管理会社に払っている費用を1年分並べてみる|手数料の消費税は住宅の大家には戻ってきません

去年の送金明細を12か月ぶん並べて、電卓を叩いた大家さんがいました。管理手数料の合計は27万円ほど。「思っていたより安いな」と言って、その紙を閉じました。

ところがその年、同じ管理会社に払っていたお金は、それだけではありませんでした。更新の事務手数料が2件、保証会社の年間保証料の立替が3件、消防設備の点検費用が1件。どれも毎月の明細には出てこない行です。

結論からお伝えすると、管理会社に払っている費用を1年分並べるときは、①毎月出る費用と年に1回だけ出る費用を分けて数える ②手数料は税込で数える ③「払った日」ではなく「債務が確定した日」で年を切る、の3つを先に決めてください。この3つを決めないまま合計を出すと、翌年の確定申告でもう一度並べ直すことになります。

1年分を並べる前に確認する4点を示した図。毎月の費用と年1回の費用を分ける、手数料は税込で数える、債務が確定した日で年を切る、契約書の報酬欄と突き合わせる。

毎月の明細に出ない費用が、年に何回か立っています

毎月の送金明細に載るのは、その月に動いたお金だけです。送金明細書から引かれている5つの項目にまとめたとおり、管理手数料・原状回復費・広告料・立替金・振込手数料が主な行になります。

これに対して、年に1回か、数年に1回しか立たない費用があります。並べるときに落ちやすいのはこのあたりです。

  • 更新の事務手数料|入居者の更新は契約ごとにばらばらの月に来るため、12か月の合計を眺めても件数が見えません
  • 家賃保証会社の年間保証料|入居時の初回保証料とは別に、1年ごと・2年ごとの更新保証料が立ちます
  • 消防用設備等の点検と報告|消防法17条の3の3に基づくもので、点検の周期と報告の周期が別に決まっています
  • 火災保険料|数年分をまとめて払っていると、支払った年に全額が経費になるわけではありません
  • 退去1件ごとの原状回復費|金額の幅がいちばん大きく、平均で語ると実態から離れます

更新の事務手数料については、そもそも誰が払うものなのかという論点があります。更新事務手数料は誰が払うのかで条文を追っていますので、金額を並べる前にそちらを確認してください。

管理手数料の消費税は、住宅の大家には戻ってきません

ここがいちばん取り違えられているところです。

まず、大家さんが受け取る家賃の側。住宅の貸付けは消費税が非課税です(消費税法6条、別表第二の十三。出典:国税庁 タックスアンサー No.6226「住宅の貸付け」令和7年4月1日現在法令等)。共用部分の電気代や集会所の維持費を入居者が応分に負担する、いわゆる共益費も家賃に含まれ、同じく非課税です。

一方で、管理会社に払う管理手数料は役務の提供の対価ですから、消費税が課税されます。ここで多くの方が「払った消費税は申告で引けるのだろう」と考えます。引けません。

消費税法30条の仕組みでは、課税売上高が5億円超または課税売上割合が95%未満の事業者は、課税仕入れの全額を控除できず、個別対応方式では課税仕入れを次の3つに分けます(出典:国税庁 タックスアンサー No.6401「仕入控除税額の計算方法」令和7年4月1日現在法令等)。

  1. 課税売上げにのみ要するもの
  2. 非課税売上げにのみ要するもの
  3. 課税売上げと非課税売上げに共通して要するもの

控除できるのは1と、3に課税売上割合を掛けた分だけです。住宅の家賃は非課税売上げですから、その部屋の管理手数料にかかった消費税は2に入り、控除の対象になりません。

さらに、住宅だけを貸している大家さんの多くは、そもそも消費税の申告をしていません。基準期間(個人はその年の前々年)の課税売上高が1,000万円以下であれば納税義務が免除されるためです(出典:国税庁 タックスアンサー No.6501「納税義務の免除」令和7年4月1日現在法令等)。申告しないということは、払った消費税を取り戻す場面がないということです。

