はじめて空室が出たときの流れ|退去連絡から次の入居まで大家がやること
電話は、たいてい一本で終わります。「来月末で出ます」。それだけです。物件を持って最初の退去は、この短い連絡から始まります。
結論からお伝えすると、はじめての空室で決めるべきことは「いくらで募集するか」ではありません。退去日から逆算した日付を先に押さえることです。解約通知の受領日、立会いの日、工事の着工日、募集開始日。この4つの日付が決まっていないと、家賃の入らない月が1か月ずつ増えていきます。

退去から次の入居まで、実際の流れ
順番は、おおむね次のようになります。管理を委託している場合は管理会社が動きますが、どこで大家さんの判断が必要になるかを知っておくと、報告を待つだけの立場から抜けられます。
- 解約の申し出を受ける(口頭ではなく書面で受け取る。日付が起点になります)
- 退去日を確定する(賃料の日割り、鍵の返却日を同時に決める)
- 退去立会い(室内の状態を確認し、写真を残す)
- 原状回復の見積り(負担区分を確認して、入居者負担分を敷金から精算する)
- 工事(クロス、クリーニング、必要なら設備交換)
- 募集開始(賃料と条件を決め、写真を撮り、図面を作る)
- 内見・申込・審査
- 契約・入居
解約の連絡が来たら、その日にやること
まず契約書の解約予告期間を見ます。1か月前が一般的ですが、契約によって違います。次に、書面での解約通知を受け取ります。電話やLINEで済ませると、後から「言った・聞いていない」が起きます。
そして、その場で退去日を確認してください。月末なのか、月の途中なのか。途中であれば日割りの計算が必要になり、鍵の返却がいつになるかで工事に入れる日が変わります。
立会いは、写真の枚数で決まる
立会いは30分から1時間です。ここで撮る写真が、後の精算の根拠になります。傷がある場所だけを撮って終えてしまうと、後で困ります。何もない面も撮っておかないと「元からこうだった」と言われたときに比べる材料がありません。
撮る場所と撮り方は退去立会いで確認すべき場所と、写真の撮り方にまとめています。立会いに立ち会えない場合は、管理会社に「傷のない面も含めて全室を撮ってください」と一言伝えるだけで、写真の質が変わります。
敷金の精算は、どこで揉めるのか
争点になりやすいのは金額そのものではなく、どちらが払うのかの線引きです。日焼けによるクロスの変色や、家具を置いた床のへこみは、通常の使用による損耗として大家さん負担と扱われるのが一般的です。一方、タバコのヤニやペットによる傷は、入居者負担と判断される場合があります。
この線引きの考え方は国土交通省のガイドラインが基準になっています。詳しくは原状回復の費用は誰が払うのか|ガイドラインの考え方をご覧ください。
ひとつ、先に伝えておくべきことがあります。入居時に説明していない負担は、退去時に請求しても通りにくいということです。特約で入居者負担にしている項目があるなら、それは入居時に書面で示されている必要があります。この順番を逆にすると、退去のたびに同じ議論をすることになります(→退去時に「聞いていない」と言われないための伝え方)。
工事と募集は、同時に走らせていい
工事が終わってから募集を始める必要はありません。着工日と完工予定日が決まった時点で募集は出せます。「○月○日から入居可」として出しておけば、工事期間中に内見の予約が入ります。
逆に、工事の日程が決まらないまま募集を止めていると、その分がまるごと空室期間になります。退去から募集開始までに何日かかるのが普通か、内訳は退去から募集開始まで何日かかるかにまとめました。
賃料は、前の入居者と同じでいいのか?
同じにする必要はありませんし、下げる必要もありません。前回の契約が5年前なら、その間に周辺の相場は動いています。まず近隣の募集事例を見て、それから決める順番です。
そして、下げるのは最後の手段です。初期費用の調整や設備の見直しで決まることもあり、賃料を下げるとその後の更新でも下がった賃料が続きます。この判断については家賃を下げる前に試すことが参考になります。
募集を出したあと、決まらないときに見る場所
反応がないときは、原因を2つに分けて考えます。
- 問い合わせ自体がない→ 見え方の問題です。写真の枚数と明るさ、募集図面の記載、賃料と条件のバランス
- 内見は来るが決まらない→ 現地の問題です。においや水回りの印象、鍵の対応、競合物件との比較
入り口が違えば打つ手も違います。写真については写真を撮り直すだけで反響が増える理由、内見後に決まらない場合は内見はあるのに決まらないときに見る場所をご覧ください。3か月動かない状態が続いているなら見直す6つのポイントから順に確認するのが早いです。

都合の悪いことも書いておきます
- 空室期間はゼロにはなりません。立会いから工事、募集、審査、入居までには工程があります。繁忙期を外せば、埋まるまでに数か月かかることもあります
- 原状回復にはお金がかかります。敷金で足りることもありますが、設備の交換が重なれば持ち出しになります
- 安く仕上げれば、決まりにくくなる場合があります。削っていい場所と、削ると内見で嫌われる場所は別です(→原状回復を安くする方法と、安くしてはいけない場所)
- 1回目は、たいてい後手になります。2回目から日付を先に押さえられれば十分です
はじめての1回で、最低限これだけ
やることは多く見えますが、最初の退去で押さえるべきは次の3点です。
- 解約通知を書面でもらい、退去日を確定する
- 立会いの写真を、傷のない面も含めて残す
- 工事の日程が決まった時点で募集を出す
この3つができていれば、精算でも募集でも大きく崩れません。空室が続いたときの動かし方は空室が3か月埋まらない。募集条件のどこを動かすかにまとめています。まずは日付を紙に書き出すところからで十分です。
投稿者プロフィール
最新の投稿
この記事の内容について、個別に相談したい方へ
さいたま市周辺で賃貸管理をお探しの方、いまの管理に迷いがある方のご相談をお受けしています。 まだ何も決めていない段階でもかまいません。






