アパートのごみ置き場とリチウムイオン電池|大家が貼るのは「行き先」です
結論からお伝えすると、アパートのごみ置き場に貼るべきなのは「モバイルバッテリーを捨てないでください」ではなく、「どこへ持っていくか」の行き先です。さいたま市は、リチウムイオン電池をごみ収集所からは回収していません。つまり入居者がどれだけ丁寧に分別しても、集積所に出す先が最初から用意されていないのです。
そして2026年8月27日、総務省が国の対応状況を公表しました。ここに、大家さんが掲示を書き替えるための材料がそろっています。

令和6年5月17日の午前中だけで、収集車が3台燃えました
さいたま市の「ごみ収集車の火災予防にご協力ください!」というページに、こう書かれています。「令和6年5月17日(金)午前中に、ごみ収集車の車両火災が3件発生しました。西区・北区・大宮区・見沼区・岩槻区の収集に遅れが生じる可能性があります」(出典:さいたま市「ごみ収集車の火災予防にご協力ください!」2025年7月23日更新)。
同じページは、燃える仕組みまで書いています。リチウムイオン電池が不燃ごみとして出されると、収集車に圧縮して積み込む際に割れ、中の電解液が気化して可燃性のガスになる。そのガスに、ほかのごみが圧縮される過程で出た火花が引火する——という順番です。
市は「収集車には消火器を搭載しているが、構造上、直接消火剤を噴射しても鎮火が難しく、開けた場所に収集したごみを出して鎮火している」とも書いています。ごみ置き場の前で収集車が止まり、路上にごみを広げて消火する。その光景を想像すると、これは入居者のマナーの話であると同時に、物件の前で起きる出来事だと分かります。
「分別してください」では終わらない理由
ここがいちばん大事なところです。さいたま市のページには、はっきりこう書かれています。
「リチウムイオン電池はごみ収集所からの収集はいたしません」(出典:さいたま市「ごみ収集車の火災予防にご協力ください!」)。別のページでも「※ごみ収集所からの回収は行っておりません」と念を押しています(出典:さいたま市「リチウムイオン電池の分別について(お願い)」2026年8月14日更新)。
つまり、燃えるごみでも不燃ごみでも有害危険ごみでもなく、集積所という場所そのものが行き先ではないということです。「正しく分別してください」という掲示だけでは、入居者は正解にたどり着けません。
さいたま市の場合、行き先は次のようになっています。
- 電池を取り外せる場合……テープ等で電極を絶縁して、各区役所や公共施設にある電池回収ボックス(白色)へ
- 取り外せない場合(充電式の機器ごと)……小型家電回収ボックス(黄色)へ。投入口は30cm×15cm
- 投入口に入らない大きさ……市のごみ処理施設へ直接持ち込むか、宅配回収を利用する
膨らんでいる電池は、どう扱えばいいのですか?
市は膨張品を2つに分けています。熱を帯びていなければ、そのまま回収ボックスへ。熱を帯びている場合は、回収ボックスに入れず、市のごみ処理施設(西部環境センターを除く)へ直接持ち込む——という区別です(出典:同「リチウムイオン電池の分別について(お願い)」)。
「膨らんでいたら危ないから触らない」ではなく、熱があるかどうかで扱いが変わる。ここは掲示に一行入れておく価値があります。
2026年4月1日から、メーカー側の受け皿が広がりました
制度の側も動いています。資源の有効な利用の促進に関する法律(資源法)は、製造事業者などに自主回収と再資源化の責務を課していますが、製品そのものが対象になる「指定再資源化製品」は、長らくパソコンと密閉形蓄電池の2品目だけでした。
ここに3品目が追加されました。「電源装置」(モバイルバッテリー)、「携帯電話用装置」(スマートフォン等)、「加熱式たばこデバイス」で、令和8年(2026年)4月1日施行です。e-Gov法令検索で現行の資源法施行令を確認すると、別表第六に5項目が並んでいます(2026年8月28日時点)。
実際の回収拠点も広い、というのが国の説明です。一般社団法人JBRCは、電器店やスーパーマーケットなどの協力販売店 約7,000か所と、約1,300市区町村を拠点として回収・再資源化を行っている、と報告されています(出典:総務省「リチウムイオン電池等の回収・再資源化に関する調査 通知に対する改善措置状況(1回目のフォローアップ)」令和8年8月27日)。
62.0%の市が「メーカーが回収すべき」と答えていた
