収益物件を買った大家が最初に集める7つの書類|固定資産税の精算金は税金ではない

結論からお伝えすると、収益物件を買ったあとに集める書類は7つです。そのうち決済の場で渡されるのは、だいたい3つか4つ。残りは前の所有者か管理会社に「ありますか」と聞かないと出てきません。そして聞くタイミングを逃すと、二度と出てこないことがあります。

決済が終わって司法書士が席を立ったあと、手元に残るのは薄い封筒です。売買契約書、重要事項説明書、鍵。賃貸中の物件なら入居者一覧が1枚。それで全部です。建物の図面も、去年の消防点検の結果も、5年前に給湯器を替えたときの記録も、入っていません。

決済の日に渡される封筒には、足りないものがある

足りないものが問題になるのは、たいてい買ってから数か月後です。入居者から「お風呂のお湯が出ない」と連絡が来て、給湯器の型番も設置年も分からない。消防署から点検報告の通知が来て、前回いつ誰がやったのか分からない。確定申告の時期になって、建物がいくらだったのか分からない。

どれも、引き渡しの前後なら一言で解決した話です。売主も仲介会社も、聞かれなければ出しません。悪意ではなく、単に「必要だと思っていない」からです。

収益物件を買った直後に集める6つの書類を、売買契約書・登記識別情報・賃貸借契約書と敷金一覧・保証会社と火災保険の契約・確認済証と図面・消防設備の点検報告書の順にまとめた図

最初に集める7つの書類

  • 1. 売買契約書と重要事項説明書——原本。特に売買契約書に消費税額が書かれているかを見てください(後述します)
  • 2. 登記識別情報通知(いわゆる権利証)と登記事項証明書——登記識別情報は再発行されません。封をしたまま保管します
  • 3. 賃貸借契約書の原本と、入居者一覧・敷金の預り一覧——写しではなく原本。敷金は預かっている金額を部屋ごとに突き合わせます
  • 4. 家賃保証会社の契約内容と、火災保険の契約書——保証会社の契約は所有者が替わっても自動では引き継がれないことがあります
  • 5. 建築確認済証・検査済証・図面一式——将来売るときと、大きな工事をするときに要ります
  • 6. 修繕履歴と設備の交換記録——給湯器・エアコン・屋根・外壁。年と型番があれば十分です
  • 7. 消防用設備の点検報告書——消防法17条の3の3は、防火対象物の関係者に定期の点検と消防長または消防署長への報告を義務づけています。所有者が替われば、次はあなたに来ます

7つのうち1・2は決済の場で必ず手に入ります。3も通常は渡されます。問題は4から7で、ここは自分から聞かないと出てきません。聞く相手は売主ではなく、それまで管理していた会社のほうが早いことが多いです。管理会社の引き継ぎで何が抜けやすいかは引き継ぎで失われやすい情報|鍵・保証会社・入金口座にまとめています。

「固定資産税の精算金」は税金ではありません

売買のとき、引き渡し日から年末までの固定資産税を日割りで買主が売主に払う——ほぼ必ず出てくる清算です。多くの方が「自分が払った税金」だと思っています。

税務上はそう扱われません。国税庁の質疑応答事例「未経過固定資産税等に相当する額の支払を受けた場合」は、「支払を受けた未経過固定資産税等に相当する額は、実質的にはその土地及び家屋の譲渡の対価の一部を成すものと解するのが相当」と書いています。理由も明記されていて、固定資産税はその年の1月1日の所有者に課されるもので、「その年度の賦課期日後に所有者の異動が生じたとしても、新たに所有者となった者がその賦課期日を基準として課される固定資産税等の納税義務を負担することはありません」(出典:国税庁 質疑応答事例/令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく)。

つまり買主から見ると、これは税金の立替えではなく売買代金の一部です。その年の経費にはならず、土地分と建物分に分かれて取得価額に乗ります。消費税でも同じ扱いで、国税庁は「地方公共団体に対して納付すべき固定資産税そのものではなく、私人間で行う利益調整のための金銭の授受であり、不動産の譲渡対価の一部を構成するもの」として課税の対象としています(同 消費税の質疑応答事例)。

