アパートの共用部の電気代は10月からどうなるか|大家が9月のうちに見ておく4か所

アパートの共用部の電気代は、毎月の送金明細に「共用電気」と1行で載っているだけのことが多く、ふだん中身を見る機会がありません。外階段の照明、玄関前の自動点滅器、給水ポンプ、浄化槽のブロワ。どれも止められないので、金額だけが静かに動きます。

結論からお伝えすると、国の電気・ガス料金支援は、いま公表されている範囲では2026年9月使用分(10月検針分)までです。10月以降どうするかは決まっていません。上がると決まったわけでも、下がると決まったわけでもありません。だからこそ、いまが慌てずに共用部の請求書を開いておける時期です。

アパートの共用部で確認する4か所をまとめた図。契約種別と契約容量、共用灯が昼も点いていないか、使っていない設備の電源が生きていないか、共用水道メーターの検針値が前年同月より急増していないか。

いま値引きされている金額は、1kWhあたりいくらか

経済産業省は2026年6月12日、電気・ガス料金支援に伴う値引きの特例認可・承認を公表しました。単価は次のとおりです(出典:経済産業省「2026年7月、8月及び9月使用分の電気・ガス料金支援の実施に伴い、電気・都市ガス料金の値引きを行うことができる特例認可・承認を行いました」2026年6月12日)。

  • 2026年7月使用分(8月検針分)/電気・低圧 3.5円/kWh、高圧 1.8円/kWh、都市ガス 14.0円/㎥
  • 2026年8月使用分(9月検針分)/電気・低圧 4.5円/kWh、高圧 2.3円/kWh、都市ガス 18.0円/㎥
  • 2026年9月使用分(10月検針分)/電気・低圧 3.5円/kWh、高圧 1.8円/kWh、都市ガス 14.0円/㎥

アパートの共用部は、ほとんどが低圧契約です。8月使用分だけ単価が高いのは、暑さで使用量が増える月に厚く配分されているためです。申請は不要で、契約している電力会社が支援に参加していれば請求額から自動で引かれます。

共用部でいくら分になるのか

仮に共用部の使用量が月200kWhだとすると、次の計算になります。

  • 8月使用分の値引き=4.5円 × 200kWh = 900円
  • 7月・9月使用分の値引き=3.5円 × 200kWh = 700円

1棟あたり月700〜900円。10棟持っていれば月7,000〜9,000円です。支援が延長されなければ、この分がそのまま請求に戻ります。金額としては小さいのですが、共益費を上げずに吸収する側は大家なので、先に把握しておく意味はあります。

もう一つ、5月から乗っている数字があります

電気代には再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)が使用量に応じて加算されます。2026年度の単価は1kWhあたり4.18円で、2026年5月検針分から2027年4月検針分まで適用されます(出典:経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します」2026年3月19日)。経産省は、月400kWhを使う世帯モデルで月額1,672円・年額20,064円になると示しています。

先ほどの共用部200kWhで計算すると、4.18円 × 200kWh = 月836円、年間で約1万円です。これは支援とは別枠で、すでに毎月の請求に入っています。

電気・ガス料金支援の値引き単価と、再エネ賦課金を並べた比較図。低圧の値引きは7月使用分3.5円、8月使用分4.5円、9月使用分3.5円で共用部200kWhなら月700〜900円。再エネ賦課金は2026年度が1kWhあたり4.18円で2026年5月検針分から2027年4月検針分まで適用、200kWhなら月836円・年約1万円。

9月のうちに見ておく4か所

設備を入れ替える話ではありません。請求書と現地を見るだけで済む4つです。

  1. 共用部の契約種別と契約容量/検針票の左上にあります。使っていない容量で契約したままになっていないか。アンペアを下げれば基本料金が下がりますが、ポンプの起動電流に耐えられるかは電気工事店に確認してください
  2. 共用灯が24時間点いていないか/自動点滅器(センサー)が劣化すると昼も点いたままになります。日中に一度、明るい時間帯に現地へ行くだけで分かります
  3. 使っていない設備が生きていないか/撤去した自販機の電源、使わなくなった旧ポンプ、空室の給湯器の凍結防止ヒーターなど。ブレーカーが落ちていないだけで電気を食い続けているものがあります
  4. 共用水道メーターの検針値/前年同月と比べて急に増えていたら、散水栓の閉め忘れか、敷地内の私設管の漏水を疑います

LED化はいますぐやるべきか

都合の悪いことも書いておきます。共用灯のLED化は、回収に年数がかかります。外階段の照明を数灯替えたところで、月に数百円の差にしかならないことが多く、器具ごと交換すれば1灯あたりの工事費のほうが大きくなります。「電気代が上がりそうだから急いでLEDに」は、判断としては逆です。器具が寿命を迎えたとき、あるいは外壁や共用部の工事をするときに、まとめて替えるほうが理にかないます。回収年数の考え方は空室対策のリノベーションはどこまで投資すべきかで整理しています。

共益費はすぐ上げられるのか

一般的には、入居中の契約で共益費を上げるには入居者の同意が必要で、更新のタイミング以外では話を持ち出しにくいのが実情です。いま住んでいる人の共益費を動かすより、次の募集条件で調整するほうが現実的です。契約条件の変更に迷う場合は、管理会社か弁護士に確認してください。

数字の置き場所を決めておく

共用部の電気代・水道代は、確定申告では必要経費として扱われる支出です。何にいくら使っているかを月ごとに並べておくと、値上がりに気づくのも、経費を拾い漏らさないのも早くなります。経費の考え方は賃貸経営で経費にできるもの・できないもの、収支の見方は賃貸経営で最初に覚える3つの数字にまとめています。具体的な計上の可否は税務署または税理士にご確認ください。

大きな支出の備え方は大規模修繕の積立をどう考えるか、設備にどこまでお金を出すかは大家が設備をどこまで足すかもあわせてご覧ください。

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