北向きの部屋のデメリットは何か|大家が見る採光の計算式に方位は出てきません

結論からお伝えすると、建築基準法が「採光」を計算するとき、式のどこにも方位は出てきません。北向きか南向きかではなく、窓の前にどれだけ空きがあるかだけで数字が決まります。しかも2023年4月1日から、住宅の居室に必要な採光の割合は7分の1で固定ではなくなりました。北向きの部屋を「不利な部屋」として値付けする前に、この2つを確かめてください。

築28年、鉄骨3階建ての1K。北側に窓が1つ、幅は1メートル60センチ。内見のあと、仲介会社から「日当たりを気にされていました」と連絡が入ります。募集図面の向きの欄には「北」とだけ書いてある。日中に部屋を見に行くと、直射日光は入らないものの、白い壁のおかげで手元の文字は読めます。カーテンレールには前の入居者が付けた厚手のレースが残ったままでした。

北向きの部屋で確かめる4点の図。必要な採光の割合は7分の1、照明を付ければ10分の1まで、採光補正係数に方位はない、備考欄に書くのは測った数字。

「住宅は7分の1」は、2023年3月までの条文です

採光の話でいちばんよく引かれるのが「床面積の7分の1」という数字です。これは長いあいだ、建築基準法28条1項の本文に書かれていました。2023年3月31日時点の条文はこうです。

その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては七分の一以上、その他の建築物にあつては五分の一から十分の一までの間において政令で定める割合以上としなければならない

いまの条文からは、この「住宅にあつては七分の一以上」が消えています。現行はこうです。

その居室の床面積に対して、五分の一から十分の一までの間において居室の種類に応じ政令で定める割合以上としなければならない

住宅も他の建物と同じ枠に入り、具体的な割合は政令へ移りました。移った先が建築基準法施行令19条3項の表です。表の中身は「住宅の居住のための居室は7分の1」で変わっていません。変わったのは、その表にただし書きが付いたことです。

照明を付ければ、10分の1まで下げられます

令19条3項のただし書きは、国土交通大臣が定める基準に従って照明設備の設置などの措置が講じられている居室について、表の割合から10分の1までの範囲内で大臣が別に定める割合とする、と書いています。

その「大臣が別に定める」中身が、国土交通省告示第86号(令和5年2月7日・国土交通大臣 斉藤鉄夫)です。昭和55年建設省告示第1800号を改正するもので、次の1号が新しく加えられました。

四 住宅の居住のための居室にあつては、床面において五十ルックス以上の照度を確保することができるよう照明設備を設置すること

そのうえで、この措置が講じられている居室は10分の1とすると定めています。施行日は令和5年4月1日です(脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律=令和4年法律第69号の附則1条3号の施行日)。

7分の1は約0.143、10分の1は0.1です。25平方メートルの部屋なら、必要な有効採光面積が約3.6平方メートルから2.5平方メートルへ下がる計算になります。窓が小さいというだけで「納戸」と書くしかなかった部屋の一部が、この改正の対象に入ります。

ただし、これは新しく建てるときや確認申請が要る工事のときの話で、いま建っている部屋の表示が自動的に変わるものではありません。自分の物件がこの緩和に乗るかどうかは、建築士か特定行政庁に確認してください。この記事では判定をしません。

採光補正係数の式に、方位は1文字も出てきません

ここが今日いちばんお伝えしたいところです。「採光に有効な部分の面積」は、窓の面積そのものではありません。窓ごとの面積に採光補正係数を掛けて合計します(建築基準法施行令20条1項)。

その採光補正係数の計算方法が同条2項です。まず採光関係比率を出します。

隣地境界線(略)までの水平距離を、その部分から開口部の中心までの垂直距離で除した数値のうちの最も小さい数値

要するに「窓の前にどれだけ空いているか ÷ 窓の上にどれだけ建物がかぶさっているか」です。この比率に、用途地域ごとの数字を掛けます。

  • 第一種・第二種低層住居専用、第一種・第二種中高層住居専用、第一種・第二種住居、準住居、田園住居 …… ×6.0 − 1.4
  • 準工業地域、工業地域、工業専用地域 …… ×8.0 − 1.0
  • 近隣商業地域、商業地域、用途地域の指定のない区域 …… ×10 − 1.0

