります
  • 止めるか残すかで、月に1,000円前後しか変わりません。空室1室あたりの金額としては小さい。判断を急ぐ論点ではありません
  • 共用部の電気は別契約です。階段灯や外灯は入居のあるなしにかかわらず動いており、ここで止められるものはありません
  • 電気を止めた期間に室内で不具合が進んでも、気づく手段がありません。換気扇が回らない部屋で結露やカビが出ても、次に開けるまでわかりません

空室が長引くと税金はどうなるのかについては、空室が続くと固定資産税は上がるのか|「6倍」が起きるのは空室ではないに分けて書いています。

今日やることを1つだけ選ぶなら

手元の水道の検針票を1枚出して、口径使用水量の欄を見てください。空室の月に使用水量が0または1立方メートルなのに基本料金が満額で立っているなら、それが「使わなくても払っている8立方メートル」です。そのうえで、次の空室が何か月になりそうかを見て、1か月未満なら止めない、3か月を超えそうなら止める、という線を自分の中で決めておくと、退去のたびに迷わずに済みます。

料金の体系と中止の手続きは市町村ごとに違うため、自分の物件がある自治体の水道局のページで、基本水量と中止時の算定方法を確認してください。

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