家賃を下げる前に試すこと|初期費用の調整という手

結論からお伝えすると、家賃を下げる前に試すのは初期費用の調整です。理由は単純で、家賃の減額は入居している間ずっと続く一方、初期費用の調整は一度きりの持ち出しで終わるからです。同じ「値引き」でも、財布から出ていく総額がまったく違います。

ご存じの方も多いと思いますが、この判断で見るべきは「何円安くしたか」ではなく「何年で回収できるか」です。順に整理していきます。

先に、よくある失敗から

空室が続いた末に家賃65,000円を60,000円へ。5,000円下げたところ、2週間で申し込みが入りました。ここまでは成功に見えます。実際に起きたのはこのあとです。

  • 翌年、同じ間取りの別室が退去。60,000円が募集の基準になり、戻せなくなった
  • 年間の家賃収入が6万円減少。表面利回り8%で逆算すると、物件の評価額は75万円下がった計算になる
  • 入居者が4年住んだため、減額の累計は24万円。フリーレント1か月(65,000円)で決めていた場合の約3.7倍
  • 売却を検討したときに、レントロールの数字が下がった状態で査定を受けることになった

家賃を1,000円下げるのは「1,000円の値引き」ではなく、物件そのものの値段を下げる行為です。年間12,000円の減収は、表面利回り8%で計算すれば15万円の資産価値に相当します。一般には空室対策の第一手として家賃調整が語られますが、順番としてはむしろ最後に置くべき数字です。

初期費用で動かせるのは、この4つ

入居希望者が最初に見るのは月々の家賃と、契約時に必要な現金の合計です。家賃65,000円の部屋でも、敷金・礼金・前家賃・仲介手数料・保証委託料・火災保険・鍵交換を足すと、初期費用は30万円前後になります。ここを削る手は、大家さん側に4つあります。

打ち手持ち出しの目安向いている場面
礼金ゼロ家賃1か月分(65,000円)周辺で礼金1か月が標準の地域
フリーレント1か月家賃1か月分(65,000円)入居可能日が先で、すぐ動けない部屋
鍵交換費用を貸主負担15,000〜25,000円程度あと一歩で決まりそうな交渉の場面
敷金ゼロ金額はゼロ/退去時の回収リスクを負う保証会社の原状回復保証を付けられる場合

フリーレントを使うときは、短期解約違約金の特約とセットにしておくのが実務的です。1か月分を無償にしたうえで、半年で退去されると持ち出しだけが残ります。1年未満の解約で家賃1か月分、といった条項を入れておけば、極端な短期利用への備えになります。特約の書き方や有効性は個別の事情によりますので、条文を変えるときは専門家に確認してください。

このうち敷金ゼロだけは性質が違います。持ち出しは発生しませんが、退去時の未払い家賃や原状回復費を預り金から充当できなくなります。使うなら、原状回復費用まで対象にできる保証会社のプランとセットで考えてください。

どちらが安く済むのか?回収期間で比べる

家賃65,000円の部屋で、5,000円の減額とフリーレント1か月を比べます。減額は入居している限り毎月発生し、フリーレントは最初の1回だけです。

入居期間家賃5,000円減額の累計フリーレント1か月
1年60,000円65,000円
2年120,000円65,000円
4年240,000円65,000円
6年360,000円65,000円

13か月目に逆転します。単身向けの平均的な入居期間を2年から4年とすれば、ほとんどの場合で初期費用の調整のほうが安く済むことになります。しかも家賃の数字は据え置かれるため、評価額と次回募集の基準は守られます。

もう一つ、金額に表れない差があります。ポータルサイトには「礼金なし」「敷金なし」「フリーレント有」といった絞り込み条件が用意されており、そこにチェックを入れて探している人が一定数います。初期費用を動かすと、この絞り込みの対象に入ります。家賃を5,000円下げても、価格帯の区切りをまたがなければ検索結果の見え方は変わりません。同じ持ち出しでも、届く相手の数が変わるということです。

ただし、入居期間が短い立地では前提が変わります。工場や学校の近くで1年未満の入退去が続く部屋なら、一度きりの持ち出しが毎年発生することになるため、この比較はそのまま当てはまりません。

初期費用の調整が効きにくい場面

効かない場面もあります。まず、そもそも内見が入っていないとき。初期費用は検索結果の一覧では目立ちにくく、詳細を見た人にしか届きません。問い合わせが月ゼロ件なら、先に掲載内容と写真を疑うほうが早道です。

次に、家賃が相場から明確に外れているとき。周辺の同条件が58,000円のところに65,000円で出していれば、礼金をゼロにしても検索の対象に入りません。初期費用は「候補に残った部屋を後押しする条件」であって、候補に入れる条件ではないという整理になります。

相場との差、募集の運用、物件そのものの状態。どこに原因があるかの切り分けは空室が3か月埋まらないときに見直す6つのポイントで整理しています。

まとめ

家賃は最後に触る数字です。先に礼金、フリーレント、鍵交換費用の負担を検討し、それでも決まらないときに初めて家賃を動かす。この順番を守るだけで、同じ「決まった」という結果でも手元に残る金額が変わります。もっとも、効果の出方は立地と競合の状況によって変わりますので、動かした日と反響の変化は必ず記録しておいてください。

さいたま市周辺で募集条件の見直しを考えていらっしゃる方は、ご相談ください。管理を任せるかどうかを決めていない段階でも、条件の組み立て方だけをお伝えすることもできます。

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