ですから、1年分を並べるときの手数料は税込で数えてください。家賃60万円・手数料5%の物件なら、月3万円ではなく月33,000円。年間で396,000円です。税抜で並べた360,000円との差は36,000円で、これは戻ってこないお金です。

駐車場の分だけは、扱いが変わることがあります

同じ敷地でも、駐車場使用料を家賃と別に収受していると、その部分は課税の対象になり得ます(出典:国税庁 タックスアンサー No.6226)。詳しくは駐車場は家賃に含めるか別契約にするかを先に読んでから、駐車場の行を分けてください。

受け取る家賃と払う管理手数料で消費税の扱いが逆になることを対比した図。家賃は非課税で共益費も含む。管理手数料は課税だが非課税売上げにのみ要する仕入れとなり控除できない。

「払った日」で切ると、翌年もう一度並べ直すことになります

所得税法37条1項は、不動産所得の必要経費に算入する金額から「償却費以外の費用でその年において債務の確定しないもの」を除くと書いています(e-Gov 法令検索・現行条文)。逆に言えば、その年に債務が確定していれば、まだ払っていなくても経費です。

年末の工事で、12月に工事が終わって請求書が来ているのに支払いが1月になった場合。一般的にはその年の経費になります。逆に、3年分の火災保険料を12月にまとめて払った場合、その年の経費はその年に対応する分だけです。

この線引きは、通帳を眺めているだけでは絶対に出てきません。大家が使う帳簿は何かで書いたとおり、白色申告でも記帳と保存は義務ですから、並べる作業と帳簿をそろえてしまうのがいちばん早いです。

では、1年分を何のために並べるのでしょうか?

手数料が高いか安いかを判断するためではありません。料率の話は管理手数料5%は高いのかで書いたとおり、率だけを比べても答えは出ません。

並べる目的は2つです。

  1. 翌年の見込みを立てる|更新が何件、退去が何件という前提を置ける。賃貸経営で最初に覚える3つの数字の実質利回りは、この実額がないと出せません
  2. 契約の中身と突き合わせる|並べた費目のうち、管理受託契約に書いていない名目のものがあれば、そこが質問すべき行です

2つ目が本題です。管理受託契約を締結したときに交付される書面には、法定の記載事項として「報酬に関する事項」が入っています(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律14条4号)。管理委託契約書はどこを読むべきかと並べて見れば、契約に無い費目はその場で分かります。

都合の悪いことも書いておきます

1年分を並べても、金額そのものは下がりません。並べる作業に半日かかって、出てきた結論が「妥当だった」ということも普通にあります。

それと、消費税の扱いは物件の使われ方(店舗併用か、貸付期間が1か月未満か、民泊に該当するか)で変わります。ここに書いたのは住宅だけを貸している場合の一般的な整理です。ご自身の申告に当てはめるときは、必ず税務署か税理士に確認してください。

今日できること

  1. 去年の送金明細を12か月ぶん出し、費目ごとに縦に足す(税込で)
  2. 明細に出てこない年1回の費用を、通帳と請求書から拾って足す
  3. 管理受託契約の書面を開き、報酬に関する事項の欄と突き合わせる
  4. 名目が一致しない行だけを、管理会社に質問する

築年数が経っている物件は、修繕の比率が年ごとに大きく動きます。原状回復の見積書は「一式」の行から見るも、費目を割るときの参考になります。

まとめ

  • 毎月の明細だけを12回足しても、1年分にはならない
  • 管理手数料の消費税は、住宅の大家には戻ってこない。税込で数える
  • 年を切る基準は「払った日」ではなく「債務が確定した日」(所得税法37条1項)
  • 並べる目的は、翌年の見込みを立てることと、契約書と突き合わせること

手元の数字が揃うと、管理会社に何を聞けばよいかが自分で決められるようになります。まずは去年の12か月ぶんを、税込で足すところからで十分です。

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