上限は3.0です。天窓はその数値に3.0を掛け、外側に幅90センチメートル以上の縁側(ぬれ縁を除く)がある開口部は0.7を掛けます。また、開口部が道に面していて算定値が1.0未満になる場合は1.0とされます。

東西南北のどれにも触れていません。同じ大きさの窓でも、前が道路なら数字が立ち、隣の建物が迫っていれば下がる。法律が見ているのは向きではなく、空きです。

では、北向きは不利ではないということですか?

そこは分けて考えてください。法律上の採光と、住む人が感じる明るさは別のものです。北向きの窓には直射日光が入らないので、体感の明るさは南向きに劣ります。ここを「法律上は同じですから」と言い換えるのは、内見に来た人の実感とずれます。

そのうえで、北向きに実際にある条件を並べると次のようになります。

  • 直射日光が入らないぶん、一日の明るさのむらが小さい。日中ずっと同じ明るさで、在宅で作業する人には向く
  • 畳、床材、家具、カーテンの日焼けが進みにくい。原状回復のときの色あせが南向きより軽いことがある
  • 夏の西日が入らない面がある

いずれも「北向きだから良い」ではなく、その部屋で確かめられる事実として書けるものです。日焼けの度合いは、退去のたびに写真が残っていれば自分の物件で比べられます。撮り方は退去立会いで確認すべき場所と、写真の撮り方にまとめています。

募集で書けること・書けないこと

方角の弱みを埋めようとして、写真や表現を寄せすぎると別の問題が出ます。募集写真の明るさをどこまで補正してよいかは募集写真は「実物より明るく」でいい|やっていい撮り方と、不当表示になる加工に線を引いてあります。撮り直しの効果そのものは写真を撮り直すだけで反響が増える理由を参照してください。

備考欄に書けるのは、測った数字と、やった工事です。窓の幅と高さ、部屋の面積、照明の型、いつクロスを張り替えたか。「日当たり良好」のような形容は、北向きの部屋では逆に信用を落とします。

北向きの部屋で動かす順番を3段で示した図。厚手のレースを外す、照明の器具と電球を替える、壁を明るいクロスに張り替える。

部屋の側でできる手当て

順番としては、お金のかからないものから並べます。

  1. 厚手のレースを外す。前の入居者が残していったカーテンがそのままになっている部屋は珍しくありません。内見の30分前に外すだけで、写真も内見も変わります
  2. 照明を替える。上の告示が基準に置いたのは床面50ルクスです。実際の内見時にどう見えるかは器具と電球で動きます。器具ごと替えるか、入居者に任せるかの整理は大家が設備をどこまで足すか|インターネット無料と独立洗面台の効果を分けて考えるにあります
  3. 壁を明るいものに張り替える。スタンダードクロスの張替えは1メートル当たり1,088円(大家さんの内装屋の料金表・税抜、めくり代と残材処分代を含む)。これは継続して発注する事業者向けの業者価格で、個人が単発で頼む一般消費者価格は2〜3割ほど上と考えてください。1面だけ色を変えるやり方は白い壁と茶色い床で埋もれていないか|大家が選ぶアクセントクロス1面の考え方に書いています

それでも内見から先に進まないときは、方角ではなく別のところで落ちている可能性があります。内見はあるのに決まらないときに見る場所を先に一度通してみてください。

今日やることを1つだけ選ぶなら

その部屋の窓の前に何メートル空いているかを測ってください。隣地境界線まで、あるいは道路の反対側まで。法律が見ているのはそこで、方位ではありません。数字が出れば、募集図面の備考欄に「北側窓・前面道路まで◯メートル」と書けます。「北」の一文字だけよりも、読んだ人が判断できます。

出典:建築基準法(昭和25年法律第201号)28条、建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)19条・20条(e-Gov法令検索・2026年9月5日時点および2023年3月31日時点)/国土交通省告示第86号(令和5年2月7日)

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