その総務省の資料には、大家さんにとって見逃せない数字があります。調査対象の50市に意見を聞いたところ、リチウムイオン電池等は「製造事業者等が回収すべきである」が31市(62.0%)。そのうち「市区町村が回収を実施する必要がない等」が8市(16.0%)で、例文として「リチウムイオン電池等を条例で定める禁止排出物とし回収しないとする市もみられた」と書かれています。
ここから読めるのは、市区町村によって扱いがまったく違うということです。「うちの市はこう」と決め打ちできません。物件が複数の市にまたがっている大家さんは、市ごとに確かめる必要があります。
同じ資料には、回収の受け皿にも穴があることが書かれています。JBRCの回収対象外になるのは、①会員外の企業や製造事業者が不明な製品、②使用製品から電池を取り外せない製品(モバイルバッテリーを除く)、③破損・膨張品など異常のある電池や外装がフィルム状の電池——の3つ。いちばん危ない膨張品が、いちばん回収ルートから外れているという構図です。
なお、市区町村がリチウムイオン電池等の分別収集や適正処理に使う経費については、令和8年度から普通交付税措置が講じられることになった、とも記されています。回収の体制はこれから整っていく段階だ、という理解が実態に近そうです。

掲示に書く4行
「捨てないでください」を「持っていく先」に書き換えると、掲示はこうなります。市のページを見ながら、自分の物件の所在地に合わせて数字を差し替えてください。
- モバイルバッテリー・スマートフォン・電子たばこ・充電式の機器は、この集積所に出せません(さいたま市は収集所から回収していません)
- 電池が外せるもの……電極にセロハンテープを貼って、区役所などの電池回収ボックス(白)へ
- 外せないもの……小型家電回収ボックス(黄)へ。投入口は30cm×15cm。入らない大きさは処理施設へ持ち込み
- 膨らんでいて熱を持っているものは、ボックスに入れないでください。市のごみ処理施設へ直接お持ちください
あわせて、市のごみ分別辞典と回収ボックスの設置場所のページを印刷して、掲示板の横に貼っておくと問い合わせが減ります。ごみのルールを掲示する場面全般についてはゴミ出しのルールが守られないときで扱っています。
都合の悪いことも書いておきます
- 掲示をしても出るものは出ます。 引っ越しの当日にまとめて置かれるケースが多く、掲示を読む前に部屋を出ている人もいます
- 大家が入居者のごみ袋を開けて中身を確認することは、現実的な対応ではありません。 できるのは、出す前の段階で行き先を伝えることまでです
- 市によって扱いが違います。 上の内容はさいたま市のものです。他市の物件は、その市の廃棄物担当課のページを開いて確かめてください
- 火災が起きたときの責任の所在は、一般的には個別の事情で判断されます。 損害が出た場合の負担については、弁護士や加入している保険会社に確認してください。保険で埋まる範囲については大家が火災保険の証券で確認する5つの欄と火災保険だけでは大家の賠償は埋まらないもご覧ください
今日やることを1つだけ選ぶなら
物件がある市の名前と「リチウムイオン電池」で検索して、収集所から回収しているかどうかだけを確かめてください。回収していないなら、掲示の1行目は「捨てないで」ではなく「ここには出せません。行き先は◯◯です」になります。それだけで、掲示の意味が変わります。
連休や年末年始のように、連絡が付きにくい時期の備えはお盆の連休に入居者から連絡が来たらに、入居者との距離の取り方は大家は入居者とどこまで関わるべきかにまとめてあります。さいたま市の住宅事情そのものはさいたま市の空き家は増えていないで扱いました。
まとめ
リチウムイオン電池は、分別の問題ではなく行き先の問題です。さいたま市は収集所から回収せず、電池回収ボックスと小型家電回収ボックスに寄せています。国の側も2026年4月1日にモバイルバッテリー等3品目をメーカーの自主回収対象へ加えました。受け皿は広がっている途中で、膨張品のように抜けている部分も残っています。
掲示に「捨てないでください」と書いても、行き先を書かなければ、入居者は次にどうすればいいか分かりません。1行足すだけで済む話です。
※この記事は2026年8月28日時点の公表資料に基づく一般的な整理です。ごみの出し方は市区町村ごとに異なり、随時変更されます。実際の運用は、物件のある自治体の廃棄物担当課にご確認ください。
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