アパートに鉛の給水管が残っていないか|敷地内の水道管は大家の財産です

結論からお伝えすると、アパートの敷地内を通っている水道管は、水道局のものではなく大家さんの財産です。公道の下は水道事業者が計画的に取り替えますが、敷地に入ってから蛇口までは所有者の持ち物なので、鉛の管が残っていても勝手には替えてもらえません。さいたま市は「本工事は強制的な実施にはなりません。事前に所有者の同意が必要となります」と書いています。

退去して2か月空いた1階の部屋。内見の30分前に窓を開けに行って、ついでに台所の蛇口をひねる。最初の数秒、水が少し白い。空気だろうと思って、そのまま止めた——昭和63年以前に給水管を引いて、その後に修繕も改造もしていない建物なら、そこで一度立ち止まる価値があります。

鉛の給水管を疑う4つの条件を並べた図。昭和63年以前に給水管を引いた、メーターの前後をまだ見ていない、空室が長く水を流していない、水道局に聞いたことがない。

国が8月21日に、手引きの改定に着手しました

国土交通省は令和8年8月19日、「鉛製給水管の布設替えに関する手引き」の改定検討会を8月21日に開催すると発表しました。現行の手引きは平成24年3月のものです。14年ぶりに実務的な内容へ作り替えるという話で、背景の資料に載っている数字が、そのまま大家さんの物件の話になります。

  • 鉛製給水管は、近代水道の創設期から1980年代後半まで全国的に使われていた(管内に錆が発生せず、柔軟性に富むため)
  • 令和5年度末で、公道部・宅地部あわせて約192万件が残っている(延長約3,300km)
  • 件数は平成26年度の303万件から192万件へ減ったが、平成26年以降は減少ペースが鈍っている
  • 全国の水道事業者のうち、鉛製給水管が現在も残存しているのは35%(457事業者・令和5年度末時点)
  • その457のうち、布設替え計画を策定しているのは159事業者(約35%)にとどまる

国は令和8年1月30日に「鉛製給水管の解消に向けた対応方針」をまとめ、令和10年までに布設替え計画の策定率100%、年間15万件の解消を目標に掲げました。直近5年平均の解消件数は10.6万件なので、ペースを1.4倍にする目標です。(出典:国土交通省「鉛製給水管の解消に向けた対応方針」令和8年1月30日取りまとめ、および同「鉛製給水管の解消に向けた取組について」。残存件数・延長は令和5年度水道統計、計画の策定状況は令和5年度国土交通省調査。手引きの改定検討会は令和8年8月19日報道発表・同8月21日開催)

公道の下と、敷地の中で、話がまったく違います

国交省の資料は、給水管を公道部宅地部(メーター1次側・2次側)に分けています。この線引きが、大家さんにとっての分かれ目です。

さいたま市水道局は、令和8年1月30日の国の対応方針を受けて7月31日にページを更新し、こう書いています。

「本市水道局の施設である浄・配水場や配水管には鉛管は使用されておりませんが、昭和63年以前に施工され、以後、修繕、改造工事等を行っていないご家庭では、敷地内の水道メーター前後や公道上の配水管との分岐部に鉛給水管が使用されている場合があります」(さいたま市水道局「鉛給水管対策」2026年7月31日更新)

水道局は無料で全部やってくれますか

そこがいちばん誤解されるところです。さいたま市は、取替工事の費用負担をこう分けています。

  • 土、コンクリートのみの掘削および復旧であれば、水道局の費用で施工できる
  • タイル、植栽など個人の構造物の取り壊し・移設が必要な場合は、事前に所有者に対応をお願いする

アパートの前面をタイル貼りにしていたり、メーターボックスの上に植栽を並べていたりすると、そこは大家さんの持ち出しになります。「無料でやってくれる工事」ではなく「掘り返し方によっては無料になる工事」です。

金額を1つの数字で書くことはできません。掘削の長さと、上に何が載っているかで変わるためです。国の対応方針によれば、鉛製給水管が残っている457事業者のうち布設替え計画を策定できているのは159事業者(約35%)にとどまり、国は水道法に基づく立入検査で計画策定の指導を強化するとしています。費用の見通しを立てること自体が、水道事業者の側でも進んでいないのが現状です。見積りは、市の指定給水装置工事事業者に敷地の状況を見てもらってから出てきます。