売る側から見た同じ論点はオーナーチェンジで売るときの注意点で扱っています。翌年に自分の名前で来る納税通知については固定資産税はいつ・いくら来るかを。

売買契約書の消費税額から、建物価格が出せる

減価償却の元になるのは建物の価格です。ところが契約書には「土地建物 一括 1,800万円」としか書かれていないことがあります。

売主が課税事業者なら、契約書に消費税額が記載されています。土地に消費税はかからないので、書かれている消費税額は建物にだけ対応します。税率10%なら、消費税額を0.1で割った額が建物の税抜価格です。消費税額99万円なら建物は990万円、と逆算できます。

売主が個人で消費税の記載がない場合は、固定資産税評価額の比で按分する方法などが一般的です。ここは判断が分かれるところなので、税理士か税務署に確認してください。減価償却の考え方そのものは減価償却の考え方を、ざっくり掴むにあります。

買ってすぐ直すと、築古の短い耐用年数が使えなくなることがある

築古を買う人の多くが期待しているのが、中古資産の簡便法です。法定耐用年数の一部を経過した資産なら、「その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に、経過年数の20パーセントに相当する年数を加えた年数」で償却できます。法定耐用年数30年・経過10年なら、20年+2年=22年(出典:国税庁 タックスアンサー No.5404「中古資産の耐用年数」)。木造アパートの法定22年を全部過ぎていれば、22年×20%=4年です。

ここに条件が付いています。同じページに、こう書かれています。

「その中古資産を事業の用に供するために支出した資本的支出の金額がその中古資産の取得価額の50%に相当する金額を超える場合は、簡便法による耐用年数の算定はできません」。さらに、資本的支出が再取得価額(同じものを新品で買う場合の金額)の50%を超えると、法定耐用年数によることになります。

建物400万円で買って、貸せる状態にするために250万円の資本的支出をした——という買い方は、築古では珍しくありません。その時点で4年償却の前提が崩れます。何が修繕費で何が資本的支出になるかは修繕費と資本的支出の違いを先に読んでおくと、工事の組み立て方が変わります。

家賃はいつから自分に入るのか?

賃貸中の物件を買うと、賃貸人の地位は原則としてそのまま移ります(民法605条の2第1項)。ただし同条3項に、こう書かれています。

「賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない」

登記が済むまでは、入居者に対して「自分が大家だ」と言えません。決済と同日に登記申請するのが通常なので実務上は問題になりませんが、入居者への通知と入金口座の変更を誰がいつ出すのかは、決済の前に決めておいてください。敷金の返還債務は買主が承継します(同条4項)。口座変更の実務は家賃はどこに入るのか|入金口座の変更手続きに書いています。

固定資産税の日割り精算金を、税金だと思ったときの扱いと、実際の売買代金としての扱いを左右で比べた図

都合の悪いことも書いておきます

  • 書類が全部そろう物件のほうが少数です。 築30年を超えると、確認済証も検査済証も見つからないことがあります。無いなら無いで、市区町村で台帳記載事項証明書を取れるか確認する、という次の手に進みます
  • 不動産取得税は後から来ます。 決済のときには請求されず、数か月後に都道府県から納税通知が届きます。買った年の資金繰りに入れておいてください
  • 修繕履歴は「無い」ことのほうが多いです。 その場合は、自分が買った日から記録を始めるしかありません。5年後の自分と、いつか売るときの買主のために書きます
  • 税務の扱いは個別の事情で変わります。この記事は一般的な整理です。実際の申告は税理士・税務署にご確認ください

最初の1週間でやるなら、この順番

  1. 売買契約書を開いて、消費税額の記載があるかを確認する
  2. 賃貸借契約書の原本と敷金の預り一覧を部屋ごとに突き合わせる
  3. 火災保険と家賃保証会社の契約が、自分の名前で続いているかを確認する
  4. 前の管理会社に「消防点検の報告書と修繕履歴、図面はありますか」と一度で聞く
  5. 出てこなかったものを1枚の紙に書き出し、そこから自分の記録を始める

大家になったときの手続き全体の地図は大家になったら必要になる書類と手続きの一覧にあります。鍵の本数と保管については大家が持つ鍵は何本かを。急ぐ必要はありません。封筒の中身を並べるところからで十分です。

投稿者プロフィール

Follow me!

この記事の内容について、個別に相談したい方へ

さいたま市周辺で賃貸管理をお探しの方、いまの管理に迷いがある方のご相談をお受けしています。 まだ何も決めていない段階でもかまいません。

相談する(お問い合わせフォーム)