大家の火災保険料は2026年も上がるのか|値上げ記事の前に見る一次資料
更新の案内が届いて、前回より保険料が上がっている。検索すると「2026年も火災保険は値上げ」という記事が並ぶ。ただ、その記事の多くは、どこの数字を指しているのかを書いていません。保険会社の商品の話なのか、業界共通の土台の話なのか。この2つは別物です。
結論からお伝えすると、業界共通の土台にあたる「火災保険参考純率」の改定は、2023年6月28日が最新です。2026年8月13日時点で損害保険料率算出機構の公表ページを確認したところ、その後に火災保険の改定の届出は掲載されていませんでした。2026年度に届出が出ているのは傷害保険と自動車保険で、火災保険は入っていません。だから、更新案内の保険料が上がっているなら、理由は参考純率の改定ではなく別のところにあります。

参考純率は「保険料そのもの」ではない
まず言葉を1つだけ整理させてください。損害保険料率算出機構は、参考純率をこう説明しています。
「参考純率とは、料率算出団体が算出する純保険料率のことです。(中略)会員保険会社は、自社の保険料率を算出する際の基礎として、参考純率を使用することができます。付加保険料率部分については、保険会社が独自に算出します。」(出典:損害保険料率算出機構「火災保険参考純率」)
保険料率は2つの部分に分かれます。
- 純保険料率……事故が起きたときに保険会社が支払う保険金に充てられる部分。ここの参考数値が参考純率
- 付加保険料率……保険会社が事業を行うための経費などに充てられる部分。各社が独自に算出します
さらに機構は、参考純率について「使用義務のない参考数値」であることも明記しています。2023年の改定を知らせた資料には、こう書かれています。
「本資料に記載の参考純率の改定率などは、実際に保険契約者の方が契約される保険会社の保険商品の改定率などとは異なります。」(出典:損害保険料率算出機構「火災保険参考純率 改定のご案内」2023年6月28日)
つまり「参考純率が13%上がった=保険料が13%上がる」ではありません。ニュースの見出しと、自分の証券に書かれた金額は、そもそも別の階の話です。
改定はいつ行われてきたのか
機構の「火災保険参考純率」のページには、金融庁長官への届出の履歴が並んでいます。新しいものから順に、こうなっています。
- 2023年6月21日届出(同年6月28日に適合性審査結果通知を受領)
- 2021年5月21日届出(同年6月16日受領)
- 2019年10月7日届出(同年10月30日受領)
- 2018年5月21日届出(同年6月15日受領)
- 2014年6月25日届出(同年7月2日受領)
2023年の改定内容は、住宅総合保険の参考純率を全国平均で13.0%引上げ、あわせて水災に関する料率を地域のリスクに応じて5区分に細分化するというものでした(出典:同上)。この3年あまり、火災保険の参考純率は動いていません。
ただし「今後も上がらない」という意味ではありません。機構は「参考純率が適正な水準であるか否かについて、毎年度チェックをしており(中略)改定の必要があれば参考純率の改定の届出を行います」と説明しています。検証は毎年行われていて、次がいつになるかは公表されていない——これが2026年8月13日時点の状況です。
参考純率が動いていないのに、なぜ保険料が上がるのか
ここは資料の注記に答えが書かれています。理由になり得るものが3つあります。
- 付加保険料率は各社が独自に算出している……事業の経費部分は、参考純率とは関係なく各社の判断で決まります
- 改定率の13.0%は全部を平均した数値……機構は「全ての契約条件(都道府県、構造、築年数、補償内容等)の改定率を平均して算出した数値」であり「契約条件によって改定率は異なります」と注記しています(出典:同上)
- 参考純率をどう使うかは会社ごとの判断……「そのまま使用する/修正して使用する/使用せず独自に算出する 等については、保険会社ごとの判断によります」(出典:同上)
とくに2つ目は、築古の物件を持っている大家さんに効きます。平均が13.0%でも、都道府県・構造・築年数・補償内容の組み合わせによって、上がり幅はそれぞれ違います。「平均より高い」と感じたなら、その感覚のほうが正しい可能性があります。
2023年の改定に入っていた「水災の5区分」は、自分で調べられる
2023年の改定には、大家さんが自分で確かめられる要素が1つ含まれています。水災料率の細分化です。
- 地域の単位……保険の対象となる建物の所在する市区町村別
- 区分数……保険料が最も安い「1等地」から最も高い「5等地」までの5区分
- 較差……最も高い地域と最も安い地域で約1.2倍(火災・風災・雪災・水災など補償危険の合計の数値)
(出典:損害保険料率算出機構「火災保険参考純率 改定のご案内」2023年6月28日)
機構は、市区町村ごとの水災等地を調べられる水災等地検索を公開しています。物件の所在地を入れれば、その市区町村がどの等地かを確認できます。
ここも都合の悪いことを書いておきます。等地が分かっても、それがそのまま自分の保険料になるわけではありません。参考純率をどう使うかは各社の判断だからです。使いどころは「水災の補償を外すか付けるか」を考える材料であって、値切りの材料ではありません。
更新案内が届いたら、この順番で見る
- 前回の証券と並べる……保険料の総額ではなく、変わった欄を探します
- 補償内容と免責金額が同じか確かめる……補償が増減していれば、保険料が動くのは当然です
- 建物の所在地の水災等地を調べる……水災を付けるか外すかの判断材料になります
- 代理店に「どの部分が上がったのか」を聞く……総額ではなく内訳で聞くと、答えが具体的になります
保険は、どこまで補償されるかが契約ごとに違います。ここに書いたのは公表資料から確認できる範囲の話ですので、個別の契約の内容と保険料については、必ず契約している保険会社か代理店に確認してください。

まとめ|2026年8月13日時点で言えること
- 火災保険参考純率の改定は2023年6月28日が最新。2026年度の届出は傷害保険と自動車保険で、火災保険は入っていない
- 参考純率は保険料そのものではない。付加保険料率は各社が独自に算出している
- 13.0%は全条件の平均。都道府県・構造・築年数・補償内容で上がり幅は違う
- 水災は市区町村別の5区分。最高と最低で約1.2倍。等地は誰でも調べられる
- 検証は毎年度行われている。「当分上がらない」とは言えない
証券のどこを見ればいいかは大家が火災保険の証券で確認する5つの欄|地震・水濡れ・賠償・家賃収入に、風災・水災に備えて建物側で見ておく場所は台風が来る前に大家が見ておく5か所|風速15mで屋根瓦ははがれ始めるにまとめています。
値上げの記事を見て不安になったときほど、一次の資料は無料で公開されていて、5分あれば自分の目で確かめられます。数字を人から聞くのと、出どころを見てから聞くのとでは、代理店との会話がまるで変わります。
投稿者プロフィール
最新の投稿
さいたま市の賃貸事情2026年8月14日大宮駅から離れた物件はどう戦うか|入居者が選んだ理由の1位は駅の近さではない
お金と税金2026年8月14日大家の法人化は所得900万円が目安なのか|税率の先にある3つの固定費
お金と税金2026年8月14日空室が続くと固定資産税は上がるのか|「6倍」が起きるのは空室ではない
お金と税金2026年8月13日大家の火災保険料は2026年も上がるのか|値上げ記事の前に見る一次資料
この記事の内容について、個別に相談したい方へ
さいたま市周辺で賃貸管理をお探しの方、いまの管理に迷いがある方のご相談をお受けしています。 まだ何も決めていない段階でもかまいません。


