台風で管理人を休ませた日の賃金|休業手当は平均賃金の6割以上ですが、不可抗力なら払わなくてよいことがあります

結論からお伝えすると、台風で管理人の見回りを休ませた日の賃金は、「使用者の責に帰すべき事由」による休業であれば、平均賃金の6割以上の休業手当を払う決まりです(労働基準法26条)。ただし、天災事変などの不可抗力による休業は、この「責に帰すべき事由」に当たらず、払わなくてよいとされています。何が不可抗力かは条文に書かれておらず、厚生労働省は2つの要件で読んでいます。現行の条文と厚生労働省の資料で確かめました(2026年10月6日時点)。

休業手当の決まりの要点。払う額は平均賃金の6割以上で、平均賃金は直前3か月で出し、天災でも自動では免れず、払わないと罰金の対象。

休業手当は「平均賃金の6割以上」で、平均賃金は3か月分から出します

26条は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合に、休業期間中、その労働者に平均賃金の100分の60以上の手当を払うよう求めています。手当と呼んでいますが、働いていない日に払う、法律上の最低線です。

平均賃金は12条1項が決めています。算定する事由が起きた日(休ませた日)より前の3か月間に払った賃金の総額を、その期間の総日数(暦の日数)で割った金額です。ただし、日給や時給で働く日が少ない人のために、「賃金の総額を、その期間に働いた日数で割った金額の6割」を下回ってはならないという下限があります(12条1項1号)。

数字を仮に置いてみます。日給制の管理人が、直前3か月で合計30万円を受け取り、その期間の総日数が92日、働いた日が36日だったとします。

  • 賃金総額÷総日数:30万円÷92日=約3,260円
  • 賃金総額÷働いた日数×6割:30万円÷36日×0.6=5,000円
  • 下限があるので、平均賃金は5,000円、休業手当は1日あたり5,000円×60%=3,000円以上

賃金の総額には、臨時に払った賃金と、3か月を超える期間ごとに払う賃金は入りません(12条4項)。端数の処理は条文からは読み取れないので、実際に計算するときは労働基準監督署に確かめてください。

台風の日は、払うのでしょうか。それとも不可抗力でしょうか?

厚生労働省は、地震に伴う休業についての資料の中で、不可抗力を次の2つの要件を満たすものと説明しています。

  1. その原因が事業の外部から発生した事故であること
  2. 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしても避けられない事故であること

同じ資料は、事業場の施設や設備が直接被害を受けて休業する場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外にあり、原則として使用者の責に帰すべき事由に当たらないと考えられるとしています。一方で、施設や設備が直接の被害を受けていないのに、取引先や交通の被害で休業する場合は、原則として「責に帰すべき事由」による休業に当たると考えられる、とも書いています。例外になるかどうかは、取引先への依存の程度、代わりの手段の有無、休業を避けるための具体的な努力などを合わせて判断するとされています。

この資料は地震についてのものです。台風の日の見回りに、そのまま当てはまるとは条文からは言い切れません。ただ、アパートが被害を受けていない日に、大家さんが危ないと判断して管理人を休ませた形は、資料の「施設に被害がない」場合に近く、原則は払う側で読まれる、と私は読みました。個別の判断は、所轄の労働基準監督署に確かめてください(台風の前後の動き方は台風が来る前と後、オーナーが動く順番にあります)。

6割より多く払わなければならないことはありますか?

26条の6割は、下回ってはいけない最低の線です。民法536条2項は、債権者の責めに帰すべき事由で債務を履行できなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒めないと書いています。大家さんの側の事情で管理人が働けなかったと見られる場合は、別の条文から、賃金の全額を請求される余地があります。どちらに当たるかは事情ごとに変わり、条文だけでは決まりません。

休業手当を払う場合と払わない場合。施設に被害がない日の休業は払う側で読まれ、原因が外部にあり最大の注意でも避けられない場合は払わなくてよい。

払わなかったら、どうなりますか?

120条1号は、23条から27条までの規定に違反した者を、30万円以下の罰金に処すると定めています。26条はこの範囲に入っています。さらに122条は、雇い主である人の使用人などが業務に関して違反したときも、その人に罰金刑を科すとしています。

都合の悪いことも書いておきます

  • 家事使用人には労働基準法が適用されません(116条2項)。賃貸経営のために雇う管理人が当たるかは、条文だけでは判断できません。
  • 管理人が自分の判断で出勤しなかった日は、大家さんが休ませた日ではありません。この手当の話とは分けて考えます。
  • 6割は法律の下限で、雇用の書面や就業規則でより高く定めていれば、そちらが先に効きます。
  • 平均賃金の端数処理や、資料にない台風の場合の線引きは、条文から読み切れません。

今日やることを1つだけ選ぶなら

管理人の直近3か月の賃金台帳を開いて、賃金の合計と総日数、働いた日数の3つを書き出してください。そのうえで、上の計算で休業手当1日分の目安を出しておきます。賃金台帳の備え方は人を雇った大家が備える帳簿は2つですに、雇用条件の書面はアパートの管理人を雇う大家が書面で示すことにあります。個別の判断は、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確かめてください。

出典

投稿者プロフィール

Follow me!

この記事の内容について、個別に相談したい方へ

さいたま市周辺で賃貸管理をお探しの方、いまの管理に迷いがある方のご相談をお受けしています。 まだ何も決めていない段階でもかまいません。

相談する(お問い合わせフォーム)