空室が3か月埋まらない。募集条件のどこを動かすか
結論からお伝えすると、空室が3か月埋まらないときに動かす募集条件は①初期費用、②広告料(AD)、③入居条件、④家賃の4つで、動かす順番もこのとおりです。家賃を最初に触ると、その部屋だけでなく物件全体の評価が下がります。先に触るべき数字は他に3つあります。
物件そのものの見直し方は空室が3か月埋まらないときに見直す6つのポイントで全体像を整理しています。この記事は、そのうち「募集条件」だけを取り出した各論です。清掃も写真も一通りやった、それでも決まらない、という段階の方に向けて書いています。
先に、よくある失敗から
3か月動かないと、多くの場合まず家賃が下がります。65,000円を60,000円に。5,000円下げれば決まることは実際にあります。問題はそのあとです。
- 同じ間取りの隣室が退去したとき、60,000円が新しい基準になった
- 年間の家賃収入が6万円減り、表面利回り8%で計算すると物件の評価額が75万円下がった
- 既存入居者から「隣が5,000円安いと聞いた」と減額交渉が入った
- 翌年、金融機関に収支表を出したときに家賃下落として見られた
下げたこと自体が誤りだったのではありません。下げる前に試せた手を飛ばしたことが問題でした。順に見ていきます。
①初期費用|一度きりの持ち出しで済む数字
初期費用は、部屋探しをしている人が最初に見る合計金額です。家賃65,000円の部屋でも、敷金1・礼金1・前家賃・仲介手数料・保証会社初回・火災保険・鍵交換を足すと、契約時に必要な現金は30万円前後になります。ここが決め手になっている人は少なくありません。
大家さん側で動かせるのは、礼金・敷金・フリーレント・鍵交換費用の負担あたりです。いずれも一度きりの持ち出しで、翌年以降の家賃には影響しません。
| 打ち手 | 持ち出し(家賃65,000円の場合) | 翌年以降への影響 |
|---|---|---|
| 礼金1か月をゼロにする | 65,000円(一度きり) | なし |
| フリーレント1か月 | 65,000円(一度きり) | なし |
| 鍵交換費用を貸主負担に | 15,000〜25,000円程度 | なし |
| 家賃を5,000円下げる | 年60,000円(入居中ずっと) | 評価額・次回募集の基準まで下がる |
フリーレントは「決まったときにだけ発生する費用」でもあります。募集期間が1か月延びれば、どのみち65,000円は失われています。空室のまま持ち続けるか、条件として先に差し出すかの違いだと考えると判断しやすくなります。
②広告料(AD)|案内の順番を決めている数字
広告料は、客付けをしてくれた仲介会社に貸主から支払う費用です。地域や時期によりますが、首都圏の住居系では0〜2か月分の幅で設定されており、繁忙期を外れた時期や競合の多いエリアでは1か月分が一つの目安になります。
営業担当が同じ条件の部屋を3件持っていたとき、どれから案内するか。一般に「ADを積むのは最後の手段」と言われますが、現場ではADは値引きではなく、案内の順番を買う費用です。家賃を下げるより先に検討して構いません。家賃5,000円の減額が入居4年で24万円になるのに対し、AD1か月分は65,000円で終わります。
ただし、ADを積んでも案内自体が入っていないなら効きません。反響がゼロなら原因は掲載側にあります。設定する前に、直近1か月の問い合わせ件数と内見件数を管理会社に出してもらってください。
③入居条件|断っている人がいないか
意外に見落とされるのがここです。募集条件に「単身のみ」「保証人必須」「高齢者不可」「外国籍不可」といった制限が入ったまま何年も更新されていないことがあります。
保証会社の利用を必須にしたうえで連帯保証人を外す、二人入居を可にする、法人契約を受ける。この3つを解除するだけで、申し込みの母数は変わります。ペット可については設備費用と原状回復の設計が別途必要になるため、単純な条件緩和とは分けて考えてください。
なお、入居者の属性による制限の扱いは、差別的取扱いにあたらないかという観点も含まれます。判断に迷う場合は自治体の居住支援の窓口や専門家に確認することをおすすめします。
それでも動かないときは、家賃を下げるべきか?
①〜③をすべて実行して、なお2か月以上まったく内見が入らないのであれば、家賃が周辺相場から外れている可能性が高くなります。この段階では下げる判断も選択肢に入ります。
下げるときは、刻まないことです。1,000円ずつ3回下げると、検索の価格帯をまたぐタイミングを3回とも逃します。60,000円、65,000円といった検索の区切りを1回でまたぐ幅に決めて、一度で動かします。あわせて、次の更新時に戻す前提なのか、恒久的な水準なのかを自分の中で決めておいてください。
ここまで試しても動かない場合、原因が募集条件ではなく募集の運用そのものにあることもあります。掲載が止まっている、問い合わせに折り返しがない、といったケースです。判断の材料は管理会社の対応が遅い。改善を求めるか、変えるかの判断基準にまとめています。
まとめ
初期費用、広告料、入居条件、家賃。この順番で一つずつ動かし、動かした日と反響の変化を記録しておくことです。同時に全部変えると、何が効いたのか分からなくなります。打ち手はありますが、立地や競合の状況によって効き方は変わります。
さいたま市周辺で空室が長引いている物件をお持ちでしたら、ご相談ください。管理をお任せいただくかどうかは別として、いまの募集条件を一度見てお伝えすることもできます。
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