募集条件の「相談可」はどこまで書けるか|大家が見分ける2種類の欄
結論からお伝えすると、募集条件には「相談可」と書ける欄と、書いてはいけない欄があります。分かれ目は、その項目が不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)の必要表示事項に入っているかどうかです。入っている欄を「相談」で埋めると、必要な表示をしていない広告になります。入っていない欄は、逆に「相談可」の本来の居場所です。
マイソクを取り寄せて眺めると、「相談」という2文字がいくつも並んでいることがあります。礼金 相談、入居可能日 相談、ペット 相談。並べて見ると同じに見えますが、ルールの扱いは3つとも違います。

賃料・礼金・敷金は「相談」で埋められません
表示規約の第8条と施行規則第4条第1項は、物件の種別ごとに必ず書く事項を別表で定めています。大家さんの持っているアパートや貸家は、たいてい別表9(中古賃貸マンション・貸家・中古賃貸アパート・賃貸戸数が1戸の新築賃貸)です。
その別表9で、インターネット広告・新聞折込チラシ等・新聞雑誌広告の3媒体すべてに必要の印が付いているのが次の欄です。
- 13 賃料
- 14 礼金等を必要とするときはその旨及びその額
- 15 敷金、保証金等を必要とするときはその旨及びその額(償却をする場合はその旨とその額または割合)
- 16 住宅総合保険等の損害保険料等を必要とするときはその旨
- 17 家賃保証会社等と契約することを条件とするときはその旨及びその額
- 18 管理費又は共益費等
- 19 定期建物賃貸借であるときはその旨
- 20 契約期間(普通賃貸借で契約期間が2年以上のものを除く)
ここに1つ、実務者でも見落としやすい行があります。別表9の末尾に付いている(注)です。
「当初の契約時からその期間満了時までに、事項番号13から18以外の費用を必要とするときは、その費目及びその額を記載すること」
鍵交換代、室内消毒料、書類作成料、24時間サポート料。これらは「その他」でまとめてよい費用ではなく、費目と額を書く対象です。(出典:不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」別表9)
ペット可・二人入居・楽器は、別表に入っていません
別表9の22項目を上から下まで見ても、ペットの可否、二人入居の可否、楽器の可否、事務所使用の可否は1つも出てきません。入っているのは広告主の情報、所在地、交通、構造、面積、建築年月、入居可能時期、そして先ほどのお金の欄です。
つまりこれらは、規約が「書きなさい」と言っている項目ではありません。だから「相談可」と書いても、必要な表示をしていないことにはなりません。「相談可」が本来使える場所は、こちら側です。
では「相談可」は書いたほうがいいのですか?
書いたほうが問い合わせは増えます。ただし、裏側の基準を決めずに書くと、増えるのは問い合わせだけで、申込は増えません。
「ペット相談可」と書いた部屋に、大型犬2頭の申込が入ったとします。基準を決めていないと、管理会社は大家さんに電話をかけ、大家さんは考え、返事が2日遅れます。その2日で、申込者は別の部屋を決めます。「相談可」は、相談を受ける準備ができている人が書く言葉です。
先に決めておくのは3つだけで足ります。
- 受けられる上限(小型犬1頭まで、猫は不可、など)
- 受ける場合の条件(敷金1か月増、原状回復の特約、退去時の消臭)
- その場で管理会社が答えてよい範囲(この線の中なら大家に確認せず進めてよい、と伝えておく)

「激安」「完全」は、根拠の資料がないと使えません
条件の欄ではありませんが、備考欄で足をすくわれやすいのがここです。表示規約第18条第2項は、次のような用語について「当該表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に有している場合を除き、当該用語を使用してはならない」と定めています。
- 「激安」「バーゲンセール」「安値」など、著しく安いという印象を与える用語
- 「完全」「完ぺき」「絶対」「万全」など、全く欠けるところがないことを意味する用語
- 「日本一」「日本初」「業界一」「超」「当社だけ」「他に類を見ない」「抜群」など
- 「特選」「厳選」など、一定の基準により選別されたことを意味する用語
「相場より激安」と書きたくなったら、その根拠の資料を持っているかを先に考えてください。持っていないなら、金額をそのまま書くほうが強く効きます。写真の見せ方で越えてはいけない線については、募集写真は「実物より明るく」でいい|やっていい撮り方と、不当表示になる撮り方に整理しています。
マイソクを開いて見る順番
- 賃料・礼金・敷金・管理費に「相談」が入っていないか(入っていたら数字にする)
- 家賃保証会社の指定と初回保証料が書かれているか
- 鍵交換代・消毒料など、13から18以外の費用が費目と額で並んでいるか
- ペット・二人入居・楽器の欄に「相談可」があるなら、その裏側の基準を管理会社に渡してあるか
- 備考欄に、根拠のない強い言葉が混じっていないか
マイソク全体の直し方は、募集図面(マイソク)で反響が変わる|書き換えるべき5か所と、募集図面(マイソク)でオーナーが必ず直させる7つの欄|築古アパートで候補から外れないためにに分けて書いています。
都合の悪いことも書いておきます
「相談可」を減らして条件を確定させると、問い合わせの母数は減ります。条件が合わない人が最初から来なくなるためです。反響の件数だけを見ていると、直したことが失敗に見えます。見るのは件数ではなく、内見に進んだ割合のほうです。
それから、表示規約は不動産事業者に対するルールです。大家さんが自分で貸す場合(自ら貸借)は宅地建物取引業に当たらないため、規約が直接自分に適用されるわけではありません。ただし掲載しているポータルサイトは規約に沿って運用しているので、結果として同じ線で直すことになります。
今日やることを1つだけ選ぶなら
自分の物件のマイソクを1枚取り寄せて、「相談」という2文字がいくつあるかを数えてください。そのうち賃料・礼金・敷金・管理費・保証会社の欄にあるものは、数字に置き換える対象です。ペットや二人入居の欄にあるものは、裏側の基準を1行で書いて管理会社に渡す対象です。同じ2文字でも、やることが逆になります。
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