公道部と宅地部で費用の持ち方を比べた図。公道部は水道局が計画的に替え同意も費用も不要。宅地部は所有者の財産で事前の同意が必要、土とコンクリートなら市の費用、タイルや植栽は所有者の負担。

空室が長い部屋こそ、大家さんの話です

埼玉県は「鉛製給水管について」のページ(2026年4月1日掲載)で、こう案内しています。

「水道水は飲み水としての水質基準を満たしていますが、鉛製給水管を使用している御家庭で、長時間、水を使用しなかった場合には微量の鉛が溶け出すことがあります」「朝一番や旅行などでしばらく水を使わなかった場合には、最初の水(バケツ一杯程度)を散水などの飲用以外の用途に使用されることをお勧めします

ここで一度、賃貸に翻訳します。「旅行でしばらく水を使わなかった」より長く水が止まっている場所が、大家さんの物件にはあります。空室です。退去から次の入居まで1か月、2か月、繁忙期を外せば半年。その間、その部屋の給水管の中の水は動いていません。

やることは、難しくありません。

  1. 内見の前に、台所と洗面の水を1〜2分出しておく。鉛の話を抜きにしても、封水が切れた排水口のにおい対策になります
  2. 入居の前日に、もう一度通水する。入居者が最初にひねる水を、滞留した水にしない
  3. 入居のしおりに「使い始めの一杯は飲用以外に」と書いておく。鉛管の有無にかかわらず、長期不在後は塩素濃度が下がっています

なお、水質基準そのものは平成15年4月1日に1リットルあたり0.05ミリグラム以下から0.01ミリグラム以下へ強化されています(令和6年4月1日から、水質・衛生管理は厚生労働省から環境省に移管)。蛇口に届く水が基準に適合していることと、長時間ためた水がどうかは別の話だと、行政が自分で書いている、ということです。

自分の物件に鉛管があるか、どう調べますか

  1. 建物と給水管の年式を確認する。さいたま市の目安は「昭和63年以前に施工し、以後に修繕・改造工事等をしていない」。建物が新しくても、引込みが古いままのことがあります
  2. 水道メーターの前後の管を見る。国の対応方針も、対策の1つに「家屋の建替え時等の鉛管更新」を挙げています。メーターボックスの蓋を開けて、管の色と質感を写真に撮っておく
  3. 市町村の水道部(課)に聞く。埼玉県は「鉛製給水管の使用の有無については、お住まいの市町村の水道部(課)にご確認ください」としています。さいたま市は水道局業務部給水装置課(水道メーター係 048-788-2749)です
  4. 建替え・大規模なリフォームの予定があれば、そこに乗せる。さいたま市は「家屋の建替えやリフォームの際には、水道メーターの前後管をご確認いただき、工事に併せて鉛給水管の解消をご検討ください」と書いています

物件の書類がそろっていない方は 収益物件を買った大家が最初に集める7つの書類 を先に見てください。設備が壊れたときの負担の分かれ目は 入居中に設備が壊れたときの修繕費 にまとめています。

都合の悪いことも書いておきます

  • 健康影響を、この記事で判定することはできません。国交省の資料は「鉛による慢性毒性は広く知られており」として水質基準を段階的に強化してきた経緯を挙げていますが、個々の物件で実際にどうかは水質の測定と行政の判断です。心配なときは水道局と環境省の窓口へ
  • 費用は物件ごとに違います。掘削の長さ、土被り、上に何が載っているか、外構の復旧範囲で変わります。相見積もりを取ってください
  • すぐに漏れるという話ではありません。鉛管が残っていること自体が漏水を意味するわけではなく、国は平成16年の「水道ビジョン」以来「できるだけ早期にゼロにする」という更新の目標として扱ってきました。急を要する工事ではありませんが、建替えやリフォームの機会を逃すと、次の機会は10年単位で先になります
  • 入居者に不安だけ渡さないこと。「鉛管かもしれません」とだけ伝えると、確認も対処もないまま不安が残ります。調べてから、結果と対処をセットで伝えてください

大家になったときの手続き全体は 大家になったら必要になる書類と手続きの一覧、空室が出てから次の入居までの流れは はじめて空室が出たときの流れ をご覧ください。

国が動くのは水道事業者の計画づくりまでで、敷地の中は、持ち主が動かないかぎり何も変わりません。まずは、メーターボックスの蓋を開けるところからです。

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