管理と仲介を同じ会社に頼んでいる大家が見るところ|報酬に上限と掲示があるのは仲介の側だけです

管理を頼んでいる会社が、そのまま入居者も決めてくる。首都圏のアパートでは、これがいちばん多い形です。窓口が1つで済むので、大家さんにとっても楽です。

その会社の事務所に行くと、カウンターの横の壁に、額に入った紙が2枚並んで貼ってあります。1枚は報酬の額が書かれた表、もう1枚は登録番号などが書かれた四角い標識です。この2枚が、まったく違う法律から来ていることは、あまり知られていません。

結論からお伝えすると、同じ会社が管理と仲介の両方をやっているとき、報酬に法律上の上限があり、その額を壁に掲示する義務があるのは仲介の側だけです。管理報酬には上限を定めた条文がなく、掲示の義務もありません。だから管理報酬は、壁ではなく自分がもらった書面で確かめるしかありません。

同じ会社が持つ3つの立場を並べた図。仲介は宅建業法で報酬に上限と掲示義務がある。管理受託は管理業法で報酬の上限がない。自ら貸主は宅建業ではなく特定賃貸借の規制がかかる。

同じ会社でも、立場が3つに分かれています

宅地建物取引業法2条2号は、宅地建物取引業をこう定義しています。

宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの(e-Gov 法令検索・現行条文)

ここを一語ずつ読むと、「貸借」という言葉が出てくるのは「代理若しくは媒介」の側だけです。売買と交換は「自ら行う場合」も入っていますが、貸借は入っていません。

つまり、同じ会社が同じアパートに関わっていても、立場は次の3つに分かれます。

  1. 媒介・代理(仲介)|宅建業法がかかる。報酬に上限があり、掲示の義務がある
  2. 管理受託|賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(管理業法)がかかる。報酬の上限はない
  3. 自ら貸主(サブリース)|宅建業ではない。管理業法の特定賃貸借の規制がかかる

3つ目が分かりにくいところです。会社が大家さんから一括で借り上げて転貸する形になると、その会社は「貸主」なので宅建業法の報酬規制は届きません。代わりに特定転貸事業者として、誇大広告等の禁止(管理業法28条)や契約前の書面といった別の規制が乗ります。

壁に貼ってある2枚は、書いてあることが違います

宅建業法46条は、報酬について4つの項を置いています。

  • 1項|報酬の額は国土交通大臣が定める
  • 2項|その額を超えて報酬を受けてはならない
  • 3項|大臣が定めたときは告示する
  • 4項|その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない

4項が効きます。仲介の報酬の上限は、その会社の事務所の壁に貼ってあります。大家さんは、契約前でも、依頼していなくても、それを読めます。具体的な数字(貸借の媒介は双方合計で借賃1か月分の1.1倍までなど)は送金明細書から引かれている5つの項目で告示まで追っていますので、そちらを見てください。

もう1枚の標識は、管理業法19条によるものです。

賃貸住宅管理業者は、その営業所又は事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令で定める様式の標識を掲げなければならない(e-Gov 法令検索・現行条文)

掲げるのは「標識」であって、報酬の額ではありません。そして管理業法の本文をひととおり読んでも、管理報酬の上限を定めた条文は出てきません。法律の中で「報酬」という語が出てくるのは、管理受託契約を締結したときに交付する書面の記載事項として並ぶ「報酬に関する事項」(14条4号)だけです。

では、管理報酬は何を見れば分かるのでしょうか?

壁にはないので、自分の手元の書面です。契約前に交付される説明の書面と、締結時に交付される書面。この2通に報酬が書かれています。更新事務手数料は誰が払うのかで、どちらの書面に何が書かれるかを整理しています。

あわせて、管理委託契約書はどこを読むべきかの「費用の負担区分」の条項を開いてください。管理報酬に上限がないということは、その金額の妥当性を判断する物差しが、契約書の中にしかないということです。

事務所の壁に並ぶ2枚の掲示を対比した図。左は宅建業法46条4項による報酬額の表で仲介の上限が読める。右は管理業法19条による標識で、管理報酬の額は書かれていない。

兼ねている会社に頼むとき、大家が実際に見る3か所

1. 何通の書面が出ているか

管理受託契約の書面は大家さん宛です。一方、仲介で入居者が決まったときに交付される重要事項説明書は入居者宛で、大家さんの手元には来ません。この取り違えは大家がもらう重要事項説明書は2種類あるにまとめました。「うちには何も来ていない」と感じたら、それは来ない書面かもしれません。

2. 空室が、自社で決まっているか他社で決まっているか

兼ねている会社は、自社で入居者を決めれば管理報酬に加えて仲介の報酬も入ります。他社に決められると仲介の報酬は入りません。ここに構造上の傾き方があります。

ただし「だから他社に流していない」と決めつけないでください。自社で客付けの力がある会社ほど、実際に早く決めます。見るべきは意図ではなく結果で、直近3件の成約がどこの会社経由だったかを聞けば済みます。空室が続くのは管理会社のせいか、物件のせいかの切り分けと合わせて使ってください。

3. 広告料(AD)が、どちらの報酬として動いているか

ADは仲介の報酬の上限とは別枠の扱いで、条件も決まっています。金額の妥当性は広告料(AD)は何か月分が適正かで幅を出しています。兼ねている会社の場合、ADが自社の売上になるので、「決まらないからADを積む」提案が出やすい構造であることは知っておいてよいと思います。

都合の悪いことも書いておきます

ここまで読むと、兼ねている会社を避けたほうがよいように読めるかもしれませんが、そうは思いません。分けると、空室のたびに大家さんが2社の間に立つことになります。鍵の受け渡し、内見の日程、募集条件の変更。窓口が1つであることの価値は、実務では大きいです。

それと、報酬に上限がある側(仲介)と、ない側(管理)を比べて「管理は野放し」と読むのも違います。管理業法は上限を置かない代わりに、登録・業務管理者の設置・書面の交付・定期報告といった手続きを課しています。規制の当て方が違うだけです。

今日できること

  1. 管理受託契約の書面を開き、報酬に関する事項の欄を読む
  2. 直近3件の成約が、自社経由か他社経由かを聞く
  3. 次に事務所へ行く用事があるとき、壁の2枚を見る

会社を変える場面では、この立場の違いがそのまま引き継ぎ書類の違いになります。管理会社を変更するときの引き継ぎ書類もあわせてどうぞ。

まとめ

  • 宅建業法2条2号の「貸借」は、代理と媒介にしか出てこない。自ら貸すのは宅建業ではない
  • 報酬の上限と、事務所への掲示義務があるのは仲介の側だけ(宅建業法46条2項・4項)
  • 管理業法が掲げさせるのは標識で、報酬の額ではない(19条)。上限を定めた条文もない
  • 管理報酬は壁ではなく、自分がもらった書面で確かめる(14条4号)

兼ねているかどうかで良し悪しは決まりません。決まるのは、大家さんがどちらの報酬をどこで確かめられるかを知っているかどうかです。

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